3-O-エチルアスコルビン酸とは…成分効果と毒性を解説

美白 抗老化成分
3-O-エチルアスコルビン酸
[化粧品成分表示名称]
・3-O-エチルアスコルビン酸

[医薬部外品表示名称]
・3-O-エチルアスコルビン酸

[慣用名]
・VCエチル、ビタミンCエチル

医薬部外品美白有効成分として承認されており、化学構造的にアスコルビン酸(ビタミンC)の3位水酸基にエトキシ基を導入して生成される水溶性ビタミンC誘導体です。

これまでのビタミンC誘導体は、皮膚内で活性酵素により分解・代謝を通じてビタミンCそのものの効果を発揮するため、実際に効果を発揮するまでにタイムラグが生じていました。

一方で3-O-エチルアスコルビン酸は、安定性を向上させた上で酵素反応を必要とせず、そのままの形でビタミンCの効果を発揮するため、即効性があり、なおかつ持続性もあるのが特徴です(文献2:2006)

つまり、3-O-エチルアスコルビン酸は、皮膚内で分解・代謝されてアスコルビン酸(ビタミンC)の効果を発揮するタイプのビタミンC誘導体ではなく、3-O-エチルアスコルビン酸そのままで効果を発揮するため、3-O-エチルアスコルビン酸の効果・作用はアスコルビン酸の効果・作用というよりは3-O-エチルアスコルビン酸そのものの効果・作用であると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、美白化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズム、チロシナーゼおよびTRP-2について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

次にメラノサイト内でのメラニン合成の仕組みを詳細に表すと、以下のように、

ドーパキノンがユウメラニンに変化するまでの詳細な仕組み

ドーパキノンがユーメラニンに変化するまでにはさらにいくつかの段階がありますが、TRP-2(Tyrosinase related protein-2:ドーパクロムトートメラーゼ)はドーパクロムからDHICAへの変換を触媒する酵素です。

このような背景からチロシナーゼおよびTRP-2活性を抑制することは、色素沈着抑制において重要であると考えられます。

2013年に台湾のコルム(Corum)によって公開された3-O-エチルアスコルビン酸のチロシナーゼ活性阻害検証によると、

チロシンおよびドーパを基質としてマッシュルームチロシナーゼを添加し、3-O-エチルアスコルビン酸をはじめとする各試料と混合し、チロシナーゼ活性率を測定したところ、以下の表のように、

試料 チロシナーゼ活性阻害率(%)
チロシン → ドーパ ドーパ → ドーパキノン
アスコルビン酸 99.8 99.1
3-O-エチルアスコルビン酸 37.6 54.8
アスコルビルグルコシド 2.1 22.3
リン酸アスコルビルMg 9.7 31.9
α-アルブチン 93.8 -16.9

3-O-エチルアスコルビン酸は、チロシン → ドーパおよびドーパ → ドーパキノンの両方においてチロシナーゼ活性を阻害することがわかった。

また3-O-エチルアスコルビン酸は、他の水溶性ビタミンC誘導体であるアスコルビルグルコシドおよびリン酸アスコルビルMgよりも高いチロシナーゼ活性阻害効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2013)、3-O-エチルアスコルビン酸にチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

次に、同じく2013年に台湾のコルム(Corum)によって公開された3-O-エチルアスコルビン酸のチロシナーゼおよびTRP-2活性阻害検証によると、

3-O-エチルアスコルビン酸は、マッシュルームチロシナーゼを約50%まで阻害することを確認したので、その作用ポイントを確認するために、α-MSHによって刺激したB16マウスメラノーマ細胞を用いてウエスタンブロッティング(特定のタンパク質を検出する方法)を実施した。

細胞をα-MSHによって刺激した場合、チロシナーゼおよびTRP-2のタンパク質発現は有意に増加したが、一方で3-O-エチルアスコルビン酸を添加すると、以下の表のように、

3-O-エチルアスコルビン酸濃度(%) チロシナーゼ阻害率(%) TRP-2阻害率(%)
0.0 0.0 0.0
0.25 18.7 -3.7
0.5 25.9 57.3
1.0 47.5 72.6

3-O-エチルアスコルビン酸は、濃度依存的にチロシナーゼおよびTRP-2の発現を阻害できることが示された。

TRP-1においても同様の試験を実施したが、TRP-1は3-O-エチルアスコルビン酸の添加で有意な変化を示さなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2013)、3-O-エチルアスコルビン酸にチロシナーゼおよび0.5%濃度以上でTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

メラニン還元による色素沈着抑制作用

メラニン還元による色素沈着抑制作用に関しては、すでに掲載した以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

メラニン生合成は、紫外線を浴びることで皮膚に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、最終的にユーメラニン(黒化メラニン)へと合成される一連のプロセスによって成されます。

そして、アスコルビン酸(ビタミンC)そのものには、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

これら2つのメラニン還元作用を有しており、ドーパキノンをドーパに還元する作用は黒化メラニン防止、ユーメラニンを淡色メラニンに還元する作用は色素沈着の淡色化および肌明度の向上となります。

2013年に台湾のコルム(Corum)によって公開された3-O-エチルアスコルビン酸のチロシナーゼ活性阻害検証によると、

マウス由来メラノサイトに各濃度のコウジ酸および3-O-エチルアスコルビン酸500μLを添加し、メラニン合成を刺激するためにテオフィリン0.5mMを添加し、48時間培養しメラニン産生を評価したところ、以下の表のように、

3-O-エチルアスコルビン酸濃度(%) メラニン還元率(%)
1.5 35.21
2.0 49.75

3-O-エチルアスコルビン酸は、どちらの濃度においても有意なメラニンの淡色化を示した。

またヒト臨床試験において3%濃度3-O-エチルアスコルビン酸配合化粧品の28日間連用試験において皮膚の明度の向上を確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2013)、3-O-エチルアスコルビン酸にメラニン還元による色素沈着抑制作用が認められています。

また2006年に日本ハイボックスおよび三木形成外科によって報告された3-O-エチルアスコルビン酸のヒト皮膚色素沈着に対する有効性検証によると、

21人の被検者の前腕および12人の被検者の手の甲に1%濃度3-O-エチルアスコルビン酸(VCエチル)配合美容液の4週間塗布試験を実施した。

対照として3%濃度リン酸アスコルビルMg(APM)配合美容液を用いて同様に塗布し、色彩色差計により皮膚明度を測定したところ、以下の表のように、

試験部位 人数 測定時期 皮膚明度(L値)
未塗布部位 VCエチル APM
前腕 21 開始前 60.91 ± 3.15 60.77 ± 3.08 60.92 ± 3.17
14日目 60.78 ± 3.26 61.13 ± 2.85 61.11 ± 2.97
28日目 61.10 ± 3.13 61.40 ± 2.85 61.28 ± 2.98
手の甲 12 開始前 58.70 ± 3.73 58.98 ± 3.80 58.89 ± 3.81
14日目 58.44 ± 3.89 58.90 ± 3.33 58.82 ± 3.57
28日目 58.60 ± 3.63 59.74 ± 3.30 59.30 ± 3.51

1%VCエチル配合美容液は、3%APM配合美容液と同等、または同等以上のメラニン生成抑制作用を示すことが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2006)、3-O-エチルアスコルビン酸にメラニン還元による色素沈着抑制作用が認められています。

コラーゲン合成促進による抗老化作用

コラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割を解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

コラーゲンは、真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献4:2002)

ただし、加齢や過剰な紫外線によってコラーゲンの産生量が低減することで、その働きが衰えてくることが知られており、コラーゲン産生を促進することはハリのある若々しい肌を維持するために重要であると考えられています。

2013年に台湾のコルム(Corum)によって公開された3-O-エチルアスコルビン酸のチロシナーゼ活性阻害検証によると、

ヒト線維芽細胞を用いて3-O-エチルアスコルビン酸および陽性対照として成長因子TGF-β1で処理し、コラーゲン合成を評価したところ、以下の表のように、

試料 濃度 コラーゲン合成促進率(%)
TGFβ1 10ng/mL 30
3-O-エチルアスコルビン酸 500ppm 27

3-O-エチルアスコルビン酸は、陽性対照のTGF-β1と同様にコラーゲン合成に対して有意な効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2013)、3-O-エチルアスコルビン酸にコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。

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3-O-エチルアスコルビン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

3-O-エチルアスコルビン酸の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

開発元の日本精化の安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [ヒト試験] 被検者に3-O-エチルアスコルビン酸(濃度不明)を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚反応はなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

開発元の日本精化の安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に3-O-エチルアスコルビン酸(濃度不明)を処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、眼刺激性はなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

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3-O-エチルアスコルビン酸は美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. 日本精化株式会社(2011)「Ethyl Ascorbic acid」Material Safety Data Sheet.
  2. 三木 聡子, 他(2006)「ビタミンCエチルの有用性 -色素沈着抑制作用およびその他の薬理作用-」皮膚の抗老化最前線,265-278.
  3. J Hsu(2013)「3-O-Ethyl Ascorbic Acid: A Stable, Vitamin C-Derived Agent for Skin Whitening」Cosmetics&Toiletries(128)(9),676-684.
  4. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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