テトラヘキシルデカン酸アスコルビルとは…成分効果と毒性を解説

美白 抗炎症成分 抗酸化成分 抗老化成分 毛髪修復
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
[化粧品成分表示名称]
・テトラヘキシルデカン酸アスコルビル

[医薬部外品表示名称]
・テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル

[慣用名]
・VC-IP

1996年に開発されたアスコルビン酸(ビタミンC)とイソパルミチン酸のテトラエステル化合物であり、油溶性ビタミンC誘導体です。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、活性本体であるアスコルビン酸の4つの水酸基すべてがイソパルミチン酸とエステル結合によりマスクされているため、化粧品中でも優れた安定性を示し、また、油溶性ビタミンC誘導体であることから、水溶性ビタミンC誘導体に比べて皮膚親和性および皮膚吸収性が高いという特徴があります(文献6:2015)

ビタミンC誘導体の基本的な作用・効果は、皮膚内での分解・代謝によるアスコルビン酸の作用ですが、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの場合、化学的にすべての水酸基を置換しているため、化合物としての作用がアスコルビン酸そのものの作用なのかテトラヘキシルデカン酸アスコルビルとしての作用なのかは、現時点では不明です(文献8:2004)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、美白化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、ヘアケア製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:2017)

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン還元による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン還元による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

このような背景からチロシナーゼ活性を抑制・阻害することは色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

また、この一連のプロセスによって黒化メラニンが生合成されますが、アスコルビン酸(ビタミンC)には、以下のように、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

黒化メラニンになる前に還元して黒化メラニンを防止する作用と、黒化メラニンそのものを還元して色素を薄くする作用があります。

2000年に日本サーファクタント工業によって公開されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのメラニン産生抑制への影響検証によると、

ヒトメラニンに水酸基化レシチンを用いて、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを添加し、4日間培養した後に細胞中のメラニンを抽出し、500nmの吸光度でメラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルのメラニン産生抑制効果

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、濃度依存的にヒトメラノーマのメラニン産生を抑制することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2000)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに濃度依存的なメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

また、同じく2000年に日本サーファクタント工業によって公開されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのチロシナーゼ活性阻害への影響検証によると、

B16メラノーマ細胞を各濃度のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを添加した培地で72時間培養した後、その抽出液にL-ドーパを添加し、37℃で60分間反応させた後に、チロシナーゼによってL-ドーパから生成したドーパクロムを540nmの吸光度で測定し、チロシナーゼ活性を算出したところ、以下のグラフのように、

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルのチロシナーゼ活性阻害効果

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、0.02%以上の濃度で濃度依存的に細胞内チロシナーゼ活性を阻害したことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2000)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに0.02%以上で濃度依存的なチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用

紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用に関しては、2000年に日本サーファクタント工業によって公開された紫外線照射におけるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの細胞への影響検証によると、

マウス表皮細胞にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルおよびアスコルビン酸をそれぞれ10μM適用し、UVBを照射した。

24時間培養した後の細胞生存率を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射におけるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの細胞障害軽減効果

テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、アスコルビン酸ともに紫外線から細胞を防御する効果を示した。

また、その効果はテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのほうが高いこともわかった。

この結果は、アスコルビン酸よりもテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのほうがより多く細胞内に取り込まれたためであると考えられた。

このように記載されており(文献3:2000)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用が認められています。

炎症性皮疹および炎症後の紅斑に対する抗炎症作用

炎症性皮疹および炎症後の紅斑に対する抗炎症作用に関しては、2017年に日本皮膚科学会によって公開された尋常性痤瘡治療ガイドラインによると、

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに関する報告としては、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルと基剤を外用した左右比較試験で有意に炎症後の紅斑および紅色丘疹の数の軽減を認めている。

ただし、炎症後の紅斑に対する効果に関しては追試の報告はなく、今後の追試が望まれる。

以上より、保険適用外であることを加味して、炎症性皮疹、炎症後の紅斑にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの外用を選択肢のひとつとして推奨する。

このように記載されており(文献5:2017)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに炎症性皮疹および炎症後の紅斑に対する抗炎症作用が認められています。

コラーゲン合成促進による抗老化作用

コラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割を解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

コラーゲンは、真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献4:2002)

ただし、加齢や過剰な紫外線によってコラーゲンの産生量が低減することで、その働きが衰えてくることが知られており、コラーゲン産生を促進することはハリのある若々しい肌を維持するために重要であると考えられています。

2000年に日本サーファクタント工業によって公開されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのコラーゲン合成への影響検証によると、

ヒト皮膚真皮由来の線維芽細胞NHDFにプロリンを添加して24時間培養し、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルのコラーゲン合成およびアスコルビン酸をそれぞれ20-50μM投与することによるコラーゲン分画への取り込みを測定したところ、以下のグラフのように、

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルのコラーゲン合成促進効果

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの投与は、コラーゲン合成を1.7-1.95倍に促進した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2000)、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルにコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。

キューティクルの損傷改善による毛髪修復作用

キューティクルの損傷改善による毛髪修復作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造および健常毛と損傷毛のキューティクルの違いについて解説します。

まず毛髪の構造を以下の画像のように断面図でみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の断面図

毛髪の表面(一番外側)は、キューティクルと呼ばれ、毛髪を保護する働きをしており、また以下の画像をみてもらうとわかるように、

キューティクルにおける健常時とダメージ時の違い

健常時には閉塞していて手触りもなめらかですが、損傷・ダメージを受けるとキューティクルが開きまたリフトアップし、手触りはギシギシ・パサパサといったものになり、外観の美しさは損なわれます。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの化学構造は酸無水物に類似する構造を有しており、ダメージ毛髪中のアミノ基と結合することで、キューティクル剥離の改善および毛髪撥水性の向上などが確認されています(文献7:2018)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安全性(刺激性・アレルギー)について

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 102人の被検者の背中に10%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むシリコーン0.2mLを誘導期間において24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24時間後に反応を評価し、その手順を週3回合計9回繰り返した。10~14日の無処置期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチを適用し、24および48時間後に反応を評価したところ、試験過程で有害な反応は観察されず、試験物質は非刺激性および非感作性として分類された
  • [動物試験] 3匹のウサギの側面の皮膚10×15cm領域にテトラヘキシルデカン酸アスコルビル0.5mLを半閉塞パッチ下で4時間適用し、適用後72時間まで観察したところ、あらゆる皮膚刺激の兆候(反応の種類は不明)も2日以内に消失し、それ以外の皮膚反応は観察されなかった。一次刺激指数は0.3で無視できるレベルの刺激性であり、非刺激性に分類された
  • [動物試験] 10匹のモルモットの肩甲骨領域に誘導期間においてテトラヘキシルデカン酸アスコルビル0.1mLを皮内注射し、反応を24および48時間後に評価した。さらに、弾性包帯で固定された試験物質0.5mLを含む不織布パッチを側面に24時間適用し、適用24および48時間後に反応を評価したところ、誘導期間の間に皮膚刺激の兆候はなかった。皮膚感作性は10匹のうち8匹で観察されたが、陰性対象の5匹においてはいずれも観察されなかった。皮膚感作率は80%であり、試験物質は強い感作性を有すると考えられた

開発元の日光ケミカルズの安全性データシート(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 43人の被検者にテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(濃度不明)を閉塞パッチ適用したところ、刺激なし
  • [ヒト試験] 100人の被検者を用いて10%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むシリコーン溶液を評価したところ、皮膚一次刺激性および感作性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

開発元の日光ケミカルズの安全データシート(文献2:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に100%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを点眼し、非洗眼で眼を評価したところ、軽度の眼刺激性だと結論づけられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激性が報告されているため、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

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テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは美白成分、抗酸化成分、抗炎症成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗酸化成分 抗炎症成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Ethers and Esters of Ascorbic Acid as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「NIKKOL VC-IP」安全データシート.
  3. 栗原 浩司(2000)「ビタミンC誘導体の機能とその応用」Fragrance Journal(28)(9),77-80.
  4. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  5. 日本皮膚科学会(2017)「尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017」日本皮膚科学会雑誌(127)(6),1261-1302.
  6. 横田 真理子, 他(2015)「新規高浸透性アスコルビン酸誘導体テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)のトータルアンチエイジング素材としての展開」Fragrance Journal(43)(9),57-63.
  7. 三園武士, 他(2018)「油溶性ビタミンC(テトラヘキシルデカン酸アスコルビル)を用いた損傷毛髪の改善」日本化粧品技術者会誌(52)(3),205-209.
  8. 山本 格, 他(2004)「アスコルビン酸(ビタミンC)誘導体の開発動向」ビタミン(78)(1),36-42.

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