4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)とは…成分効果と毒性を解説

美白
4-n-ブチルレゾルシノール
[医薬部外品表示名称]
・4-n-ブチルレゾルシノール

[慣用名]
・ルシノール

1998年に医薬部外品美白有効成分として承認された、化学構造的にレゾルシンの4位にn-ブチル基を導入したレゾルシン誘導体です。

もともとレゾルシンはチロシナーゼ活性阻害作用を有することが複数報告されている一方で、安定性が低く、皮膚刺激性を有するため、美白剤という観点からは実用的ではありませんでしたが、その化学構造を修飾することで有効性と安全性の両立が実現し、美白有効成分として承認されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品に使用されます。

チロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズム、チロシナーゼおよびTRP-1について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合し、チロシンが酸化することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

次に、メラノサイト内でのドーパキノンからユーメラニンまでの変化をより詳細に解説します。

ドーパキノンまで変化が進むと、さらに以下の図のように段階が詳細に分かれており、

ドーパキノンがユウメラニンに変化するまでの詳細な仕組み

ドーパクロムは、酵素を介さず自動酸化するDHI(5,6-dihydroxyindole)と、TRP-2(Tyrosinase related protein-2:ドーパクロムトートメラーゼ)という活性酵素を介して変換されるDHICA(5,6-dihydroxyindole-2-carboxylic acid)に分かれ、さらにDHICAはTRP-1(Tyrosinase related protein-1:DHICAオキシダーゼ)を触媒としてユーメラニンに重合されます。

このような背景からチロシナーゼおよびTRP-1の活性を抑制することは、色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

2001年にポーラ化成工業によって報告された4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)のメラニン産生抑制への影響検証によると、

B16メラノーマ細胞由来チロシナーゼに対するルシノールの阻害活性をアルブチンおよびコウジ酸と比較し、IC₅₀値(チロシナーゼ活性を50%阻害する濃度)を求めたところ、以下の表のように、

美白成分 IC₅₀(μM)
ルシノール 44
コウジ酸 250
アルブチン 17,000

ルシノールのIC₅₀値は44μMであり、コウジ酸およびアルブチンのそれぞれ約5.6倍および380倍のチロシナーゼ活性阻害効果が示された。

次に、B16マウスメラノーマ細胞を用いてTRP-1活性に対するルシノールの阻害活性を、DHICAの減少量を定量することにより測定したところ、以下のグラフのように、

TRP-1に対する4-n-ブチルレゾルシノールの活性阻害効果

ルシノールはTRP-1に対して濃度依存的に阻害効果を示し、またIC₅₀値は0.93μMであった。

次に、ヒト紫外線色素沈着に対するルシノールの効果を検討した。

紫外線照射による色素沈着の予防効果を検討するために、健康な44人の上腕内側に隣接する2試験部位を設け、0.3%ルシノール配合ローションおよびルシノール未配合ローション(対照)を試験部位に1日3回塗布し、塗布開始より2日後に試験部位に0.7MED(最小紅斑線量)相当の紫外線を1日1回、連続3日間照射した。

照射期間中は、照射前に2回、照射後に3回の1日5回塗布とし、照射終了後より試験終了まで1日3回に戻した。

照射開始より7,14および21日後に試験部位の黒化度を肉眼観察によりスコア評価し、また色彩色差計を用いて皮膚明度(L値)を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射予防に対するルシノールの効果(肉眼観察)

 紫外線照射予防に対するルシノールの効果(皮膚明度測定・L値)

0.3%ルシノール配合ローション塗布部位では、未配合ローションと比較して、肉眼観察および皮膚明度測定(L値)ともに、照射7日後より有意な色素沈着抑制作用が示された。

さらに紫外線照射後の色素沈着に対する効果を検討するために、健康な17人の男性の上腕内側に隣接する2試験部位を設け、試験部位に0.7MED(最小紅斑線量)相当の紫外線を1日1回3日間連続で照射した。

照射開始から7日後に肉眼観察により2部位の色素沈着が同レベルにある13人を選別し、一方に0.3%ルシノール配合ローション、他方にルシノール未配合ローション(対照)を1日3回6週間にわたって塗布し、1週間ごとに色素沈着の黒化度を肉眼観察によりスコア評価し、また色彩色差計を用いて皮膚明度(L値)を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射後の色素沈着に対するルシノールの効果(肉眼観察)

紫外線照射後の色素沈着に対するルシノールの効果(皮膚明度測定・L値)

0.3%ルシノール配合ローション塗布部位では、未配合ローションと比較して、肉眼観察および皮膚明度測定(L値)ともに、6週塗布後の有意差が認められた。

以上の結果から、細胞レベルで有効だるだけでなく、ヒト紫外線色素沈着に対しても有効であることが示された。

このような検証結果が明らかになっており(文献1:2001)、4-n-ブチルレゾルシノールにチロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

肝斑改善による色素沈着抑制作用

肝斑改善による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識として肝斑(かんぱん)について解説します。

肝斑はシミ(色素増加症)の一種であり、以下のイラストのように、

肝斑の症状

臨床的には境界が明瞭な淡褐色斑であり、顔面とくに額、頬、頬骨部、口周囲に左右対称に認められるのが特徴で、ほとんどの場合30-40歳代の女性に発症すると報告されている後天性斑状色素増加症です。(文献4:1979)

発症する原因として、肝斑患者の20%-50%の症例で妊娠が憎悪因子となっており、経口避妊薬による憎悪も報告されているほか、紫外線照射を発症の誘引とする肝斑患者が30%-50%を占めます(文献5:2008)

1999年にルシノール研究会によって報告された4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)の肝斑への効果検証によると、

肝斑を有する62人の女性患者の全顔に0.3%ルシノール配合ローションを1日2回24週間継続使用してもらい、試験終了時に経時的改善度ならびに副作用との総合的な判断により、5段階(非常に有用、かなり有用、やや有用、無用、好ましくない)にて有用性を評価したところ、以下の表のように、

試料 非常に
有用
かなり
有用
やや
有用
無用 好ましくない やや有用
以上の合計
0.3%ルシノール配合ローション 14.5% 27.4% 41.9% 16.1% 0% 83.9%

0.3%ルシノール配合ローションは、肝斑に対する有用性を示した。

このような検証結果が明らかになっており(文献2:1999)、4-n-ブチルレゾルシノールに肝斑改善による色素沈着抑制作用が認められています。

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4-n-ブチルレゾルシノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

4-n-ブチルレゾルシノールの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

ルシノール研究会の臨床データ(文献2:1999)によると、

  • [ヒト試験] 肝斑を有する62人の女性患者の全顔に0.3%ルシノール配合ローションを1日2回24週間継続使用してもらったところ、1人の患者において紅斑と瘙痒がみられたが、パッチテストの結果このローションとの関連性は明確ではなく、他に皮膚反応を示した患者はいなかった

ポーラ化成工業の安全性データ(文献3:1999)によると、

  • ルシノールの安全性については、皮膚刺激性試験および皮膚感作性試験を実施し、安全に使用できることが確認されている

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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4-n-ブチルレゾルシノールは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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文献一覧:

  1. 片桐 崇行, 他(2001)「4-n-ブチルレゾルシノール (ルシノール®) のメラニン産生抑制作用とヒト色素沈着に対する有効性」日本化粧品技術者会誌(35)(1),42-49.
  2. ルシノール®研究会(1999)「肝斑に対するルシノール®(4-n-butylresorcinol)の有用性に関する研究」西日本皮膚科(61)(6),813-819.
  3. 竹ノ内 正紀(1999)「新美白剤ルシノールの開発」Bio Industry(16)(8),13-18.
  4. 二條 貞子(1979)「トラネキサム酸による肝斑の治療」基礎と臨床(13)(9),3129-3131.
  5. 真船 英一(2008)「トラネキサム酸と肝斑」ファルマシア(44)(5),437-442.

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