テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)とは…成分効果と毒性を解説

美白成分 抗酸化成分
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VCIP)
[化粧品成分表示名称]
・テトラヘキシルデカン酸アスコルビル

[医薬部外品表示名称]
・テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル

[慣用名]
・VC-IP、油溶性ビタミンC誘導体、脂溶性ビタミンC誘導体

イソパルミチン酸(2-ヘキシルデカン酸)とアスコルビン酸とのテトラエステルで、2006年に日光ケミカルズによって医薬部外品原料として登録されている液体状の油溶性ビタミンC誘導体です。

液体状なので使用しやすく、ほかの油溶成分にもよく溶け、皮膚とのなじみがよく、吸収性も優れているため、ジェルやクリームタイプの化粧品とも相性がいいです。

化粧品におけるビタミンCといえば、シミ予防やシミ改善や肌のくすみを抑制し肌を明るくするような美白効果が代表的でしたが、老化防止やエイジングケアが盛んな近年はビタミンCの抗酸化作用やコラーゲン生成促進作用を高めるようなビタミンC誘導体が注目を集めています。

ただ、水溶性ビタミンCは高濃度で使用すると刺激や乾燥を感じる方が多く、安定性も評価されていますがそれはビタミンCそのものよりは安定しているということであって、リン酸アスコルビルMgなどは実際に化粧水の中で分解されることも危惧されていたり、即効性を示しますが持続して働くことができないデメリットもあります。

そういった背景から、

  • より刺激が少ない
  • より持続性がある
  • 肌バリアとの馴染みがよく浸透性の高いタイプ

これらの要素が検討された結果生まれたのが、皮脂脂肪酸に多く含まれるイソパルミチン酸とアスコルビン酸を結合させた油溶性テトラヘキシルデカン酸アスコルビルです。

皮脂脂肪酸に含まれるイソパルミチン酸をまとっているので肌バリアに馴染み浸透しやすくなり、体内のエステラーゼという酵素によって再びビタミンCと脂肪酸に分解されます。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは油溶性なので、通常のビタミンCに比べて約30倍の吸収力を示し、皮膚の中での作用持続効果は43時間以上と言われています。

また、水溶性ビタミンCが皮膚に刺激を与えてしまう理由は、皮膚に塗布することで一度に多量にイオン化することが原因なのですが、油溶性であるということはイオン化していないということであり、非常に刺激性が低く、肌深くに浸透してジワジワ効果を発揮します。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの化粧品としてのはたらきは、

  • シミ予防(メラニン産生抑制作用)
  • シミ改善(メラニン還元作用)
  • コラーゲン生成促進作用
  • 乾燥肌の炎症性皮疹(赤ニキビや炎症ニキビ)の改善効果
  • UVによる活性酸素の抑制
  • 紫外線による色素沈着の抑制
  • 紫外線によるDNA損傷の軽減
  • 酸化ストレスによる細胞傷害の緩和

などがあります。

炎症性皮疹(赤ニキビや炎症ニキビ)の改善効果はビタミンC誘導体の中では、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルとリン酸アスコルビン酸Naに関して改善報告がありますが、乾燥肌向けとなると油溶性のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのみとなります。

2005年に発表された「テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの尋常性ざ瘡に対する有用性の検討」によると、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルと基剤を外用した左右比較試験において有意に炎症後の紅斑および紅色丘疹の数の軽減が認められていると記載されており、日本皮膚科学会が公開している「尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017」においても、炎症性皮疹(赤ニキビ)や炎症後の紅斑にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの使用が推奨されています(文献3:2017)

実際の配合製品数や配合量は、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの現時点での安全性は、皮膚刺激性はなく、軽度の眼刺激性が起こる可能性がありますが、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Ethers and Esters of Ascorbic Acid as Used in Cosmetics」(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 102人の被検者の背中に10%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むシリコーン0.2mLを誘導期間において24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24時間後に反応を評価し、その手順を週3回合計9回繰り返した。10~14日の無処置期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチを適用し、24および48時間後に反応を評価したところ、試験過程で有害な反応は観察されず、試験物質は非刺激性および非感作性として分類された
  • [動物試験] 3匹のウサギの側面の皮膚10×15cm領域にテトラヘキシルデカン酸アスコルビル0.5mLを半閉塞パッチ下で4時間適用し、適用後72時間まで観察したところ、あらゆる皮膚刺激の兆候(反応の種類は不明)も2日以内に消失し、それ以外の皮膚反応は観察されなかった。一次刺激指数は0.3で無視できるレベルの刺激性であり、非刺激性に分類された
  • [動物試験] 10匹のモルモットの肩甲骨領域に誘導期間においてテトラヘキシルデカン酸アスコルビル0.1mLを皮内注射し、反応を24および48時間後に評価した。さらに、弾性包帯で固定された試験物質0.5mLを含む不織布パッチを側面に24時間適用し、適用24および48時間後に反応を評価したところ、誘導期間の間に皮膚刺激の兆候はなかった。皮膚感作性は10匹のうち8匹で観察されたが、陰性対象の5匹においてはいずれも観察されなかった。皮膚感作率は80%であり、試験物質は強い感作性を有すると考えられた

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 43人の被検者にテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(濃度不明)を閉塞パッチ適用したところ、刺激なし
  • [ヒト試験] 100人の被検者を用いて10%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むシリコーン溶液を評価したところ、皮膚一次刺激性および感作性なし

と記載されています。

試験結果および安全データによると、共通して皮膚刺激性はなしと報告されており、皮膚感作性はモルモット試験で80%の感作率の報告もありますが、ヒト試験では共通して感作性なしとなっており、また、日本皮膚科学会の「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」でも推奨されている物質であることや1,500以上の製品に使用されていながら重大なアレルギーの報告がないことから、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に100%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを点眼し、非洗眼で眼を評価したところ、軽度の眼刺激性だと結論づけられた

と記載されています。

試験結果はひとつですが、軽度の眼刺激性と報告されているため、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは毒性なし(∗2)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは美白成分と抗シワ(抗老化)成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗シワ(抗老化)成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2017)「Safety Assessment of Ethers and Esters of Ascorbic Acid as Used in Cosmetics」, <https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR734.pdf> 2018年1月24日アクセス.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「安全性データシート NIKKOL VC-IP」, <https://www.chemical-navi.com/product_search/detail4.html> 2018年1月24日アクセス.
  3. 日本皮膚科学会(2017)「尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/127/6/127_1261/_pdf> 2018年1月24日アクセス.

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