トラネキサム酸とは…成分効果と毒性を解説

美白成分 抗炎症成分
トラネキサム酸
[医薬部外品表示名称]
・トラネキサム酸

[慣用名]
・m-トラネキサム酸、t-AMCHA

2002年に資生堂の申請により医薬部外品の美白有効成分として承認されているt-シクロアミノ酸誘導体です。

2002年当初は資生堂によってt-AMCHA(ティーアムチャ)とも呼ばれていましたが、現在はm-トラネキサム酸と呼ばれており、「m」はメラニンを意味します(∗1)

∗1 m-トラネキサム酸は資生堂独自の呼称であり、m-トラネキサム酸とトラネキサム酸はまったく同じ成分です。

炎症性プロテアーゼ(プラスミン)抑制作用があり、医薬部外品の承認以前から出血防止目的で医薬品として使用されていますが、美白効果としては、プロスタグランジン(シミ活性化因子)の伝達抑制、チロシナーゼ活性抑制が報告されています(文献1:2003,文献2:1988)

また、プラスミン抑制作用は炎症の誘発も抑制するため、肌荒れの予防および改善効果も認められています。

ひとつずつ作用機序を解説していきますが、最初にプロスタグランジンで伝達抑制作用についてですが、通常は紫外線および物理的な刺激が起こることで、表皮にプラスミン活性の過程で発生するプロスタグランジンというシミをつくるように指令をだす情報伝達物質が生成され、メラノサイトに指令を届けようとします。

トラネキサム酸は、以下の図のように、プロスタグランジンがメラノサイトに到達する前に抑制し、紫外線の情報をメラノサイトに届けないことで、そもそもの過剰なメラニン生成を抑制します。

トラネキサム酸がシミを防止する仕組み

チロシナーゼ活性阻害作用は美白成分の代表的な作用のひとつで、以下の図のように、

メラニンが合成される仕組み

紫外線を浴びた皮膚は基底層のメラノサイトに存在するチロシンというアミノ酸にチロシナーゼという活性酵素が結合することでドーパに変化し、ドーパでもチロシナーゼがくっつくことでドーパキノンに変化し、ドーパキノンの一部がユウメラニン(黒色メラニン)に変わっていきますが、チロシナーゼの活性を阻害することで、チロシンがドーパおよびドーパキノンに変化できず、結果的にユウメラニン(黒化メラニン)の生成を抑制します。

資生堂ライフサイエンス研究センターのトラネキサム酸配合美容液の有効性試験によると、

顔面にシミがある成人女性30人(33~58歳、平均44.1歳)にトラネキサム酸配合美容液を朝晩2回、3ヶ月間連用してもらい、開始前に対象として合計103個のシミを選択して、熟練した判定者がシミの濃さと大きさを肉眼と写真を用いて10段階(0:なし~9:濃い・大きい)に判定および平均判定値を算出し、3ヶ月後に同様の評価を行った。

個人について開始時の平均判定値から3ヶ月後の平均判定値を弾いた改善スコアを求め、「悪化」「不変」「やや改善」「改善」「著しく改善」の5段階で評価したところ、シミに濃さについては著しく改善(0)、改善(11)、やや改善(81)、不変(11)、悪化(0)であり、やや改善以上の有効率は89.3%であった。

また、シミの大きさについては、著しく改善(0)、改善(5)、やや改善(46)、不変(52)、悪化(0)であり、やや改善以上の有効率は49.5%であった。

試験期間中、副作用はなかった。

これらの結果からトラネキサム酸配合美容液はシミに有効であることがわかった。

このように報告されており、トラネキサム酸のシミへの改善効果が明らかにされています(文献4:2006)

補足ですが、トラネキサム酸は1979年以降、内服により肝斑に有効であると報告されており(文献5:1979,文献6:1985)、1988年の市立堺病院皮膚科 による肝斑に対するトラネキサム酸内服による有効性試験によると、

女性肝斑患者11人にトラネキサム酸250mg含有カプセルを1日に3~6カプセル毎食後に3分服してもらい、治療開始時および治療開始後4週間ごとに顔面の写真撮影を行ない、色調の変動を記録し、写真において明らかに色調が淡くなっている場合のみ有効と判定した。

試験の結果、すべての患者に有効であった。

効果の発現は内服開始後4週目ぐらいからで、写真判定で差が生じるのは8週目ぐらいからであった。

内服を中止すると4~8週後には色調の増強が認められた。

副作用はまったくなかった。

このように報告されており、トラネキサム酸が肝斑の着色を軽減したことは明らかですが、その作用機序は不明とされており、現在では抗プラスミン作用によるものと考えられています(文献7:1988)

スポンサーリンク

トラネキサム酸の安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

トラネキサム酸の現時点での安全性は、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性はデータ不足のため詳細不明ですが、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

開発元である資生堂の技術情報(文献3:2002)によると、

  • [ヒト試験] 成人女性60人(33~53歳)にトラネキサム酸を配合した乳液を朝夜1日2回、3ヶ月間使用してもらったところ、副作用はまったく認められなかった

開発元である資生堂ライフサイエンス研究所のトラネキサム酸配合美容液の有効性試験(文献4:2006)によると、

  • [ヒト試験] 顔面にシミがある成人女性30人(33~58歳、平均44.1歳)にトラネキサム酸配合美容液を朝晩2回、3ヶ月間連用してもらったところ、副作用はまったくなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚に副作用がまったく認められないため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験データがみあたらないため、データ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

開発元である資生堂の技術情報(文献3:2002)によると、

  • [ヒト試験] 成人女性60人(33~53歳)にトラネキサム酸を配合した乳液を朝夜1日2回、3ヶ月間使用してもらったところ、副作用はまったく認められなかった

開発元である資生堂ライフサイエンス研究所のトラネキサム酸配合美容液の有効性試験(文献4:2006)によると、

  • [ヒト試験] 顔面にシミがある成人女性30人(33~58歳、平均44.1歳)にトラネキサム酸配合美容液を朝晩2回、3ヶ月間連用してもらったところ、副作用はまったくなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、3ヶ月の連続使用において共通して皮膚に副作用がまったく認められないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
トラネキサム酸 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、トラネキサム酸は掲載なしとなっていますが、試験データをみるかぎりにおいて、安全性に問題はないと考えられます。

∗∗∗

トラネキサム酸は美白成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗炎症成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 前田憲寿(2003)「B紫外線による色素沈着生成メカニズムと色素沈着に対するt-AMCHA外用の効果」Fragrance Journal 臨時増刊号(18),42-49.
  2. 東 萬彦(1988)「肝斑に対するトラネキサム酸療法」皮膚(30)(5),676-680.
  3. 前田憲寿(2002)「美白と肌あれ防止の2つの効果を持つ新規有効成分t-AMCHAの開発」,<http://www.shiseidogroup.jp/rd/doctor/informationletter/backnumber/pdf/2002_001_02.pdf> 2018年5月12日アクセス.
  4. 前田憲寿(2006)「m-トラネキサム酸の美白効果」皮膚の抗老化最前線,247-256.
  5. 二條 貞子(1979)「トラネキサム酸による肝斑の治療」基礎と臨床(13),3129-3130.
  6. 御子柴 甫, 武井 峯男, 高瀬 吉雄, 他(1985)「肝斑に対するトラネキサム酸内服療法」西日本皮膚科(47),1101-1104.
  7. 東 萬彦(1988)「肝斑に対するトラネキサム酸療法」皮膚(30)(5),676-680.

スポンサーリンク

TOPへ