リン酸アスコルビルMgとは…成分効果と毒性を解説

美白成分 抗炎症成分 抗老化成分
リン酸アスコルビルMg
[化粧品成分表示名称]
・リン酸アスコルビルMg

[医薬部外品表示名称]
・リン酸L-アスコルビルマグネシウム

[慣用名]
・アスコルビルリン酸Mg、APM、安定型ビタミンC誘導体

1980年代に医薬部外品美白有効成分として承認された、アスコルビン酸(ビタミンC)にリン酸を付加したマグネシウム塩であり、水溶性ビタミンC誘導体です。

安定型ビタミンC誘導体と呼ばれていることからも推察されるように、pH7以上で安定性が高いのが特徴ですが、長期保存では少しずつ濁りや変臭などが生じる可能性があるため(文献2:1989;文献3:1991)、長期安定性を向上させる目的でアミノ酸類および/またはこれらの塩、アルカノールアミン、有機キレート剤などが併用されることがあります(文献8:2002)

リン酸アスコルビルMgの安定性向上・結晶防止に併用されるアミノ酸はグルタミン酸グリシン、リシンHClが望ましく、アルカノールアミンはTEA(トリエタノールアミン)が望ましく、有機キレート剤としてはフィチン酸および/またはそれらの塩が望ましいと報告されています(文献8:2002)

一方で、リン酸アスコルビルMgの作用は、主にリン酸アスコルビルMgがヒト表皮に常在する酵素であるフォスファターゼによりアスコルビン酸に加水分解されることによるアスコルビン酸の作用であることが明らかにされています(文献9:1993)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、薬用美白化粧品、美白化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン還元による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン還元による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

このような背景からチロシナーゼ活性を抑制・阻害することは色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

また、この一連のプロセスによって黒化メラニンが生合成されますが、アスコルビン酸(ビタミンC)には、以下のように、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

黒化メラニンになる前に還元して黒化メラニンを防止する作用と、黒化メラニンそのものを還元して色素を薄くする作用があります。

1993年に日光ケミカルズおよび北里大学医学部皮膚科の共同研究によって公開されたリン酸アスコルビルMgの有用性試験によると、

in vitro試験において、チロシン10μLに精製チロシナーゼ10μL、ドーパ溶液20μL、各濃度のリン酸アスコルビルMg水溶液20μLおよびpH7.2トリス塩酸緩衝液を16時間、37℃で反応させ、各濃度のリン酸アスコルビルMgのチロシナーゼ活性抑制効果を評価したところ、以下の表のように、

リン酸アスコルビルMg濃度(%) チロシナーゼ活性抑制率(%)
1.0 82 ± 4
0.1 83 ± 1
0.01 87 ± 4
0.001 33 ± 5
0.0001 11 ± 8
0.00001 -2 ± 11

リン酸アスコルビルMgは濃度依存的にチロシナーゼ活性を抑制し、0.001%で33 ± 5%抑制した。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1993)、リン酸アスコルビルMgに濃度依存的なチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

in vitro試験ですが、リン酸アスコルビルMgは皮膚において分解・代謝を通じてアスコルビン酸の効果が発揮されることが明らかにされているので、分解・代謝後の皮膚内アスコルビン酸濃度が0.001%以上の場合は濃度依存的な効果があると考えられます。

また、同じく1993年に日光ケミカルズおよび北里大学医学部皮膚科の共同研究によって公開されたリン酸アスコルビルMgの有用性試験によると、

色素沈着を有する34人の患者(そばかす5人、肝斑4人、老人性色素斑19人、太田母斑1人、アトピー性皮膚炎5人)に10%リン酸アスコルビルMg配合クリームを1日2回3ヶ月間連用してもらい、色素沈着の改善効果は皮膚科医の医学的所見により判定された。

その結果、34人のうち26人の患者において有効であり、内訳は以下となった。

  • 著効:5人(老人性色素斑2人、老人性色素斑+そばかす2人、肝斑1人)
  • 有効:10人(老人性色素斑3人、老人性色素斑+そばかす1人、肝斑3人、老人性色素斑+肝斑2人、アトピー性皮膚炎1人)
  • やや有効:11人(老人性色素斑3人、老人性色素斑+そばかす1人、そばかす1人、肝斑3人、老人性色素斑+肝斑1人、アトピー性皮膚炎2人)
  • 不変:3人(老人性色素斑2人、太田母斑1人)
  • 悪化:5人(老人性色素斑2人、肝斑2人、アトピー性皮膚炎2人)

次に色素沈着のない皮膚を有する27人の被検者に10%リン酸アスコルビルMg配合クリームを1日2回3ヶ月間連用してもらい、色素沈着の改善効果は皮膚科医の医学的所見により判定された。

その結果、27人のうち11人に対して皮膚明度の向上がみられ、4人に皮膚明度の低下がみられた。

これらの結果から一部の患者においては皮膚の過剰な色素沈着を軽減するのに効果があることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1993)、リン酸アスコルビルMgにメラニン還元による色素沈着抑制作用が認められています。

紫外線照射における抗炎症作用

紫外線照射における抗炎症作用に関しては、1996年に加美乃素本舗および林原生物化学研究所によって公開された皮膚への紫外線照射によるビタミンC誘導体の効果検証によると、

剃毛したモルモットを用いて、紫外線照射前に各試料配合クリームを塗布した部位と紫外線照射後に各試料配合クリームを塗布した部位について、紫外線照射を行って発症する皮膚の紅斑の抑制作用を検討した。

試料は、ビタミンC誘導体としてリン酸アスコルビルMgおよびアスコルビルグルコシド、陽性対照は抗炎症剤として広く知られているグリチルリチン酸2K、および陰性対照としては試料未配合の基剤を使用した。

紅斑抑制の判定は、照射から一定時間後に顕微鏡写真による紅斑の度合いを画像解析装置を用いて数値化して行ったところ、以下の表のように、

試料名 試料濃度(%) 照射前塗布部位 照射後塗布部位
紅斑量 抑制率 紅斑量 抑制率
リン酸アスコルビルMg 0.5 5.6 15% 4.4 37%
アスコルビルグルコシド 0.5 5.3 20% 3.8 46%
グリチルリチン酸2K 0.5 6.1 8% 6.2 11%
基剤(未配合) 6.6 7.0

リン酸アスコルビルMg配合クリームは、アスコルビルグルコシドほどではないが、陽性対照のグリチルリチン酸2Kよりも紅斑抑制効果が高く、優れた紅斑抑制効果が示された。

このように記載されており(文献7:1996)、リン酸アスコルビルMgに紫外線照射における抗炎症作用が認められています。

コラーゲン産生増強による抗老化作用

コラーゲン産生増強による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割を解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

コラーゲンは、真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献6:2002)

ただし、加齢や過剰な紫外線によってコラーゲンの産生量が低減することで、その働きが衰えてくることが知られており、コラーゲン産生を促進することはハリのある若々しい肌を維持するために重要であると考えられています。

2016年に日光ケミカルズによって公開されたリン酸アスコルビルMgの有用性試験によると、

in vitro試験においてヒト線維芽細胞にリン酸アスコルビルMgを添加し、48時間培養した後、コラーゲン量をELISA(抗原抗体反応を利用した測定法)により測定したところ、以下の表のように、

リン酸アスコルビルMg濃度(%) コラーゲン産生率(%)
0 100
0.006 100
0.030 150
0.100 225

リン酸アスコルビルMgの添加によって、ヒト線維芽細胞において産生されるコラーゲンの濃度依存的な増加が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2016)、リン酸アスコルビルMgにコラーゲン産生促進による抗老化作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

リン酸アスコルビルMgの配合製品数と配合量の調査結果(2000-2001年)

スポンサーリンク

リン酸アスコルビルMgの安全性(刺激性・アレルギー)について

リン酸アスコルビルMgの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2018)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に10%リン酸アスコルビルMgを含む精製水を24時間閉塞パッチ適用したところ、皮膚反応はなく、安全品だと考えられた
  • [動物試験] ウサギにリン酸アスコルビルMg0.5gを4時間半閉塞パッチ適用したところ、刺激はなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2018)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に100%リン酸アスコルビルMgを点眼し、非洗眼で評価したところ、軽度の眼刺激性が認められた
  • [in vitro試験] 三次元組織ヒト角膜上皮組織に10%リン酸アスコルビルMgを含む精製水を添加し、30分間曝露した後、皮膚モデルを洗浄し、PBS(-)に30分浸漬し、MTTアッセイを用いて細胞生存率を測定(HCE法)したところ、無刺激に分類された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな眼刺激性が報告されているため、わずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2018)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて10,25,50%リン酸アスコルビルMg0.5mLの皮膚感作性を評価したところ、皮膚反応は認められなかった
  • [in vitro試験] リン酸アスコルビルMgを最大5,000μg/mL曝露24時間後に、ヒト単球性白血病細胞株のTHP-1細胞の細胞表面マーカー発現の変化をOECD442Eテストガイドラインに従って定量(h-CLAT法)したところ、陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

リン酸アスコルビルMgは美白成分、抗炎症成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗炎症成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2018)「NIKKOL VC-PMG」安全データシート.
  2. 田川 正人, 他(1989)「リン酸L-アスコルビルマグネシウムの化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(23)(3),200-206.
  3. 小野 康幸, 他(1991)「化粧料」特開平03-109308.
  4. 田川 正人, 他(1993)「メラニン産生に及ぼすリン酸L-アスコルビルマグネシウムの抑制効果」日本化粧品技術者会誌(27)(3),409-414.
  5. 日光ケミカルズ(2016)「NIKKOL VC-PMG」技術資料.
  6. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  7. 秋山 純一, 他(1996)「皮膚外用剤」特開平08-333260.
  8. 小川 悦子(2002)「リン酸L-アスコルビルマグネシウムの結晶化防止法、及び該方法を用いた皮膚外用剤」特開2002-226494.
  9. 佐久間 克也, 他(1993)「化粧品原料の生化学的研究(第1報)チロシナーゼ阻害作用」衛生化学(39)(3),226-229.

スポンサーリンク

TOPへ