トラネキサム酸セチル塩酸塩(TXC)とは…成分効果と毒性を解説

美白
トラネキサム酸セチル塩酸塩(TXC)
[医薬部外品表示名称]
・トラネキサム酸セチル塩酸塩

[慣用名]
・TXC

2009年に医薬部外品美白有効成分として承認された、トラネキサム酸セタノールでエステル結合した両親媒性トラネキサム酸誘導体(∗1)です。

∗1 両親媒性とは、親水性と親油性の両方を有していることであり、トラネキサム酸セチル塩酸塩の場合は水溶性のトラネキサム酸に親油性のセタノールを付加することで親水性と親油性の両方の特徴を有しています。

トラネキサム酸セチル塩酸塩の基になっているトラネキサム酸は、1979年にトラネキサム酸の内服が肝斑に有用であると発表された後(文献2:1979)、次々と肝斑に対する有用性が報告され(文献3:2008)、2002年には医薬部外品美白有効成分として承認され、色素沈着抑制効果や肝斑をはじめとする色素沈着に対する有効性はよく知られています。

トラネキサム酸は親水性であるため、皮膚への浸透性および皮内でも持続性は高いとはいえない中で、トラネキサム酸に親油性を修飾することで、経皮からの吸収性および皮内持続性を向上させる目的で開発されたのがトラネキサム酸セチル塩酸塩(TXC)です(文献4:2006)

トラネキサム酸セチル塩酸塩は、浸透すると皮膚内に存在する酵素であるエステラーゼによってトラネキサム酸へ分解・代謝されることが確認されており(文献1:2008)、表皮下層においてトラネキサム酸としての作用・効果を発揮すると推察されています。

薬用化粧品(医薬部外品)に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品などに使用されます。

プロスタグランジンE₂生成抑制による色素沈着抑制作用

プロスタグランジンE₂生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびプロスタグランジンE₂について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

プロスタグランジンE₂は、炎症性物質かつ情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつであり、メラノサイトに存在するレセプターに直接届いてメラニン生成の誘発にも関与します。

このような背景から、プロスタグランジンE₂生成を抑制し、メラノサイトへのプロスタグランジンE₂の伝達を防止することは、メラニン生合成の抑制および色素沈着抑制において重要であると考えられます。

2008年にシャネルによって報告されたトラネキサム酸セチル塩酸塩(TXC)の色素沈着への影響検証によると、

紫外線照射(UVB)によりヒト正常ケラチノサイトから産生されるメラノサイト活性化因子の産生抑制試験において、TXCはUVB照射ケラチノサイト培養上清によるメラノサイト増殖を抑制することが確認されたことから、TXCはメラノサイト活性化因子産生抑制作用を有することが示唆された。

また、紫外線によりヒト正常ケラチノサイトから産生されるプロスタグランジンE₂の産生抑制試験において、TXCがプロスタグランジンE₂を抑制したこと、トラネキサム酸にもその作用が知られていることから、TXCはメラノサイト活性化因子の産生抑制、とくにプロスタグランジンE₂の産生抑制によりメラニン生成を抑制すると考えられた。

このような検証結果が明らかになっており(文献1:2008)、トラネキサム酸セチル塩酸塩にプロスタグランジンE₂生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

また、同じく2008年にシャネルによって報告されたトラネキサム酸セチル塩酸塩(TXC)のヒト色素沈着への効果検証によると、

健康な27人の被検者(男性12人、女性15人)の左上腕内側4ヶ所に擬似太陽光照射用ソーラーシミュレーター(290-400nm)を用いて1.4MEDに相当する紫外線量を照射し、各紫外線照射部位にTXC、陽性対照としてアスコルビルリン酸Na、対照として基剤のみを紫外線照射直後から1日2回3週間にわたって連用した。

皮膚科医の専門医が皮膚の色素沈着および明度差を評価したところ、全評価日においてTXCおよびアスコルビルリン酸Naの色素沈着の程度が基剤対照と比較して少ない傾向が観察された。

皮膚色の明度差については、照射1週間後に基剤対照と比較して、TXCおよびアスコルビルリン酸Naは有意に減少し、色素沈着の抑制作用が観察された。

このような検証結果が明らかになっており(文献1:2008)、トラネキサム酸セチル塩酸塩にプロスタグランジンE₂生成抑制によるヒト色素沈着抑制作用が認められています。

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トラネキサム酸セチル塩酸塩の安全性(刺激性・アレルギー)について

トラネキサム酸セチル塩酸塩の現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

シャネルの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 健康な成人女性50人の上背部にトラネキサム酸セチル塩酸塩を白色ワセリンで●%に調整した調剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後の皮膚反応を評価したところ、パッチ除去1時間後に+(明らかな紅斑)が1人、±(わずかな紅斑)が2人、24時間後で±が1人観察された。これらの陽性反応の発生状況は陰性対照の白色ワセリン、注射用蒸留水と同程度であり、トラネキサム酸セチル塩酸塩の皮膚刺激性は安全な範囲と判断された
  • [ヒト試験] 健康な成人42人(男性4人、女性38人)の上背部にトラネキサム酸セチル塩酸塩を含むクリームを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1時間および24時間後の皮膚反応を観察する方法で試験を実施した結果、いずれの観察時点においても皮膚反応は観察されなかったため、この試験物質はヒト皮膚に対して刺激性ではないと判断された
  • [動物試験] ウサギを用いてトラネキサム酸セチル塩酸塩●%配合プロピレングリコール溶液を対象に連続皮膚刺激性試験を実施した。試験物質を1日1回14日連続塗布し、Draize法に従って評価したところ、観察期間を通じていずれのウサギにおいても皮膚反応、一般状態の異常は認められなかった。以上の結果からトラネキサム酸セチル塩酸塩は濃度●%(配合濃度の約9倍)では連続皮膚刺激性を示さないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

シャネルの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] ウサギにトラネキサム酸セチル塩酸塩●%を含むヒドロキシエチルセルロースを点眼し、Draize法に従って評価したところ、点眼後24時間で1匹の結膜にスコア3(分泌物)の刺激反応が認められたが、48時間後には回復した。他にスコア1(発赤)の刺激反応が4日後まで観察されたが、その後は軽減し、点眼7日後にはすべて消失した。角膜や虹彩に刺激反応は認められなかった。平均眼刺激性スコアの最大値は6.7であり、トラネキサム酸セチル塩酸塩の眼刺激性は弱いと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激性が報告されているため、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

シャネルの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてトラネキサム酸セチル塩酸塩の皮膚感作性試験を行ない、Adjuvant and Patch法に従って判定したところ、いずれのチャレンジパッチ部位においても皮膚反応は認められなかったことから、この試験物質は皮膚感作性を示さないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

シャネルの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • 安定性試験における過酷試験において分解生成物が検出されなかったこと、トラネキサム酸セチル塩酸塩に紫外部の吸収がないことから、光化学反応による活性はないと判断され、試験は省略された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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トラネキサム酸セチル塩酸塩は美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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文献一覧:

  1. 医薬品医療機器総合機構(2008)「クリームTX」審査報告書.
  2. 二條 貞子(1979)「トラネキサム酸による肝斑の治療」基礎と臨床(13)(9),3129-3131.
  3. 真船 英一(2008)「トラネキサム酸と肝斑」ファルマシア(44)(5),437-442.
  4. 宮本 雅義, 他(2006)「両親媒性トラネキサム酸誘導体を用いた両連続αゲルの形成とその化粧品への応用」
    オレオサイエンス(16)(7),337-344.

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