シャクヤク根エキスとは…成分効果と毒性を解説

美白成分 抗炎症成分 細胞賦活 抗菌成分 保湿成分 バリア改善成分 抗シワ成分 抗くぼみ 育毛 抗白髪成分
シャクヤク根エキス
[化粧品成分表示名称]
・シャクヤク根エキス

[医薬部外品表示名称]
・シャクヤクエキス

ボタン科植物シャクヤク(学名:Paeonia lactiflora)の根からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

シャクヤク根エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • モノテルペン配糖体:ペオニフロリン、アルビフロリン
  • タンニン類:ガロタニン
  • フェノール類:ベオノール
  • 安息香酸

などで構成されています(文献1:2006)

シャクヤクは、花や根の色などの違い以外に、根の皮付きで蒸したものを「赤芍」、根の皮を除いたものを「白芍」として区別し、日本では赤芍は日本薬局方に適合しないことが多いため、白芍のみを芍薬として用いています(文献2:2011;文献3:2018)

中国でシャクヤクが薬草として利用されはじめたのは紀元前300年代ごろといわれており、中国最古の本草書「神農本草経」には、「腹痛、知覚異常、疼痛、発作性の痛みをとり、利尿、鎮静に薬効がある」と記されています。

中国医学において赤芍と白芍の効能は異なり、赤芍はおもに活血・清熱薬として用いられ、白芍はおもに補血・止痛役として用いられます(文献2:2011)

日本には平安時代までに中国から薬草として渡来し、同じごろに花を鑑賞する習慣が生まれ、江戸時代には様々な品種がつくられるようになり、昔から美人のたとえとされる「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」はどれも女性の不調に効果的とされる生薬になります(文献3:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの用目的で、スキンケア化粧品をはじめ、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、ヘアケア製品、洗顔料、洗浄製品、マスク&パック製品などに使用されます(文献1:2006;文献4:1993;文献5:2007;文献6:2013;文献9:1994;文献10:2013;文献12:1998;文献13:1994;文献15:2018;文献16:2006)

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

色素沈着抑制の作用機序に関しては、まず黒化メラニンができる仕組みを解説しておくと、

メラニンが合成される仕組み

紫外線を浴びた皮膚は、紫外線の情報をメラノサイトまで転送し、メラノサイトに紫外線情報が届くと、チロシナーゼという酵素が活性化してチロシンというアミノ酸と結合してドーパに変化し、それ以降もそれぞれの酵素と結合して変化していき、黒化メラニンに生合成されます。

シャクヤク根エキスに含まれるタンニン類のひとつであるガロタンニンにはチロシナーゼの活性を阻害する作用が様々な研究で認められており、シャクヤク根エキスの色素沈着抑制は、チロシナーゼの活性を阻害することでチロシンとの結合を抑制し、メラニン生合成を行わせないことで黒化メラニンを抑制するという作用になります。

XPC発現促進による細胞賦活作用

XPC発現促進による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識としてDNA損傷による皮膚への影響とXPCについて解説します。

皮膚および毛髪におけるDNA損傷は、細胞内に起因するもの(活性酸素)と外界に由来するもの(紫外線、化学物質)が主な原因と考えられており、これらに曝露された皮膚や毛髪は、DNA分子が紫外線などのエネルギーを直接吸収することにより、またはDNA以外の光増感分子がエネルギーを吸収した後、そのエネルギーがDNAへ2次的に傷害を引き起こすことにより引き起こされます。

細胞のDNAに損傷が生じると、アポトーシス(∗1)の誘導や細胞周期の停止が起こり、細胞の正常な分化や増殖が行われなくなります。

∗1 あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

またDNAの損傷が生じたがアポトーシスを誘導するには十分でない場合は損傷を受けた細胞が未修復のDNAを複製し、エラーを生じた遺伝情報が細胞のDNAに残されるため、細胞老化が促進され、細胞の種々の機能が低下することも知られています。

つまり、DNA損傷が修復されない場合は、皮膚においては色素沈着、炎症、光老化、ターンオーバーの乱れ、皮膚バリア機能の低下など種々の皮膚障害の原因となり、毛髪においては脱毛、薄毛、フケの発生、白髪など毛髪障害の原因となります。

このような背景からDNA損傷を抑制することは、正常な皮膚および毛髪の維持にとって重要であると考えられています。

生体にはDNA損傷に対してゲノムDNA上の損傷発生を感知し、損傷の修復を行うNER(nucleotide excision repair:ヌクレオチド除去修復機構)が存在しており、NERが効率よくDNA損傷を認識するために必要不可欠なのがXP(色素性乾皮症)の原因遺伝子産物の複合体であるXPC(Xeroderma pigmentosum C)というタンパク質です(文献5:2007)

XPCは、紫外線によるDNA損傷だけでなく、様々なDNA損傷を認識して特異的に結合する性質をもつことが明らかにされており、その結果としてNERがDNA損傷修復を行います。

2006年にマンダムが公開した技術情報によると、

紫外線による皮膚障害は、表皮細胞の核の中に存在するDNAが紫外線によって致命的な損傷を受け、細胞で最も重要な器官である核が萎縮することで、ダメージ細胞(サンバーンセル)となって引き起こされます。

そこで、3次元ヒト培養皮膚モデルを用いて百数十種類の植物関連物質をスクリーニングした結果、シャクヤク根エキスにサンバーンセルの形成を強く抑制する作用があることを確認した。

この結果からシャクヤク根エキスがサンバーンセル形成抑制効果をもつことがわかった。

またNHEK新生児表皮角化細胞を培養した培地に0.1%シャクヤク根エキスを添加し、同時に無添加の培地も用意し、UVランプ(2mJ/c㎡)の紫外線量を細胞に照射し、XPC発現量の変化を解析したところ、以下の表のように、

紫外線 シャクヤク抽出物 XPC発現相対値
無照射 無添加 1.0000
照射 無添加 1.6973
照射 添加 2.2427

シャクヤク抽出物を添加した場合、DNA修復機構に必要不可欠なXPCの発現量が増加することが明らかになった。

これらの結果からシャクヤク抽出物は、皮膚細胞でのXPC発現量を増加させることにより、DNA修復機構を促進し、その結果としてサンバーンセル形成を抑制するものと推測される。

なお配合量は0.001%~50%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは0.01%~30%、最適なのは0.1%~10%の範囲内である。

このような研究結果が報告されており(文献5:2007)、シャクヤク根エキスにXPC発現促進による細胞賦活作用が認められています。

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、皮膚の恒常性を保つ一因となっており、皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占めています。

表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献14:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

また健全な皮膚では常在菌の大部分を占める表皮ブドウ球菌の数に変動が少なく、一定の菌数を保っていることが報告されています(文献13:1994)

これらの背景から常在菌を一定に保つことにより、皮膚の炎症の予防および改善が期待できると考えられます。

1994年にクラブコスメチックによって公開された技術情報によると、

健常な皮膚は弱酸性を保っており、弱酸性で抗菌性を有する生薬抽出物の連用が、皮膚常在菌数を効果的にコントロールすると考え、弱酸性領域で殺菌・抗菌性を有する植物抽出物を検討した。

弱酸性条件下(pH5.5)で、各種抽出物(アマチャワレモコウクジン、エンジュ、カリンエイジツ、シャクヤク、ボタンオウバクオウレン)0.05mLの種々の細菌に対する抗菌性をディスク法による薬剤感受性試験(∗2)によって阻止円の直径を計測したところ、以下の表のように、

∗2 ディスク法による薬剤感受性試験とは、抗菌薬または抗菌作用を有する植物抽出物の塗布したディスクを菌の中に1日置き、細菌に耐性があるかどうかを調べる方法で、耐性がなければディスクの周りに菌は繁殖せず、ディスクを中心とした円の直径を阻止円として計測します。

生薬名 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
アマチャ 15.2mm 12.0mm
ワレモコウ 12.0mm 12.3mm
クジン 17.0mm 19.5mm
エンジュ 14.0mm 13.7mm
カリン 14.0mm 10.0mm
エイジツ 10.5mm 13.0mm
シャクヤク 9.0mm 10.0mm
ボタン 10.0mm 10.2mm
オウバク 21.5mm 15.5mm
オウレン 24.5mm 18.3mm

シャクヤク抽出物は、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に抗菌性を有していることが示された。

また、0.2%シャクヤク抽出物の表皮ブドウ球菌に対する生育阻害率をpH5.5(弱酸性)およびpH7.2(中性)に調整して測定したところ、以下の表のように、

生薬名 pH5.5(弱酸性) pH7.2(中性)
シャクヤク 55.9% -15.6%

シャクヤク抽出物は、弱酸性下で有意な表皮ブドウ球菌阻害作用を有することを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献13:1994)、シャクヤク根エキスに弱酸性皮膚における皮膚常在菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)のバランス保持による抗菌作用が認められています。

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献17:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献18:1991;文献19:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難であるため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタン、シャクヤク、チンピムクロジチョウジユリダイズシロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

シャクヤク抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献16:2006)、シャクヤク根エキスにセラミド合成促進による保湿・バリア改善作用が認められています。

MMP-1活性阻害による抗シワ作用

MMP-1活性阻害による抗シワ作用に関しては、まず前提知識として紫外線によってシワが生じる仕組みとMMP-1(Ⅰ型コラゲナーゼ)について解説しておきます。

まずはシワが生じる仕組みですが、以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

真皮の潤い成分一覧

皮膚の真皮層は、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンが網の目状に細胞外マトリックスを形成しており、皮膚のハリ・弾力に深く関与しています。

実際に網の目の役割をしているのはコラーゲンで、コラーゲンの網目の交差点を安定・強化しているのがエラスチンですが、紫外線を浴びるとそれぞれの分解酵素が活性化し、コラーゲン量とエラスチン量がともに減少することが明らかになっており、コラーゲン量およびエラスチン量が減少していくと、皮膚のハリ・弾力が次第に失われ、徐々にシワ・たるみが生じます。

コラーゲンについてさらに詳細にみていくと、真皮層のコラーゲンは以下の肌図のように、

真皮におけるコラーゲンの種類

  • Ⅰ型コラーゲン:真皮内に網目状に張りめぐらされている強硬なコラーゲン。肌の弾力やハリを保持
  • Ⅲ型コラーゲン:真皮の乳頭層に多く含まれる細くて柔らかいコラーゲン。肌に柔らかさを付与
  • Ⅳ型コラーゲン:基底膜の膜状構造を維持するための骨格の役割をするコラーゲン

というようにそれぞれ役割が異なっており、大部分は網の目を形成するⅠ型コラーゲンになります。

そして、コラーゲン分解酵素であるMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の中で、MMP-1はⅠ型コラーゲン分解酵素であるⅠ型コラゲナーゼのことを指します。

シャクヤク根エキスには、MMP-1活性阻害作用が明らかになっており、1998年にノエビアによって報告された植物抽出物のⅠ型コラーゲン分解酵素に対する阻害作用検証によると、

33種類の植物抽出物について、それぞれ0.1mg/mL濃度でⅠ型コラゲナーゼ活性阻害作用を評価したところ、以下のように、

植物エキス 阻害率(%)
ユーカリ 94.9
セージ 70.0
シャクヤク 58.0
ドクダミ 31.9
ハッカ 19.2

ユーカリ、セージ、シャクヤク、ドクダミおよびハッカ抽出物の5種類に高いⅠ型コラゲナーゼ活性阻害作用が認められた。

このような検証結果が明らかになっており(文献12:1998)、シャクヤク根エキスには紫外線によるMMP-1(Ⅰ型コラゲナーゼ)活性阻害による抗シワ作用があると考えられます。

O₂⁻(スーパーオキシドアニオン)消去能による抗シワ作用

O₂⁻(スーパーオキシドアニオン)消去能による抗シワ作用に関しては、まずO₂⁻は紫外線によって発生する活性酸素のひとつであり、シャクヤクエキスには中程度のO₂⁻消去能が知られています(文献8:1990)

1994年に日本メナード化粧品が報告した活性酸素によるコラーゲン生成の変化に対する生薬エキスの影響検証によると、

正常ヒト線維芽細胞を用いて、活性酸素(キサンチン100μg/mL+キサンチンオキシダーゼ100μU/mL)を添加した場合と活性酸素にさらにO₂⁻の消去能が報告されている生薬エキス(チョウジエキスゲンノショウコエキス、シャクヤクエキス)をそれぞれ100μg/mL添加し、コラーゲン生成の減少におよぼす影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラーゲン生成の変化に対する生薬エキスの影響

それぞれの生薬エキスは、活性酸素によるコラーゲン生成の減少を有意に抑制した。

また、真皮における線維芽細胞は通常コラーゲン生成と同時にコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼを活性させてコラーゲン量を一定に保っており、活性酸素の発生によってコラゲナーゼ活性の割合が高まり、コラーゲンを過剰に分解することでコラーゲン減少が促進される一面がありますが、各生薬エキスをそれぞれ100μg/mL添加し、コラゲナーゼ活性への影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラゲナーゼ活性の変化に対する生薬エキスの影響

チョウジエキス、ゲンノショウコエキスは活性酸素によるコラゲナーゼ活性の上昇を有意に抑制したが、シャクヤクエキスはやや抑制傾向ではあったものの有意な差ではなかった。

これは過去のO₂⁻消去能作用についての検証結果としてチョウジおよびゲンノショウコはその作用が強く、シャクヤクは中程度であることが報告されており(文献8:1990)、今回のコラゲナーゼ活性の結果と一致した。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1994)、シャクヤクエキスにはコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの活性抑制作用はほとんど認められなかったものの、コラーゲン生成減少抑制作用は有意であると認められ、結果的に紫外線による抗シワ・抗老化の抑制効果が示唆されています。

ただし、試験はin vitroで行われており、また一般的に化粧品配合量は1%未満であり、実際には試験よりもかなり穏やかな抑制作用傾向であると考えられます。

近赤外線によるコラーゲン分解酵素抑制による抗シワ作用

2013年にポーラ化成によって公開されたシャクヤクエキスの近赤外線による真皮コラーゲン構造のダメージ抑制効果検証によると、

地上に到達する太陽光のうち紫外線は7%、赤外線は54%を占め、このうち近赤外線(760nm~1400nm)は太陽光の約30%を占めるといわれており、また近赤外線の約65%が真皮・皮下組織にまで達するといわれているため、紫外線が表皮や真皮上層に作用するのに対して、近赤外線は皮膚組織全体に影響を与えると考えられます。

また近赤外線はコラーゲン分解酵素の生成促進、活性酸素の発生誘導など光老化(シワ・たるみ)を促進することがわかっています。

これらの前提をもとに、真皮線維芽細胞に紫外線(UVA)、近赤外線をそれぞれ照射したのち、経時的に細胞から回収したコラーゲン分解酵素のmRNA量を測定し、また近赤外線照射後にシャクヤクエキスを添加し、72時間後のコラーゲン分解酵素のmRNA量を測定したところ、以下のグラフのように、

近赤外線照射によるコラーゲン分解酵素に対するシャクヤクエキスの効果

近赤外線によるコラーゲン分解酵素の増加を防ぐ効果を発見し、さらにシャクヤクエキスが近赤外線照射によるコラーゲン線維構造の悪化を抑える効果を有することも確認しました。

このような研究結果が報告されており(文献6:2013)、近赤外線によるコラーゲン分解酵素の増加を抑制することによる抗シワ・抗老化作用が明らかになっています。

ただし、シャクヤクエキスの濃度など詳細なデータは提供されておらず、化粧品に配合される場合は一般的に1%未満であると推測されるので、試験結果よりは穏やかな抗シワ作用であると考えられます。

MYH2産生促進による抗くぼみ作用

MYH2産生促進による抗くぼみ作用に関しては、まず前提知識として目のくぼみの構造とMYH2について解説します。

以下の表情筋の構造図および目のくぼみの構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

表情筋の解説

目のくぼみの構造図

目のまわりは表情筋のひとつである眼輪筋で構成されており、眼輪筋が目のまわりの皮膚を支持することで目のまわりのハリ感を維持しています。

ただし、加齢によって眼輪筋の90%を構成する主要たんぱく質(速筋)である

  • MYH1(myosin heavy chain 1:ミオシンヘビーチェーン1)
  • MYH2(myosin heavy chain 2:ミオシンヘビーチェーン2)
  • MYH4(myosin heavy chain 4:ミオシンヘビーチェーン4)

これら(とくにMYH2)が減少することで眼輪筋が減少して薄くなり、その結果皮膚が変性・変形してハリ感が失われ、落ちくぼんでくると報告されています(文献15:2018)

そういった背景から眼輪筋における速筋の産生を強化することは眼瞼皮膚表面において重要だと考えられます。

2018年にポーラ化成工業によって公開された技術情報によると、

眼瞼皮膚表面印象を改善するために研究を行った結果、表情筋である眼輪筋(目のまわりの筋肉)の衰えが、眼瞼皮膚表面の印象を変化させる原因であることを見出した。

さらに眼輪筋の約9割を占める速筋を増強すると、眼輪筋が強化されて、眼瞼皮膚の凹凸も緩和し、かつぶよぶよとした印象が減ずることを見出した。

そして、速筋増強成分が眼瞼皮膚表面印象改善の有効成分となり得ると考え、成分を探索したところ、マドンナリリー根エキスマロニエエキスの併用またはシャクヤク根エキスにその効果を見出した。

in vitro試験においてヒト培養骨格筋細胞を用いた培地に各植物抽出物(1μL/ウェル)を添加し、無添加のMYH2発現量を「1」としたとこの相対MYH2発現量を測定したところ、以下の表のように、

試料 MYH2
無添加 1
マルメロ+マドンナリリー 2.17
マルメロ 0.88
マドンナリリー 1.15
シャクヤク 2.06

シャクヤク抽出物は単体で単体で優れたmYH2発現量の増加がみられた。

配合量は0.0002~0.05mg/日が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献15:2018)、シャクヤク根エキスにMYH2産生促進による抗くぼみ作用が認められています。

毛髪幹細胞におけるDNA損傷抑制による育毛作用および白髪抑制作用

毛包幹細胞および色素幹細胞におけるDNA損傷抑制による育毛作用および白髪抑制作用に関しては、前提知識として以下の毛周期および毛髪幹細胞図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛周期(ヘアサイクル)

まず毛髪は、2~6年の「成長期」、数週間の「退行期」、数ヶ月の「休止期」というサイクルで自然な脱毛から新しい毛髪に生え替わるサイクルを繰り返しており、洗髪やブラッシングなどで抜ける髪は休止期のもので、1日の自然脱毛数は50~80本程度です(文献11:2002)

この毛髪の生え変わるサイクルのうち、「休止期」の毛包の根元にはバルジ領域と呼ばれる部位があり、このバルジ領域の中には以下の図のように毛包幹細胞と色素幹細胞が存在し、

毛髪幹細胞図

これらが成長期にかけて細胞分裂することで、毛母に細胞の元が供給されて毛髪が形成されることが明らかになっており、またこれら幹細胞の核にあるDNAが損傷を受けると幹細胞の機能が失われ、毛母への細胞供給が停止し、次のサイクルでは健全に毛髪が育たなかったり、白髪が生じたりすることが考えられます。

2013年にコーセーがバルジ領域に存在する幹細胞に着目し、DNAに対するダメージ抑制効果のある成分を探索したところ、以下のグラフのように、

植物エキス添加による毛髪幹細胞DNA損傷抑制効果

ビワ葉エキスとシャクヤク根エキスにDNAダメージ抑制効果を見出しています(文献10:2013)

ただし、試験の濃度や期間など詳細が不明であり、一般的に化粧品へ配合される場合は1%未満であるため、試験結果よりもかなり穏やかなDNA抑制作用傾向であると考えられます。

複合植物エキスとしてのシャクヤク根エキス

混合植物エキスOG-D1という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンを中和・分解する消臭作用
  2. タバコ臭を中和・分解する消臭作用

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって4大悪臭およびタバコ臭を多角的に消臭するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合は混合植物エキスOG-D1であると推測することができます(文献7:2015)

混合植物エキスOG-1という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 角層水分量増加作用
  2. 経表皮水分蒸発量抑制作用
  3. バリア機能向上
  4. 乾燥によるかゆみの減少

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によってキメが整い水分保持能を有する健常な皮膚へ改善するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合は混合植物エキスOG-1であると推測することができます(文献7:2015)

混合植物エキスOG-2という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 血行促進作用

とされており、それぞれを個別抽出したエキスよりも同時抽出したエキスの相乗効果で高い血行促進作用を示すもので、入浴剤をはじめ化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合は混合植物エキスOG-2であると推測することができます(文献7:2015)

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シャクヤク根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

シャクヤク根エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

シャクヤク根エキスは美白成分、抗炎症成分、細胞賦活成分、抗菌成分、保湿成分、バリア改善成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗炎症成分 細胞賦活成分 抗菌成分 保湿成分 バリア改善成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,372,536.
  2. 鈴木 洋(2011)「芍薬(しゃくやく)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,207-208.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「シャクヤク」ハーブのすべてがわかる事典,102.
  4. 紅 陽子, 他(1993)「活性酸素によるヒアルロン酸の断片化に対する植物抽出液の抑制作用」
    日本化粧品技術者会誌(27)(2),130-135.
  5. 株式会社マンダム(2007)「サンバーンセル形成抑制剤及びDNA損傷修復促進剤」特開2007-246410.
  6. “ポーラ化成工業株式会社”(2013)「『シャクヤクエキス』に“近赤外線”による真皮コラーゲン構造のダメージ抑制効果を発見」, <http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20131120_1.pdf> 2018年7月15日アクセス.
  7. “小川香料株式会社”(2015)化粧品用エキス剤混合植物エキスOGシリーズ
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  15. ポーラ化成株式会社(2018)「眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法」特開2018-184349.
  16. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
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