プルーン分解物とは…成分効果と毒性を解説

色素沈着抑制
プルーン分解物
[化粧品成分表示名称]
・プルーン分解物

[医薬部外品表示名称]
・プルーン酵素分解物

バラ科植物セイヨウスモモ(学名:Prunus domestica 英名:plum)のうち果汁の少ないプルーン(prune)系統の果肉を繊維素分解酵素で分解して得られる抽出物植物エキスです。

プルーンは西アジア(コーカサス地方からイラン北部)を原産とし、古代からヨーロッパで食用として栽培され、19世紀(1801-1900年)に米国に伝わり、現在は世界の70%相当が米国カリフォルニア州で栽培されています(文献1:2011)

日本においては、明治初期に渡来したもののプルーンは雨を嫌う果樹であることから風土に適しているとはいえず、現在は主に長野県、北海道、青森県などで雨除け施設を使用しながら栽培されています(文献1:2011;文献2:-)

プルーン果実は天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 少糖 スクロース
単糖 グルコース、フルクトース
有機酸 リンゴ酸
ビタミン アスコルビン酸
アミノ酸 アスパラギン酸アラニンフェニルアラニン など
無機質 カリウム、リン、マグネシウム、カルシウム など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献4:2000)

プルーン果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野においてほとんどは生食用果物として用いられるほか、加工用としてはドライフルーツ、濃縮シロップ、ジャムなどに用いられます(文献1:2011;文献3:-)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料、クレンジング製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品などに汎用されています。

メラニン移送阻害による色素沈着抑制作用

メラニン移送阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムから合成メラニンの表皮への移送および排泄について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献5:2002;文献6:2016;文献7:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献5:2002;文献7:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献5:2002;文献7:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献5:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献5:2002)

このような背景から、紫外線照射などによって過剰に生成されるメラニンが表皮細胞へ移送されるのを阻害することは、色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2006年に一丸ファルコスによって報告されたプルーン分解物のメラニンおよびヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

in vitro試験においてヒト正常表皮細胞を10,000個/wellになるように播種した培地に1%プルーン分解物または比較としてプルーン果実エキス(酵素分解していない抽出物)、ブランク(∗1)として50%BG溶液をそれぞれ添加した後に蛍光ラベルされたマイクロビーズを5,000,000粒/well添加し、72時間後に蛍光強度を測定し細胞数あたりの蛍光ビーズ取り込み量を算出したところ、以下のグラフのように、

∗1 ブランクとは、評価する対象物を抜いた状態を指し、ここではショウブ根茎エキスを除いた蒸留水のみのものを指します。

プルーン分解物の表皮細胞へのメラニン移送阻害作用

プルーン分解物は、表皮細胞へのメラニン移送の阻害作用が確認された。

次に、10人の女性被検者(20-35歳)の前腕部に5%プルーン分解物配合クリームを、もう片方の前腕部に未配合クリームを二重盲検法に基づいて30日連続で使用してもらった。

30日後に「有効:シミ・ソバカス、くすみまたは日焼けなどの皮膚色素沈着部位に対して明確な改善が感じられた」「やや有効:シミ・ソバカス、くすみまたは日焼けなどの皮膚色素沈着部位に対して若干の改善が感じられた」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 皮膚色素沈着に対する改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
プルーン分解物配合クリーム 7 3 0
クリームのみ(対照) 0 1 9

5%プルーン分解物配合クリームの塗布は、未配合クリームと比較して明確に皮膚色素沈着に対する改善効果を有することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献8:2006)、プルーン分解物にメラニン移送阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

プルーン分解物の安全性(刺激性・アレルギー)について

プルーン分解物の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献8:2006)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に固形分濃度1%プルーン分解物水溶液を塗布し、塗布24,48および72時間後に紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に固形分濃度2%プルーン分解物水溶液0.03mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に紅斑および浮腫を指標として皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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プルーン分解物は美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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参考文献:

  1. 鈴木 洋(2011)「プルーン」カラー版健康食品・サプリメントの事典,163-164.
  2. 北海道後志総合振興局(-)「プルーン」, <http://www.shiribeshi.pref.hokkaido.lg.jp/file.jsp?id=354523> 2021年2月16日アクセス.
  3. 中央果実協会(-)「ドメスチカスモモ」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/images/fruit/endemic/pdf/domesuchika.pdf> 2021年2月16日アクセス.
  4. 深井 洋一, 他(2000)「プルーンの成分特性と抗酸化能」日本食品科学工学会誌(47)(2),97-104.
  5. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  7. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  8. 一丸ファルコス株式会社&三基食品株式会社(2006)「ファゴサイトーシス抑制剤」特開2006-347926.

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