アデノシン一リン酸二ナトリウムOT(エナジーシグナルAMP)とは…成分効果と毒性を解説

美白
アデノシン一リン酸二ナトリウムOT(エナジーシグナルAMP)
[医薬部外品表示名称]
・アデノシン一リン酸二ナトリウムOT

[慣用名]
・エナジーシグナルAMP、AMP2Na

2004年に医薬部外品美白有効成分として承認された、RNA(リボ核酸)に含まれるヌクレオチドの一種であるアデノシン一リン酸(Adenosine monophosphate:AMP)のナトリウム塩です。

薬用化粧品(医薬部外品)に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品などに使用されます。

メラニン排出促進・表皮ターンオーバー促進による色素沈着抑制作用

メラニン排出促進・表皮ターンオーバー促進による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズム、メラニン排出のメカニズムおよびATP産生のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

合成された黒化メラニンは、以下のメラニンの輸送の仕組み図のように、

メラニン輸送の仕組み

メラノソームに貯蔵されたままメラノサイトの触手であるデンドライトを通ってケラチノサイトに放出され、表皮基底層にできた新しい表皮細胞とともに約1ヶ月かけて角質層表面まで運ばれていき、角片(垢)となって自然に排出されるというサイクルを繰り返します。

この古い細胞が新しい細胞と入れ替わるサイクルはターンオーバーと呼ばれ、一種の排泄器官的な役割も担っており、この新陳代謝が正常に更新されることで、表皮の構造と機能は維持され、肌は健常さおよび新鮮さを保ちます(文献2:2002)

一方で表皮ターンオーバーは、加齢にともない遅延することが報告されており(文献3:1983)、ターンオーバーの遅延によって色素沈着、シワ、乾燥やそれに伴う肌荒れ、外観など皮膚に変化が生じると考えられています。

また、加齢にともなうメラニンのびまん性(∗1)の増加は、光老化によるメラノサイト数の増加とメラノソーム産生増加(文献4:1986)および表皮ターンオーバーの遅延による複合的な原因によると考えられています。

∗1 びまん性とは、全体的に広がっている状態を意味します。

加齢によって遅延した表皮ターンオーバーの改善には、それを支える基底細胞の肝細胞システムの細胞分裂の改善が必要であり、また細胞分裂サイクルの向上には細胞内に一定量のATP(アデノシン三リン酸)(∗2)が必要ですが、ATP産生量も年齢にともなって減少することが報告されており(文献5:2004)、加齢にともなう表皮ターンオーバーの低下は基底細胞のエネルギー代謝低下の関与が示唆されています。

∗2 ATPとは、すべての植物、動物および微生物の細胞内に存在するエネルギー分子であり、細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸および酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギーを供給するためにすべての生物が使用する化合物です。

ATP産生は、主として生体内に存在する生化学経路である解糖系に依存しており、解糖系において重要な位置を占めるホスホフルクトキナーゼの活性はATPによって阻害を受け、AMP(アデノシン一リン酸)によって活性化され、またエネルギー代謝においてAMPの存在は、エネルギー産生方向へ代謝を方向づけます。

そのため、角化細胞内のAMP濃度を上昇させることは、生理的な範囲で細胞エネルギー代謝を促進させ、細胞内ATP濃度を上昇させることが可能であり、細胞内ATP濃度の上昇は細胞分裂サイクルを促進させ、表皮ターンオーバーの遅延を回復できると考えられています(文献1:2008)

こういった背景から、AMP産生促進を起点としたATP産生増加による表皮ターンオーバー改善は色素沈着抑制にとって重要であると考えられます。

2004および2008年に大塚製薬によって報告されたアデノシン一リン酸二ナトリウムOT(エナジーシグナルAMP)の表皮角化細胞内ATP量への影響検証によると、

ドナー年齢17-65歳の初代培養成人女性表皮角化細胞にエナジーシグナルAMPを添加し、ルシフェラーゼ活性を指標にATP量への影響を検討した。

65歳の細胞にエナジーシグナルAMPを添加すると、エナジーシグナルAMPを添加しないドナー年齢20歳前後の細胞内ATP量まで増加したことから、加齢に伴い減少した細胞内ATP量がエナジーシグナルAMPの添加によって回復したものと考えた。

この回復は、AMPが直接ATPに変換されるのではなく、AMPが細胞内へのグルコースの取り込みを促進し、グルコースが異化代謝されることによってATP産生が促進されることに基づくことをみいだした。

次に、ヘアレスラットの背部にエナジーシグナルAMP配合製剤および未配合製剤を4日間塗布し、表皮基底層におけるDNA合成期の細胞数をDNA合成量を指標として測定したところ、以下のグラフのように、

ヘアレスラット表皮基底細胞のDNA合成に対するエナジーシグナルAMPの影響

エナジーシグナルAMP配合製剤は、基剤に比べてラベリング指数が有意に高く、DNA合成期細胞数が増加したことから、表皮基底細胞の細胞周期が促進されたことを確認した。

次に、角層細胞面積は年齢に依存して大きくなり、角層ターンオーバー速度と角層細胞面積は相関することから、健常成人女性15人(40-57歳)にエナジーシグナルAMP配合乳液とその基剤のみを半顔ずつ12週間塗布し、左右頬部の角層細胞面積を比較した。

その結果、エナジーシグナルAMP配合乳液を塗布した皮膚では、角層細胞面積は有意に小さくなった。

これらの結果により、エナジーシグナルAMPは表皮ターンオーバーを促進することを確認した。

さらに、紫外線照射による皮膚色素沈着への影響をヒト皮膚にて検討した。

健常な12人の成人男性の左右上腕に人工紫外線を1日おきに6回照射し、10日間放置して色素沈着が安定した後、3%エナジーシグナルAMP配合製剤および製剤のみを塗布して皮膚明度(L値)を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射後のヒト紫外線色素沈着に対するエナジーシグナルAMPの影響

3%エナジーシグナルAMP配合製剤は、皮膚明度(L値)を有意に改善し、色素沈着の消退を促進した。

このような検証結果が明らかになっており(文献1:2008;文献5:2004)、アデノシン一リン酸二ナトリウムOTにメラニン排出促進・表皮ターンオーバー促進による色素沈着抑制作用が認められています。

また2005年に大塚製薬によって公開された技術情報によると、

肝斑を有する27人の女性患者(27-60歳)に3%エナジーシグナルAMP配合乳液を1日2回16週間継続使用してもらったところ、表皮ターンオーバー指標となる角層細胞面積は16週後には使用前と比較して有意に縮小し、皮膚明度(L値)は使用前と比較して有意に上昇した。

また医師判定による全般改善度は、使用16週後においてやや改善以上が92.3%(24/26)であった。

以上の結果により、3%エナジーシグナルAMP配合乳液は、表皮に滞留したメラニンを排泄する作用によりヒト色素沈着を改善することが示された。

このような検証結果が明らかになっており(文献6:2005)、アデノシン一リン酸二ナトリウムOTに肝斑改善効果が認められています。

効果・作用についての補足

アデノシン一リン酸二ナトリウムOTは、すでに解説したようにメラニン排出促進・表皮ターンオーバー促進作用を有しており、この作用は美白有効成分として承認されていますが、表皮ターンオーバー促進効果そのものは、細胞賦活成分や抗老化成分としての側面もあると考えられます。

スポンサーリンク

アデノシン一リン酸二ナトリウムOTの安全性(刺激性・アレルギー)について

アデノシン一リン酸二ナトリウムOTの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

大塚製薬の技術情報(文献6:2005)によると、

  • 本来的に生体内に存在している物質であるため、人体に対する安全性が高い

と記載されています。

安全性データはみあたりませんが、本来的に生体内に存在している物質であり、人体に対する安全性が高いと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アデノシン一リン酸二ナトリウムOTは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 吉野 昇, 他(2008)「細胞内ATP濃度調節に着目した新しい美白製品の開発」ファルマシア(44)(5),412-416.
  2. 朝田 康夫(2002)「肌は生まれ変わる」美容皮膚科学事典,25-26.
  3. G Grove, et al(1983)「Age-associated changes in human epidermal cell renewal.」Journal of Gerontology(38)(2),137-142.
  4. A M Klingman(1986)「皮膚の光加齢」加齢と皮膚,33-36.
  5. S Shinohara, et al(2004)「Skin-lightening effects based on accelerated epidermal turnover」Abstract book of The 8th China-Japan Joint Meeting of Dermatology,131-132.
  6. 河村 光章, 他(2005)「肝斑改善用組成物及びくすみ改善用組成物」再表0309-7072.

スポンサーリンク

TOPへ