甘草フラボノイドとは…成分効果と毒性を解説

色素沈着抑制
甘草フラボノイド
[化粧品成分表示名称]
・甘草フラボノイド、カンゾウ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・カンゾウフラボノイド

マメ科植物カンゾウ(学名:Glycyrrhiza Glabra 英名:licorice)の根から疎水抽出して得られる、主としてフラボノイドからなる油溶性抽出物植物エキスです。

同じカンゾウ根エキスの成分として他に「カンゾウ根エキス」がありますが、双方の違いは、

種類 抽出法 主成分 主な作用・効果
カンゾウ根エキス グリチルリチン酸 抗アレルギー・抗炎症
甘草フラボノイド 疎水抽出 グラブリジン 色素沈着抑制

このように、抽出法によって抽出される成分が異なることで、作用・効果が異なる点にあります。

ただし、化粧品成分表示名称として「カンゾウ根エキス」と表示されている場合でも実質的に甘草フラボノイドとして配合されている場合もあり、配合例としてカンゾウ根エキスと一緒にオウゴン根エキスナツメ果実エキスが併用されている場合は、色素沈着抑制の相乗効果目的で配合されている可能性が高く、その場合は甘草フラボノイドとしての配合であると考えられます。

カンゾウ(甘草)は、ウラル地方、中国北部、スペインをはじめとする南ヨーロッパ、中央アジア、小アジア、ロシア南部に自生・分布し、日本においては供給のほとんどを中国からの輸入品に頼っていますが、近年甘草資源の枯渇化が顕在化しており、国内の安定供給が進められています(文献2:2011;文献3:2013)

甘草フラボノイドは天然成分であることから、国・地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド イソフラボノイド グラブリジン(主要成分)、グラブレン など

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献4:1998;文献5:2005;文献6:2006)、主要成分であるグラブリジン(glabridin)には色素沈着抑制作用および抗菌作用が知られています(文献4:1998;文献6:2006)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品などに使用されています。

チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズム、チロシナーゼおよびTRP-2について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献7:2002;文献8:2016;文献9:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献7:2002;文献9:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外は以下の図のように、

ドーパキノンがユウメラニンに変化するまでの詳細な仕組み

自発的にドーパクロムまで変化し、そこから自発的にDHI(5,6-dihydroxyindole)に変化する合成経路と、TRP-2(tyrosinaserelated protein-2:チロシナーゼ関連タンパク質2)およびTRP-1(tyrosinaserelated protein-1:チロシナーゼ関連タンパク質1)と反応する合成経路の2つの経路からユウメラニンに合成されることが知られています(文献7:2002;文献9:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献7:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献7:2002)

このような背景から、チロシナーゼおよびTRP-2の活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

1998年にカネボウの基礎科学研究所および化粧品研究所と聖マリアンナ医科大学皮膚科によって報告された甘草フラボノイド由来グラブリジンのメラニン生合成に対する影響検証によると、

in vitro試験においてB16メラノーマ細胞を播種した培養液に各濃度のグラブリジンを添加し、³H₂O放出量を測定したところ、以下のグラフのように、

培養B16メラノーマ細胞のチロシナーゼ活性に対するグラブリジンの効果

0.1-10μg/mLグラブリジンは、濃度依存的にチロシナーゼ活性を阻害した。

次に、3匹のモルモットの背中の2つの領域にUVB(250mJ/c㎡)を4日連続で照射し、片方の領域に0.5%グラブリジン溶液を、もう片方にはグラブリジンを含まない溶液を最後の照射から3週間にわたって塗布し、3週間後にUVB誘発性色素沈着を評価した。

その結果、UVB照射によってモルモットの背中に引き起こされたUVB誘発性皮膚色素沈着は、0.5%グラブリジンの3週間にわたる局所塗布によって減少した。

このような検証結果が報告されており(文献4:1998)、甘草フラボノイドの主成分であるグラブリジンにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

次に、1998年にコーセーによって報告された甘草フラボノイドのメラニン生成およびTRP-2への影響検証によると、

in vitro試験においてB16メラノーマ細胞を播種した培養液に各濃度の甘草フラボノイドを添加し処理後にメラニン生成抑制率を算出したところ、以下のグラフのように、

培養B16メラノーマ細胞のメラニン生成に対する甘草フラボノイドの抑制効果

甘草フラボノイドは、極めて低濃度でメラニン生成を抑制し、濃度依存的なメラニン生成の抑制効果を示した。

次に、in vitro試験においてB16メラノーマ細胞を播種した培養液に各濃度の甘草フラボノイドを添加し処理後にTRP-2活性抑制率を算出したところ、以下のグラフのように、

培養B16メラノーマ細胞のTRP-2活性に対する甘草フラボノイドの阻害効果

甘草フラボノイドは、極めて低濃度でTRP-2の活性を抑制し、濃度依存的なTRP-2活性阻害効果を示した。

このような検証結果が報告されており(文献8:1998)、甘草フラボノイドにTRP-2活性阻害によるメラニン生合成抑制作用が認められています。

TRP-2は、チロシナーゼと同様にその構造中に銅を持ち、糖鎖の修飾を受けて成熟していくことが示唆されており(文献9:1995)、甘草フラボノイドのTRP-2活性阻害のメカニズムは、TRP-2の生合成過程における糖鎖修飾の阻害による抑制効果の発現であることが示唆されています(文献10:1995)

さらに、1995年に聖マリアンナ医科大学皮膚科学教室によって報告された甘草フラボノイドのヒト皮膚への有用性試験によると、

33人の患者(肝斑20人、炎症後の色素沈着6人、肝斑+炎症後の色素沈着7人 年齢20-59歳)に0.1%甘草フラボノイド配合クリームを1日2-3回4ヶ月にわたって使用してもらい、塗布終了後に主治医が肉眼的に色素沈着への有効性を「著効」「有効」「やや有効」「不変」「悪化」の5段階で評価したところ、以下の表のように、

疾患名 症例数 著効 有効 やや有効 不変 悪化
肝斑 20 0 5 13 2 0
炎症後色素沈着 6 0 5 1 0 0
肝斑+炎症後色素沈着 7 0 2 4 1 0

0.1%甘草フラボノイド配合クリームは、主治医判定において肝斑では有効以上が25%、やや有効以上が90%で、炎症後の色素沈着では有効以上が83.3%、やや有効以上が100%、肝斑 + 炎症後色素沈着では有効以上が28.6%、やや有効以上が85.7%であった。

次に、35人の患者(肝斑12人、炎症後色素沈着8人、老人性色素斑15人)に0.2%甘草フラボノイド配合クリームを用いて同様の試験を実施し、塗布終了後に主治医が肉眼的に色素沈着への有効性を5段階で評価したところ、以下の表のように、

疾患名 症例数 著効 有効 やや有効 不変 悪化
肝斑 12 0 8 3 0 0
炎症後色素沈着 8 0 6 2 0 0
老人性色素斑 15 2 8 2 3 0

0.2%甘草フラボノイド配合クリームは、主治医判定において肝斑では有効以上が75%、やや有効以上が100%で、炎症後の色素沈着では有効以上が75%、やや有効以上が100%、老人性色素斑では有効以上が66.7%、やや有効以上が80.0%であった。

これらの結果は、グラブリジンの高いチロシナーゼ活性阻害作用およびメラニン産生抑制効果を反映するものであった。

このような検証結果が報告されており(文献11:1995)、甘草フラボノイドにチロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

甘草フラボノイドの安全性(刺激性・アレルギー)について

甘草フラボノイドの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 20人のボランティアに0.65%甘草フラボノイドを含むクリームを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、パッチ除去1時間後で1人のボランティアにわずかな紅斑がみられたが24時間以内に消失した。他のボランティアでは皮膚反応はみられなかった(Sansho Seiyaku Co Ltd,2004)

東京女子医科大学附属第二病院皮膚科の安全性データ(文献14:2000)によると、

  • [ヒト試験] 顔面に老人性色素斑を有する18人の患者に0.1%甘草フラボノイド配合外用剤を1日2回16週間にわたって塗布してもらい、試験開始時、8週間後および16週間後に視診および問診により皮膚反応を評価したところ、試験期間中に重大な皮膚反応はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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甘草フラボノイドは美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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参考文献:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2008)「Safety Assessment of Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Rhizome/root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Leaf Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Juice, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Powder, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Water, Glycyrrhiza Inflata Root Extract, and Glycyrrhiza Uralensis (Licorice) Root Extract」Final Report.
  2. 鈴木 洋(2011)「甘草(カンゾウ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,82-83.
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  5. T Kinoshita, et al(2005)「The Isolation and Structure Elucidation of Minor Isoflavonoids from Licorice of Glycyrrhiza glabra Origin」Chemical and Pharmaceutical Bulletin(53)(7),847-849.
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  7. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  9. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
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  11. 柴原 茂樹, 他(1995)「チロシナーゼファミリー遺伝子のクローニングと転写調節」Fragrance Journal 臨時増刊号(14),31-37.
  12. 池田 孝夫, 他(1995)「油溶性甘草エキスの美白作用」Fragrance Journal 臨時増刊号(14),174-179.
  13. 原本 泉(1995)「油溶性甘草エキスによるメラニン産生抑制効果」西日本皮膚科(57)(3),594-600.
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