ビタミンC誘導体の解説とビタミンC誘導体一覧
・ビタミンC誘導体、アスコルビン酸誘導体、ビタミンC配糖体
ビタミンC誘導体については、ビタミンCを安定させて効果的に肌に届けて作用させる成分と理解していると思いますが、化粧品市場で汎用されているビタミンC誘導体にはいくつか種類があり、それぞれ安定性、持続性、効果の種類などが異なります。
ここでは化粧品に用いられるビタミンC誘導体の初期から現在までの変遷、ビタミンC誘導体の種類と特徴をまとめ、末尾にビタミンC誘導体の一覧を掲載しておきます。
ビタミンC誘導体の解説とその変遷
ビタミンC誘導体(アスコルビン酸誘導体)とは、光、熱、酸化に対して最も不安定なビタミンであり、また水溶性のために皮膚浸透性が低いビタミンであるアスコルビン酸(ビタミンC)の安定性や皮膚浸透性を向上させ、皮膚内においてビタミンCそのものおよび/またはビタミンC誘導体としての効果・作用を発揮させることを目的に、アスコルビン酸を化学的に修飾した化合物のことを指します。
国内の化粧品におけるビタミンC誘導体の歴史を紐解くと、初期において最も重要な課題はビタミンCの安定化および皮膚内におけるビタミンCとしての効果・作用の発揮であり、水溶性安定型ビタミンCとしては、
- アスコルビルグルコシド(AA2G)
- アスコルビルリン酸Na(APS)
- リン酸アスコルビルMg(APM)
が汎用的に使用されており、リン酸型ビタミンC誘導体は皮膚内の酵素であるホスファターゼによりリン酸を、アスコルビルグルコシドはα-グルコシダーゼグルコシダーゼによりグルコースをそれぞれ遊離し、ビタミンCそのものとしての作用を発揮することが知られています(文献1:2004)。
皮膚浸透性に優れた油溶性ビタミンC誘導体としては、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルが汎用的に使用されており、その後は水溶性と油溶性のどちらの性質も有した両親媒性のパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)やビタミンC誘導体そのものが効果を発揮する3-O-エチルアスコルビン酸(VCエチル)などが開発され、汎用されています。
また、ビタミンC誘導体は、まれに皮膚のつっぱり感や乾燥の亢進が起こることが課題でしたが、近年は水溶性保湿成分であるグリセリンを付加・結合することで、つっぱり感や乾燥を解決するビタミンC誘導体も開発されています。
ビタミンC誘導体の作用・効果
ビタミンC誘導体の作用・効果には、すでに解説したように、
- 皮膚内の酵素による分解・代謝を通じてビタミンCの作用・効果を発揮するもの
- 酵素反応を必要とせず、ビタミンC誘導体がそのままの状態で作用・効果を発揮するもの
の2種類があります。
化粧品におけるビタミンCの主な作用・効果は、
- チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用
- ドーパキノンおよび黒化メラニン還元による色素沈着抑制作用
- 活性酸素消去能による細胞保護・抗酸化作用
- 紫外線照射における紅斑抑制・抗炎症作用
- コラーゲン合成促進による抗老化作用
などがあり、ビタミンCの作用・効果を発揮するタイプは実際の皮膚内ビタミンC濃度などに応じてこれらの作用・効果を発揮すると考えられます。
一方で、ビタミンC誘導体がそのままの状態で作用・効果を発揮するものについては、ビタミンCの作用を基本としているものの、その作用の一部をさらに向上させたり、新しい作用を付加したものもあり、今後は作用・効果の種類を拡げたものが開発されていくと推測されます。
ビタミンC誘導体の種類
化粧品成分名 | 慣用名 | 医薬部外品 有効成分 |
タイプ | 安定性 | 作用物質 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
リン酸アスコルビルMg | APM | 承認 | 水溶性 | ○ | ビタミンC | 安定型 |
アスコルビルリン酸Na | APS | 承認 | 水溶性 | ○ | ビタミンC | 安定型 |
アスコルビルグルコシド | AA2G | 承認 | 水溶性 | ◎ | ビタミンC | 安定型 持続型 |
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル | VCIP | 承認 | 油溶性 | ◎ | 不明(∗1) | 浸透型 |
パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na | APPS | – | 両親媒性 | △ | ビタミンC | 浸透型 |
3-O-エチルアスコルビン酸 | VCエチル | 承認 | 水溶性 | ◎ | VCエチル | 即効型 持続型 |
イソステアリルアスコルビルリン酸2Na | APIS | – | 両親媒性 | ◎ | ビタミンC | 高浸透型 |
カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸 | GOVC | – | 両親媒性 | ◎ | 不明(∗1) | 保湿型 |
∗1 現時点では化合物としての作用なのかビタミンC自体の作用なのか明らかになって(みつけられて)いないという意味です。
ビタミンC誘導体一覧
- 数字 A-Z ア-ンの順番に並べてあります。
- 知りたいビタミンC誘導体がある場合は「目的の行(ア行カ行など)」をクリックすると便利です。
- 化粧品成分名および医薬部外品名のみの一覧であり、慣用名(VCIPなど)は掲載していません。

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文献一覧:
- 山本 格, 他(2004)「アスコルビン酸(ビタミンC)誘導体の開発動向」ビタミン(78)(1),36-42.
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