5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール(マグノリグナン)とは…成分効果と毒性を解説

美白成分
5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール(マグノリグナン)
[医薬部外品表示名称]
・5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール

[慣用名]
・マグノリグナン

2005年に医薬部外品美白有効成分として承認されたp-プロピルフェノールの二量体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品に使用されます。

チロシナーゼ成熟抑制による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ成熟抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼの成熟とメラニン生合成の関係について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合し、チロシンが酸化することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

より詳細に解説すると、以下のメラノソームの解説図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

メラノソームの解説

メラニンの生合成は、メラノサイト内のメラノソームという特殊な小胞に成熟したチロシナーゼが移行し、チロシンと結合することから始まります。

ただし、チロシナーゼが未成熟なままの場合は、正しくメラノソームへ移行せずにやがて分解されてしまうことが複数報告されています(文献3:1999;文献4:2000;文献5:2001)

このような背景からチロシナーゼ成熟を抑制することは、メラニン生合成の抑制および色素沈着抑制という点で重要であると考えられます。

2006年にカネボウによって報告された5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール(マグノリグナン)のメラニン産生抑制への影響検証によると、

B16メラノーマ細胞由来メラノーマ細胞を用いて、マグノリグナンのメラニン生成に対する効果をアルブチンおよびコウジ酸と比較し、IC₅₀値(50%阻害する濃度)を求めたところ、以下の表のように、

美白成分 IC₅₀(μg/mL)
メラニン生成 マッシュルーム由来
チロシナーゼ活性
マグノリグナン 4.0 >330
アルブチン 20 35
コウジ酸 120 4.1

マグノリグナンは、コウジ酸およびアルブチンよりも優れたメラニン生成抑制作用をもつことがわかった。

また優れたメラニン生成抑制作用を有するにも関わらず、マッシュルームチロシナーゼに対しては330μg/mLまで添加してもチロシナーゼ活性を阻害しなかったことから、チロシナーゼタンパク質量に与える影響をいくつか検討した。

その結果、チロシナーゼの合成には関与しないが、分解を促進することにより濃度依存的にチロシナーゼタンパク質量を減少させていることが示唆された。

未成熟なチロシナーゼは正しくメラノソームへ移行せずにやがて分解されてしまうことが報告されており、マグノリグナンを添加した細胞ではメラノソーム中のチロシナーゼ量の減少が認められることから、マグノリグナンの作用はメラノソームへ移行するチロシナーゼを減少させるものであることが示された。

これらの結果から、マグノリグナンのメラニン生成抑制メカニズムは、合成されたチロシナーゼタンパク質の成熟を抑制することで、分解経路に流れるチロシナーゼ量を増加し、メラノソームに移行するチロシナーゼタンパク質量を減少させる作用であると判断した。

このような検証結果が明らかになっており(文献2:2006;文献6:2003)、5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールにチロシナーゼ成熟抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

次に2006年に徳島大学とカネボウの共同研究によって報告されたヒト紫外線色素沈着に対するマグノリグナンの効果検証によると、

健康な43人を対象に上腕内側部に人工紫外線により生成する色素沈着に対する抑制効果を、0.5%マグノリグナン配合製剤およびマグノリグナン未配合製剤(対照)の3週間連用試験により評価したところ、以下のグラフのように、

紫外線色素沈着に対するマグノリグナン配合製剤の影響

0.5%マグノリグナン配合製剤塗布部位は、未配合製剤と比較して有意に色素沈着の軽減が認められた。

また、分光測色計による皮膚色測定においても、未配合製剤と比較して3週間目のL値(皮膚明度)が有意に高値を示した。

このような検証結果が明らかになっており(文献7:2006)、5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールに紫外線により生成する色素沈着に対する抑制効果が認められています。

さらに、2006年に徳島大学、佐川医院、鹿田皮膚科 、おかだ皮フ科クリニック、帝京大学医学部皮膚科学教室 およびカネボウの共同研究によって報告されたヒト色素沈着に対するマグノリグナンの効果検証によると、

顔面の色素沈着に悩む37人の成人女性に0.5%マグノリグナン配合製剤を1日2回6ヶ月間にわたって連用してもらったところ、使用開始1ヶ月目から3ヶ月、6ヶ月と経時的に色素沈着の強度および面積の有意な改善効果が確認され、皮膚科専門医による有用性判定においても「やや有用」以上が86%を占めた。

また被検者のアンケート回答においても70%以上が「しみが薄くなった」との高い評価を得た。

このような検証結果が明らかになっており(文献8:2006)、5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールにヒト色素沈着に対する抑制効果が認められています。

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5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールの安全性(刺激性・アレルギー)について

5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] ヒトパッチテストにおいて、健康な男性14人、女性26人の背中に●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ溶液0.015mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚反応を観察したところ、いずれの被検者も皮膚反応は認められなかった。これらの結果からこの試験物質はヒト皮膚に対して刺激反応を引き起こす可能性は少ないと考えられた
  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液の皮膚一次刺激性試験の結果、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともわずかな紅斑が認められた。なお、対照物質として用いられたオリーブ油は、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位とも刺激反応は認められなかったことから、試験物質は軽度の皮膚一次刺激性を有すると考えられた
  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液の10日間累積皮膚刺激性試験の結果、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともに適用1-3日の観察において軽度の紅斑が認められた。なお、対照物質として用いられたオリーブ油においても、未処置皮膚部位および損傷皮膚部位ともに適用1-3日の観察において軽度の紅斑が認められ、試験物質の累積刺激性は軽度であると考えられた

徳島大学およびカネボウの臨床データ(文献7:2006)によると、

  • [ヒト試験] 健康な43人の被検者に0.5%マグノリグナン配合製剤を3週間連用してもらったところ、いずれの被検者においても皮膚刺激などの皮膚反応はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の皮膚刺激性が報告されているため、軽度の皮膚刺激がまれに起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールを含むオリーブ油溶液のDraize法に基づいた眼刺激性試験の結果、いずれのウサギにおいても眼刺激性は認められず、試験物質は眼に対して無刺激性と判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の感作性試験(Maximization法)において、いずれのモルモットにも皮膚反応は認められなかった。なお、陽性対照として0.1%2,4-ジニトロクロロベンゼン溶液を用いたモルモット群では明らかに陽性の皮膚反応が認められたことからこの試験物質の感作性はないと考えられた

徳島大学およびカネボウの臨床データ(文献6:2006)によると、

  • [ヒト試験] 健康な43人の被検者に0.5%マグノリグナン配合製剤を3週間連用してもらったところ、いずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の光感作性試験において、照射線量10J/c㎡ UV-Aでの照射の結果、照射部位および非照射部位のどちらも皮膚反応は認められなかった。なお、陽性対照として2%3,3′,4’5-テトラクロロサリチルアニリド溶液を用いたモルモット群では明らかに陽性の皮膚反応が認められたことから、この試験物質の光感作性はないと考えられた
  • [動物試験] モルモットを用いた●%5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオール溶液の光毒性試験において、Morikawa法に準じて実施した結果、UV(+)およびUV(-)ともに皮膚の変化は認められなかった。なお、陽性対照である0.1%8-MOPエタノール溶液を用いたモルモット群ではすべてにおいて陽性反応が認められたことから、この試験物質は光毒性を有しないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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5,5′-ジプロピルビフェニル-2,2′-ジオールは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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文献一覧:

  1. 医薬品医療機器総合機構(2005)「カネボウ ホワイトニングE」審査報告書.
  2. 佐々木 稔, 他(2006)「マグノリグナン®の美白効果」皮膚の抗老化最前線,257-264.
  3. N Branza-Nichita, et al(1999)「Tyrosinase folding and copper loading in vivo: a crucial role for calnexin and alpha-glucosidase II.」Biochemical and Biophysical Research Communications(261)(3),720-725.
  4. K Jimbow, et al(2000)「Assembly, target-signaling and intracellular transport of tyrosinase gene family proteins in the initial stage of melanosome biogenesis.」Pigment Cell & Melanoma Research(13)(4),222-229.
  5. K Toyofuku, et al(2001)「The molecular basis of oculocutaneous albinism type 1 (OCA1): sorting failure and degradation of mutant tyrosinases results in a lack of pigmentation.」Biochem Journal(355)(Pt2),259–269.
  6. K Nakamura, et al(2003)「Down-regulation of melanin synthesis by a biphenyl derivative and its mechanism.」Pigment Cell & Melanoma Research(16)(5),494-500.
  7. 武田 克之, 他(2006)「マグノリグナン®(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の紫外線により生成される色素沈着に対する抑制効果」西日本皮膚科(68)(3),288-292.
  8. 武田 克之, 他(2006)「マグノリグナン®(5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール)配合製剤の肝斑など色素沈着症に対する改善効果」西日本皮膚科(68)(3),293-298.

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