パイナップル果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

色素沈着抑制 バリア改善
パイナップル果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・パイナップル果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・パイナップルセラミド

パイナップル科植物パイナップル(学名:Ananas comosus 英名:pineapple)の果実からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

パイナップル果実エキスについては、以下の表をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

化粧品成分表示名称 医薬部外品表示名称 グルコシルセラミド含有量 皮膚に対する主な作用
パイナップル果実エキス 低い 色素沈着抑制作用
パイナップルセラミド 高い 色素沈着抑制作用
バリア機能改善作用

一般的に使用されているパイナップル果実エキスとは別に、スフィンゴ糖脂質の一種であるグルコシルセラミドの含有量を高めたパイナップル果実エキスが流通しており、グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスは色素沈着抑制作用のほかにバリア機能の改善作用を有していることが特徴で、医薬部外品表示名称としては「パイナップルセラミド」と表示されます。

化粧品成分表示名称はどちらも同じであるため、成分表示のみではこれらの違いはわかりませんが、グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスである場合は、製品プロモーション媒体において「パイナップルセラミド」「フルーツセラミド」といったセラミドを想起させる記載があると推察され、そういった記載によって判別することが可能です。

パイナップルはブラジル原産で、先住民族により南米各地に伝播され、1493年にコロンブスが西インド諸島のグアドループ島で発見したのをきっかけに急速にヨーロッパ、アフリカ、アジア熱帯地方に広がり、現在は主にブラジル、フィリピン、タイ、コスタリカ、インド、インドネシアなど熱帯の国々で栽培されています(文献1:2017;文献2:2019)

日本においては、沖縄県が主産地ですが、供給の多くはフィリピンに依存しています(文献1:2017;文献3:-)

パイナップル果実エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 少糖 スクロース
単糖 グルコースフルクトース
有機酸 クエン酸リンゴ酸
アミノ酸 アスパラギン、シスチン、グルタミンセリンアスパラギン酸γ-アミノ酪酸 など
ビタミン アスコルビン酸
スフィンゴ脂質 スフィンゴ糖脂質 グルコシルセラミド
酵素 システインプロテアーゼ ブロメライン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2017;文献4:2016;文献5:2016)

パイナップル果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野においては生食用果物として用いられるほか、加工用としては缶詰、ジュース、キャンディなどに用いられます(文献1:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、ボディケア製品、ボディソープ製品、ネイル製品などに使用されています。

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献6:2002;文献7:2016;文献8:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献6:2002;文献8:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献6:2002;文献8:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献6:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献6:2002)

このような背景から、過剰なメラニンの生成を抑制することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

2002年にコーセーによって報告されたパイナップル果実エキスおよび/またはパイナップル果実搾汁液のメラニンおよびヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

in vitro試験においてマウス由来B16メラノーマ細胞を播種した調整液にそれぞれの溶媒抽出方法や最終濃度のパイナップル果実エキスを、また陽性対照としてメラニン生成抑制作用を有することで知られているハトムギ種子エキスを添加し、培養・処理後した。

培養後に「+:試料未添加と比較して明らかに色素沈着の改善あり」「±:試料未添加と比較してやや色素沈着の改善あり」「-:試料未添加と比較して変化なし」これらの基準で色素沈着改善効果を評価したところ、以下の表のように、

試料 抽出溶媒 濃度(μg/mL)における色素沈着改善効果
100 500 1000
パイナップル果実搾汁液 なし +
パイナップル果実 50%BG +
50%エタノール +
ハトムギ種子エキス(比較対照) 70%エタノール ±

パイナップル果実エキスは、メラニン生成抑制作用を有していることで知られているハトムギ種子エキスと同等のメラニン生成抑制効果を有していることが確認された。

次に、120人の女性被検者(27-54歳)のうち15人を1グループとし、それぞれパイナップル果実搾汁液(∗1)リン酸アスコルビルMg(色素沈着抑制剤)トコフェロール(抗酸化剤)グリチルリチン酸2K(抗炎症剤)を単独または併用したクリームを1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって洗顔後に塗布してもらい、対照として残りの15人にすべて未配合クリームを同様に使用してもらった。

∗1 試験ではパイナップル果実搾汁液を用いていますが、この報告内容においてパイナップル果実搾汁液とパイナップル果実エキスは代替が可能とされていること、B16メラノーマを用いたin vitro試験において同等の色素沈着改善作用を示すことから、パイナップル果実搾汁液で明らかにされた効果がそのままパイナップル果実エキスにも当てはまると考えます。

3ヶ月後に「有効:肌のくすみが目立たなくなった」「やや有効:肌のくすみがやや目立たなくなった」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 肌のくすみ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
0.5%パイナップル果実搾汁液 10 4 1
0.5%リン酸アスコルビルMg 6 7 2
0.25%トコフェロール 5 8 2
0.25%グリチルリチン酸2K 7 6 2
0.1%パイナップル果実搾汁液 + 0.25%リン酸アスコルビルMg 13 2 0
0.1%パイナップル果実搾汁液 + 0.05%トコフェロール 13 2 0
0.1%パイナップル果実搾汁液 + 0.07%グリチルリチン酸2K 13 1 1
クリームのみ(対照) 0 2 13

0.5%パイナップル果実搾汁液配合クリームの塗布は、未配合クリームと比較して肌のくすみを改善することがわかった。

また、パイナップル果実搾汁液に他の色素沈着抑制剤であるリン酸アスコルビルMgをはじめ、抗炎症剤であるグリチルリチン酸2Kまたは抗酸化剤であるトコフェロールを併用することにより相乗効果を発揮することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:2002)、パイナップル果実エキスおよび/またはパイナップル果実搾汁液にメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

また、パイナップル果実搾汁液は、他の色素沈着抑制剤であるリン酸アスコルビルMg、抗酸化剤であるトコフェロール、抗炎症剤であるグリチルリチン酸2Kなどを併用することにより、色素沈着抑制作用の相乗効果が得られることが明らかにされていることから(文献9:2002)、パイナップル果実エキスにおいても同様の効果が得られると考えられます。

セラミド産生促進によるバリア改善作用 [グルコシルセラミド高含有の場合]

セラミド産生促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識として角質層における細胞間脂質の構造、セラミドの役割およびセラミド産生のメカニズムについて解説します。

以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されており(文献10:1995)、その約50%をセラミドが占めています。

これら細胞間脂質は以下の図のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献11:1991)。

次に、表皮におけるセラミド生成(合成)プロセスに関しては、以下の表皮におけるセラミド産生プロセス図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮におけるセラミド産生プロセス

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後はケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗3)として剥がれ落ちます(文献12:2002)

∗3 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバー(turnover)と呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献13:2002)

セラミドの前駆体かつスフィンゴ糖脂質の一種であるグルコシルセラミドも表皮で産生され、角質層において分解酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼを介してセラミドに分化されることが知られており(文献14:2008)、またスフィンゴミエリンからもセラミドが合成されることが明らかにされています(文献15:1998)

一方で、皮膚が乾燥寒冷下に長時間曝露されるような外的要因やアトピー性皮膚炎のような内的要因により乾皮症(ドライスキン)が生じた場合は、角質層の機能低下により、角質層の水分保持能の低下およびバリア機能低下による経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)の上昇が起こり(文献16:2004)、その結果として角質細胞や細胞間脂質が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下していくことが知られています(文献17:2002)

このような背景から、バリア機能が低下している場合においてセラミドの産生を促進することは、バリア機能の改善、ひいてはドライスキンの改善や皮膚の健常性を維持するために重要なアプローチのひとつであると考えられます。

2016年に丸善製薬によって報告されたパイナップル果実エキスのセラミドおよびヒト肌荒れに対する影響検証によると、

in vitro試験において培養ヒト皮膚三次元モデルに各濃度のグルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスを添加し、培養・処理後に角層から細胞間脂質を抽出し、処理後にセラミド標準品の検量線を基にセラミド量を測定したところ、以下のグラフのように、

グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスのセラミド産生促進作用

グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスは、濃度依存的なセラミド産生促進作用を有していることが確認された。

次に、11人の被検者の前腕内側部に肌荒れを惹起させた後に肌荒れ部位に2%グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキス配合製剤もしくは未配合製剤を1日2回28日間にわたって塗布した。

試験開始日および28日目に試験部位の角層を採取し、角層中の細胞間脂質を抽出しセラミド量の平均値を求めたところ、以下のグラフのように、

28日間のグルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキス配合製剤もしくは未配合製剤塗布によるセラミド回復量の比較

2%グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキス配合製剤の塗布は、未配合製剤と比較して被験部位のセラミド量が回復する傾向が認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献5:2016)、グルコシルセラミド高含有パイナップル果実エキスにセラミド産生促進によるバリア改善作用が認められています。

パイナップル果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

パイナップル果実エキスの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

パイナップル果実エキスは美白成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 バリア改善成分

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参考文献:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「パインアップル」新版 日本食品大事典,605-606.
  2. 中央果実協会(2019)「パインアップル」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_138.pdf> 2021年2月14日アクセス.
  3. 農林水産省(-)「財務省貿易統計(輸入)」, <https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/houkoku_yunyu.html> 2021年2月14日アクセス.
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  6. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
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  9. 株式会社コーセー(2002)「皮膚外用剤」特開2002-275081.
  10. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
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