5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール(マグノリグナン)とは…成分効果と毒性を解説

美白成分
5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール(マグノリグナン)
[医薬部外品表示名称]
・5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール

[慣用名]
・マグノリグナン

カネボウの申請により2005年2月に、

  • メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ
  • 日焼け・雪やけ後のほてりを防ぐ
  • 皮膚をすこやかに保つ
  • 皮膚にうるおいを与える
  • 皮膚を保護する
  • 皮膚の乾燥を防ぐ

これらの効果が認められ、医薬部外品有効成分として承認されたモクレン科ホオノキの樹皮に含まれるマグノロールに類似した構造(フェノール誘導体の二量体)をもつ美白剤です。

マグノリグナンの美白効果および美白の仕組みに関してですが、専門的になるので、最初にメラニンができる仕組みを復習しておくと、

メラニンが合成される仕組み

紫外線を浴びた皮膚は基底層のメラノサイトに存在するチロシンというアミノ酸にチロシナーゼという活性酵素が結合することでドーパに変化し、ドーパでもチロシナーゼがくっつくことでドーパキノンに変化し、ドーパキノンの一部がユウメラニン(黒色メラニン)に変わっていきます。

一般的なメラニン抑制効果は、チロシナーゼとチロシンをくっつけないことでドーパやドーパキノンに変化するのを防ぐというものなのですが、マグノリグナンのメラニン抑制効果は、

  • チロシナーゼ自体の成熟を阻止する
  • チロシナーゼのメラノソームへの移行量を減少させる

というもので、特にチロシナーゼ自体の成熟を阻害することで、チロシナーゼ量の増加を抑制し、結果的にメラニン生成量が抑制されるという作用が新しいアプローチであり、注目を集めました。

ヒトにおける色素沈着抑制作用においては、カネボウと徳島大学によって以下の試験が報告されており、

0.5%マグノリグナン(5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール)を配合した製剤の紫外線による皮膚の色素沈着抑制効果をプラセボ製剤と比較して評価する目的で、健常な被検者43人の上腕内側の色素沈着部位に、0.5%マグノリグナンとプラセボ製剤を3週間連用した。

3週間後の評価では、0.5%マグノリグナン配合製剤の色素沈着部位は、プラセボ製剤と比較して有意に色素沈着が軽度であり、分光測色計による皮膚色測定では3週間目のΔL値が有意に高値を示した。

この試験では色素脱失や皮膚刺激などの副作用は観察されず、0.5%マグノリグナン配合製剤の高い有用性が実証された。

文献元:マグノリグナン(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の紫外線により生成される色素沈着に対する抑制効果(文献2:2006)

0.5%マグノリグナン配合製剤の長期外用による顔面の色素沈着に対する改善効果を評価する目的で、顔面に肝斑など色素沈着症を有する女性患者51人の顔面の色素沈着を中心に、0.5%マグノリグナン製剤を6ヶ月間外用した。

使用開始1ヶ月目から肝斑などにおける色素沈着の範囲や濃さの有意な改善を確認した。

この試験では、色素脱失や皮膚刺激などの副作用はまったく観察されず、高い安全性が実証され、また自己申告によるアンケートでも肌実感および製剤の評価で総合的に極めて高い評価が得られた。

文献元:マグノリグナン(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の肝斑など色素沈着症に対する改善効果(文献3:2006)

紫外線による色素沈着の抑制や肝斑などの色素沈着症の改善効果が臨床的に認められています。

以前はカネボウの美白化粧品に配合されていましたが、2013年のロドデノールの白斑問題による関連化粧品回収によってマグノリグナン配合化粧品も回収されており、それ以来マグノリグナン配合化粧品はリリースされていないようです(文献4:2013)

スポンサーリンク

5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールの安全性(刺激性・アレルギー)について

5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールの現時点での安全性は、皮膚刺激性は一過性のわずかな紅斑が起こる可能性がありますが、眼刺激性はなく、皮膚感作(アレルギー)が起こる可能性も低く、光毒性および光感作性もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

なお、5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールの製品への配合量は非公開のため、安全性試験でも濃度は非公開となっており、伏せ字として●で記載しています。

皮膚刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] ヒトパッチテストにおいて、健康な男性14人、女性26人の背中に●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ溶液0.015mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚反応を観察したところ、いずれの被検者も皮膚反応は認められなかった。なお、対照物質であるオリーブ油の適用部位ではパッチ除去1時間後で1人の被検者に軽い紅斑が認められたが、24時間後には反応は消失した。これらの結果からこの試験物質はヒト皮膚に対して刺激反応を引き起こす可能性は少ないと考えられた
  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液の皮膚一次刺激性試験の結果、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともわずかな紅斑が認められた。なお、対照物質として用いられたオリーブ油は、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位とも刺激反応は認められなかったことから、試験物質は軽度の皮膚一次刺激性を有すると考えられた
  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液の10日間連続皮膚刺激性試験の結果、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともに適用1~3日の観察において軽度の紅斑が認められた。なお、対照物質として用いられたオリーブ油においても、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともに適用1~3日の観察において軽度の紅斑が認められ、試験物質の連続刺激性は軽度であると考えられた

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、ヒト皮膚および動物の両方で一過性の軽い紅斑が報告されているため、皮膚刺激性は一過性の軽度の紅斑が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液のDraize法に基づいた眼刺激性試験の結果、いずれのウサギにおいても眼刺激性は認められなかった。なお、対照物質として用いられたオリーブ油においても刺激反応は認められず、試験物質は目に対して無刺激性と判断された

と記載されています。

試験結果によると、無刺激であると報告されているため、眼刺激性はないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の感作性試験において、Maximization法に基づいて実施した結果、いずれのモルモットも皮膚反応は認められなかった。なお、陽性対照として0.1%2,4-ジニトロクロロベンゼン溶液を用いたモルモット群では明らかに陽性の皮膚反応が認められたことからこの試験物質の感作性はないと考えられた

と記載されています。

試験結果は動物のものひとつですが、皮膚感作性はないと結論付けられているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の光感作性試験において、照射線量10J/c㎡ UV-Aでの照射の結果、照射部位および非照射部位のどちらも皮膚反応は認められなかった。なお、陽性対照として2%3,3′,4’5-テトラクロロサリチルアニリド溶液を用いたモルモット群では明らかに陽性の皮膚反応が認められたことから、この試験物質の光感作性はないと考えられた
  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の光毒性試験において、Morikawa法に準じて実施した結果、UV(+)およびUV(-)ともに皮膚の変化は認められなかった。なお、陽性対照である0.1%8-MOPエタノール溶液を用いたモルモット群ではすべてにおいて陽性反応が認められたことから、この試験物質は光毒性を有しないと判断された

と記載されています。

試験によると、光毒性および光感作性はないと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールは掲載なし(∗2)となっていますが、試験結果などをみる限り安全性は高いと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールは美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 医薬品医療機器総合機構(2005)「審査報告書 カネボウ ホワイトニングE」, <http://www.pmda.go.jp/quasi_drugs/2005/Q200500002/200542000_21700DZZ00717_A100_1.pdf> 2018年1月31日アクセス.
  2. 武田克之, 横田朋宏, 池本毅, 柿島博, 松尾透(2006)「マグノリグナン(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の紫外線により生成される色素沈着に対する抑制効果」西日本皮膚科(68)(3),p288-292.
  3. 武田克之, 荒瀬誠治, 佐川禎昭, 鹿田祐子, 岡田裕之, 渡辺晋一, 横田朋宏, 池本毅, 柿島博, 松尾透(2006)「マグノリグナン(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の肝斑など色素沈着症に対する改善効果」西日本皮膚科(68)(3),p293-298.
  4. 日本経済新聞(2013)「カネボウ、美白化粧品で54製品回収 肌まだらに白く」, <https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0402H_U3A700C1CR0000/> 2018年1月31日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ