ハイドロキノンとは…成分効果と毒性を解説

美白成分
ハイドロキノン
[化粧品成分表示名称]
・ハイドロキノン

ベンゾキノンを亜硫酸で還元することで得られる二価フェノールです。

自然界ではイチゴ類、ブルーベリー、コケモモ、クランベリー、麦芽などの植物類、細菌類、海洋生物種の副産物などに含まれるといわれている化合物です。

ハイドロキノンは欧米においては主な美白剤のひとつであり、その濃度が2%以下であれば市販で容易に入手が可能で、4-5%以上の濃度でも医師の処方で用いることが可能です。

一方で日本においては、2001年の化粧品規制緩和によって化粧品として配合が認可されましたが、安全性・安定性の面から一般市場に汎用されている成分とは区別され、主に院内製剤・薬局製剤として医師管理下で使用されています。

院内製剤・薬局製剤として使用されていますが、ハイドロキノンは医薬品として承認されているわけではなく、医療現場においては患者の病態やニーズに合わせて医療上必要と判断された場合に医薬品として収載のない薬物を製剤し患者に提供することがあり、ハイドロキノン配合製剤の提供はそういったケースに該当します。

ハイドロキノンは、酸素や光に影響を受けることで構造変化をきたし、着色が起こることが知られており(文献7:1990)、酸化防止剤の添加や密閉容器の使用などで安定性の改善が試みられているものの長期にわたる安定性は保てず、ハイドロキノンが色素沈着抑制剤として汎用されるためには、その不安定な性質の改善が課題とされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品に使用されます。

チロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズム、プロスタグランジンおよびプラスミンについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

このような背景から、チロシナーゼを阻害し、メラニンの生合成を抑制することは、色素沈着抑制において重要であると考えられます。

ハイドロキノンのチロシナーゼ阻害メカニズムは、ハイドロキノンの化学構造がチロシナーゼと結合するチロシンおよびドーパと類似しているため、チロシンおよびドーパの代わりにハイドロキノンがチロシナーゼと結合し酵素活性を抑制する競合阻害作用であることが報告されており(文献8:1991;文献9:2006)、またその阻害作用が他の美白成分と比較して顕著であることもよく知られています。

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ハイドロキノンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ハイドロキノンの現時点での安全性は、

  • 皮膚刺激性:2%以下濃度においてほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):皮膚感作が起こる可能性がある
  • その他:1%-2%配合クリームの6ヶ月以上の長期使用において組織黒変症を伴う可能性あり

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のある成分であり、医師管理下における使用が望ましいと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 840人の黒人被検者に1%,2.5%,3.5%,5%および7%ハイドロキノンを含むローション、クリームおよび軟膏を48時間閉塞パッチ適用したところ、3%までの影響は無視できるとし、軽度の刺激剤および感作剤に分類された(Bentley-Phillips B et al,1975)
  • [ヒト試験] 200人のインド人被検者に5%,6%および7%ハイドロキノンを含むパラフィンを24時間開放パッチ適用したところ、72時間で200人のうち6人に5%濃度において軽度の紅斑が観察された(Bentley-Phillips B et al,1975)
  • [ヒト試験] 19人の被検者に2%ハイドロキノン製剤を用いて一次刺激テストを実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、0.89であった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に1%ハイドロキノンを含むワセリンを24時間閉塞パッチ適用したところ、53人のうち1人の被検者に紅斑と湿潤が観察された(Kaaber S et al,1979)
  • [ヒト試験] 137人の被検者(白人94人、黒人43人)に2%,3%,5%ハイドロキノンを含む軟膏を処方したところ、すべての濃度で脱色がみられ、脱色量は濃度とともに増加した。また脱色が始まる前に多くの患者で一過性の炎症がみられた(Spencer M C,1965)
  • [ヒト試験] 56人の黒人と白人の患者に2%および5%ハイドロキノンを含むブリーチクリームを日焼け止めとともに色素沈着した皮膚に適用したところ、56人のうち4人は両方の濃度で脱色し、2%濃度では56人のうち5人に紅斑がみられ、5%濃度では56人のうち18人に紅斑がみられた(Arndt K A et al,1965)
  • [ヒト試験] 100人の黒人患者に5%ハイドロキノンを含む軟膏を適用したところ、すべての被検者に脱色がみられ、適用の最初の月に刺激が観察された。また照射した脱色部位が色素沈着した(Kligman A M et al,1975)
  • [ヒト試験] 8人の患者(黒人5人、白人3人)に10%および30%ハイドロキノンを含むワセリンを1ヶ月連続でパッチテストしたところ、黒人5人のうち2人に10%の色素脱色がみられ、また黒人5人のうち2人に皮膚刺激が示された(Denton C R et al,1952)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986;文献4:2014)によると、

  • [ヒト試験] 66人の患者(肝斑19人、ニキビ25人、須毛部仮性毛包炎11人、ほくろ11人)に5%ハイドロキノンを含む軟膏を適用したところ、皮膚感作および光感作反応は観察されなかった(Mills O H et al,1978)
  • [ヒト試験] 90人の被検者に2%ハイドロキノン製剤を対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、感作誘導期間において90人のうち69人にひとつまたはそれ以上の軽度の皮膚反応がみられた。またチャレンジパッチでは90のうち22人に軽度の皮膚反応がみられた(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 137人の被検者(白人94人、黒人43人)に2%,3%,5%ハイドロキノンを含む軟膏を処方したところ、すべての濃度で脱色がみられ、脱色量は濃度とともに増加した。感作反応は2%,3%濃度では0だったが、5%では39人のうち3人が観察された(Spencer M C,1965)
  • [ヒト試験] 50人の被検者の爪にハイドロキノン(濃度不明)を含む複数のジェルネイル製品を対象にHRIPT(累積刺激&感作試験)を実施したところ、キューティクル刺激およびアレルギー性接触感作の兆候はみられなかった(Biometrix Inc,2008;2010)

ミルディス皮フ科 、タカナシクリニック 、東京慈恵医科大学眼科学教室および生活科学研究所の安全性データ(文献5:2006)

によると、

  • [ヒト試験] ハイドロキノンを対象とした皮膚感作性試験を実施した結果、皮膚感作性ポテンシャルを有していた

ダイセルのLLNA:DAE法の開発による皮膚感作性試験データ(文献6:2016)

によると、

  • [動物試験] LLNA:DAE(誘発相を含み、境界線陽性化学物質を識別する局所リンパ節試験)において、試験群マウスの右耳にハイドロキノン溶液を1,2および3日目に塗布し、10日目に両耳に塗布、またコントロール群には10日目のみ左耳にハイドロキノン溶液を塗布した。どちらも12日目にリンパ節を摘出し、リンパ節重量を測定したところ、皮膚感作性は陽性と判定された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、濃度に関連なく複数の皮膚感作性が報告されているため、皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。

– 皮膚炎または皮膚感作を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986;文献2:1994;文献3:2010)によると、

  • [ヒト試験] 536人の患者に5%ハイドロキノン水溶液を48時間閉塞パッチ適用したところ、536人のうち48人が陽性反応を示した(Moriearty P L et al,1978)
  • [ヒト試験] 少なくとも1つ以上のハプテン(アロマ化合物)に陽性反応を示す80人の患者に0.5%ハイドロキノン溶液50μLを対象にICDRG標準シリーズに基づいて皮膚感作試験を実施したところ、ハイドロキノンによる皮膚反応は観察されなかった(Picardo et al, 1990)
  • [ヒト試験] 1%ハイドロキノンは交差反応性試験において陽性反応を生じなかった(Lisi P et al,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度以下において皮膚感作なしと報告されているため、1%以下濃度において皮膚感作が起こる可能性は低いと考えられます。

ただし、試験データが少ないため、さらなる検証が必要であると考えられます。

外因性組織黒変症について

組織黒変症(Ochronosis)とは、組織に青みがかった黒い変色が起こる色素沈着症状のことであり、少なくとも1%-2%濃度のハイドロキノンを含むクリームの6ヶ月以上の長期使用の結果として、組織黒変症(Exogenous Ochronosis)を伴う可能性があると報告されています(文献3:2010)

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ハイドロキノンは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Hydroquinone and Pyrocatechol」International Journal of Toxicology(5)(3),123-165.
  2. Cosmetic Ingredient Review(1994)「Addendum to the Final Report on the Safety Assessment of Hydroquinone」International Journal of Toxicology(13)(3),167-230.
  3. Cosmetic Ingredient Review(2010)「Final Amended Safety Assessment of Hydroquinone as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(29)(6),274S-287S.
  4. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Amended Safety Assessment of Hydroquinone as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  5. 村上 義之, 他(2006)「ハイドロキノンの安全性試験について」西日本皮膚科(68)(2),185-194.
  6. 山下 邦彦(2016)「惹起相を含む皮膚感作性試験 LLNA:DAE 法の開発」, <https://ynu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=7668&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1> 2019年4月9日アクセス.
  7. N Tatsumoto, et al(1990)「The effects of ultrasonic irradiation on the chemical reaction of hydroquinone」Journal of the Acoustical Society of Japan(11)(2),63-69.
  8. A Palumbo, et al(1991)「Mechanism of inhibition of melanogenesis by hydroquinone.」Biochimica et Biophysica Acta(1073)(1),85-90.
  9. S Parvez, et al(2006)「Survey and mechanism of skin depigmenting and lightening agents.」Phytotherapy Research(20)(11),921-934.

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