クズ根エキスとは…成分効果と毒性を解説





・クズ根エキス
[医薬部外品表示名称]
・カッコンエキス
マメ科植物クズ(学名:Pueraria lobata = Pueraria thunbergiana 英名:kudzu)の周皮を除いた根から水、BG、エタノールで抽出して得られる抽出物(植物エキス)です。
クズ(葛)は、日本各地、中国、東アジアに広く分布しており、根に多く含まれるクズデンプン(葛粉)は食用として葛湯、葛餅、葛切り、葛粉などの原料として用いられています(文献1:2017;文献2:2011)。
日本においては、奈良時代に歌人である山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集の中で、
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花 (万葉集・巻八 1537)
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花 (万葉集・巻八 1538)
このような歌を詠んでおり、これらに選定された「秋の七草(∗1)」のひとつとしても広く知られています。
∗1 「春の七草」は無病息災を祈るために七草がゆにして食を楽しむものですが、「秋の七草」はその美しさを眺めて楽しむものだと言われています。また、歌の中の草花はそれぞれ萩の花(萩)、 尾花(ススキ)、 葛花(葛)、 瞿麦の花(撫子:なでしこ)、 姫部志(女郎花:おみなえし)、藤袴(藤袴:ふじばかま)、 朝貌の花(桔梗:ききょう)を意味しているというのが定説です。
クズ根エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、
分類 | 成分名称 | |
---|---|---|
糖質 | 多糖 | デンプン |
フラボノイド | イソフラボノイド | プエラリン、ダイゼイン、ダイジン、ゲニステイン |
テルペノイド | トリテルペンサポニン | サポゲニン |
これらの成分で構成されていることが報告されており(文献1:2017;文献2:2011;文献3:2011;文献4:1989)、クズデンプンと緩和なエストロゲン様効果が認められているイソフラボノイド(イソフラボン)の含有が特徴とされています。
エストロゲンとは、女性ホルモンの一種であり、子宮や乳腺などに作用し、皮膚においては真皮の線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸の合成を活性化することが認められています(文献5:1977;文献6:1981)。
更年期にはいると、エストロゲンをはじめとする女性ホルモンの分泌量が低下し、骨密度が低下したり、皮膚においてはヒアルロン酸やコラーゲンの合成量が低下し、肌の弾力は失われ、潤いや張りがなくなっていきますが、日本人女性の更年期障害が欧米人と比較すると軽微であるのは、大豆食品によるイソフラボン摂取が更年期の急激なホルモンバランスの崩れを緩和しているためであると考えられています(文献7:1998)。
クズ根エキスの化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において解熱を目的に葛根湯などに広く用いられています(文献2:2011;文献3:2011)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、メイクアップ化粧品、クレンジング製品、日焼け止め製品など様々な製品に使用されています。
チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用
チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムについて解説します。
以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、
皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献8:2002;文献9:2016;文献10:2019)。
また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献8:2002;文献10:2019)。
ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献8:2002;文献10:2019)。
そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献8:2002)。
正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献8:2002)。
このような背景から、紫外線の曝露からメラニン排出までのプロセスにおけるいずれかのポイントでメラニンにアプローチすることが、色素沈着の抑制において重要であると考えられています。
1985年に一丸ファルコスによって報告されたイソフラボン化合物のメラニン生合成への影響検証によると、
試料 | 濃度(%) | 阻害率(%) |
---|---|---|
精製水(ブランク) | – | 0 |
ダイゼイン | 0.001 | 26.1 |
0.005 | 61.1 | |
0.010 | 63.3 | |
ダイジン | 0.01 | 24.2 |
0.05 | 73.5 | |
0.10 | 81.7 | |
ゲニステイン | 0.001 | 9.3 |
0.005 | 31.5 | |
0.01 | 43.8 | |
アスコルビン酸 | 0.005 | 11.6 |
0.05 | 73.5 | |
0.10 | 92.0 |
すでにチロシナーゼ活性阻害効果が広く知られているアスコルビン酸とほぼ同濃度でイソフラボン化合物を用いた場合、ほぼ同等の活性阻害効果を示すことがわかった。
次に、4人の男性被検者の背部に蛍光ランプ(UVBおよびUVA)を照射し、人工的に黒化形成ステップである紅斑をつくり、その後に左側に0.05%ダイゼインおよび0.05%ゲニステインを含む親水軟膏を1日2回(朝晩)40日にわたって塗布し、右側には無添加軟膏を用いることで、メラノサイトによって生成されるメラニン色素の表皮層への移行にともなう皮膚の色調変化を無照射部位の皮膚の色と、肉眼的観察によって対比し評価した。
その結果、いずれの被検者もイソフラボン化合物を含む軟膏塗布部位は、未添加軟膏塗布部位と比較して黒化の抑制傾向がみられた。
このような試験結果が明らかにされており(文献11:1985)、イソフラボノイド(ダイゼイン、ダイジン、ゲニステイン)を含有しているクズ根エキスにチロシナーゼ活性阻害によるメラニン生成抑制作用が認められています。
また、1989年に一丸ファルコスによって報告されたクズ根エキスのメラニン生合成への影響検証によると、
その結果、pHによる影響はほとんどみられず、平均的なチロシナーゼ阻害率は51.5%であった。
このような試験結果が明らかにされており(文献4:1989)、クズ根エキスにチロシナーゼ活性阻害によるメラニン生成抑制作用が認められています。
ただし、クズ根エキスのチロシナーゼ活性阻害効果は、クズ根に含まれるイソフラボノイド(イソフラボン)の効果であることが報告されていることから(文献11:1985)、イソフラボノイドの含有量に依存すると考えられます。
皮表柔軟化による保湿作用
皮表柔軟化による保湿作用に関しては、クズ根エキスは多糖類であるクズデンプンを約10%含んでいることから、吸湿性による皮表の柔軟化効果を有しています(文献4:1989)。
セラミド合成促進によるバリア改善作用
セラミド合成促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識として角質層における細胞間脂質の構造、セラミドの役割およびセラミド産生のメカニズムについて解説します。
以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、
角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、
細胞間脂質構成成分 | 割合(%) |
---|---|
セラミド | 50 |
遊離脂肪酸 | 20 |
コレステロール | 15 |
コレステロールエステル | 10 |
糖脂質 | 5 |
このような脂質組成で構成されており(文献12:1995)、その約50%をセラミドが占めています。
これら細胞間脂質は以下の図のように、
疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。
∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献13:1991)。
次に、表皮におけるセラミド生成(合成)プロセスに関しては、以下の表皮におけるセラミド産生プロセス図をみてもらえるとわかりやすいと思いますが、
表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後はケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗3)として剥がれ落ちます(文献14:2002)。
∗3 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。
この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバー(turnover)と呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献15:2002)。
セラミドの前駆体かつスフィンゴ糖脂質の一種であるグルコシルセラミドも表皮で産生され、角質層において分解酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼを介してセラミドに分化されることが知られており(文献16:2008)、またスフィンゴミエリンからもセラミドが合成されることが明らかにされています(文献17:1998)。
一方で、皮膚が乾燥寒冷下に長時間曝露されるような外的要因やアトピー性皮膚炎のような内的要因により乾皮症(ドライスキン)が生じた場合は、角質層の機能低下により、角質層の水分保持能の低下およびバリア機能低下による経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)の上昇が起こり(文献18:2004)、その結果として角質細胞や細胞間脂質が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下していくことが知られています(文献19:2002)。
このような背景から、低下したセラミド量を回復させることによってバリア機能を改善することは、ドライスキンの改善や皮膚の健常性を維持するために重要であると考えられます。
2006年に日本メナード化粧品によって報告されたクズ根エキスのセラミド合成およびヒト皮膚に対する影響検証によると、
クズ根エキスは、セラミド合成を促進することが確認された。
次に、肌荒れ、乾燥肌に悩む30人の女性被検者(18-50歳)に1%クズ根エキス配合クリームと、対照としてクズ根エキス未配合の同じクリームを2ヶ月間使用してもらい、2ヶ月後に肌荒れ、乾燥肌の改善効果を評価してもらったところ、以下の表のように、
試料 | 肌荒れ、乾燥肌への影響(人数) | ||
---|---|---|---|
改善した | やや改善した | 不変 | |
1%クズ根エキス配合クリーム | 17 | 11 | 2 |
クリームのみ(対照) | 6 | 15 | 9 |
1%クズ根エキス配合クリームの塗布は、未配合クリームと比較して肌荒れや乾燥肌の予防・改善効果に優れていることが確認された。
このような試験結果が明らかにされており(文献20:2006)、クズ根エキスにセラミド合成促進によるバリア改善作用が認められています。
コラーゲン合成促進による抗老化作用
コラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造、真皮におけるコラーゲンおよび線維芽細胞の役割について解説します。
真皮については以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、
表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス)に二分されますが、主成分である間質成分は大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞はその間に散在しています(文献21:2002;文献22:2018)。
間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚の張りを支えています(文献21:2002)。
また、細胞成分として線維芽細胞(fibroblast)は、真皮に分散しており、コラーゲン繊維や弾性繊維、ムコ多糖を産生する細胞であることから、必要に応じて線維芽細胞が活発に働きこれらの物質が順調につくられていることが、皮膚の張りや弾力を維持する上で重要です(文献21:2002)。
一方で、紫外線を浴びる頻度に比例して、間質成分への影響が大きくなり、シワの形成促進、色素沈着の増加など老化現象が徐々に進行することが知られています(文献23:2002)。
コラーゲンにおいては、UVA曝露によりコラーゲン合成能の減少が報告されており(文献24:1993)、このような長期紫外線暴露後の細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスの崩れが光老化の原因であると考えられています(文献25:1998)。
このような背景から、紫外線曝露によって合成量が減少するコラーゲンの合成を促進することは、紫外線曝露による光老化の抑制に重要であると考えられます。
2000-2001年にノエビアによって報告されたクズ根エキスの真皮コラーゲン産生に対する影響検証によると、
試料 | 濃度(μg/mL) | コラーゲン産生(%) |
---|---|---|
対照 | – | 100.0 |
陽性対照 | – | 586.8 |
クズ根エキス | 0.01563 | 76.2 |
0.03125 | 109.1 | |
0.0625 | 116.9 | |
0.125 | 123.1 | |
0.25 | 140.2 | |
0.5 | 187.0 | |
1.0 | 157.0 |
クズ根エキスは、ヒト真皮線維芽細胞によるコラーゲン産生を濃度依存的に促進することが示された。
また、コラーゲン産生の促進作用が示されたクズ根エキスの活性成分を調査したところ、その活性成分はダイゼインであること、そしてその作用が遺伝子発現レベルであることを見出した。
次に、1群5匹のヘアレスマウス背部にそれぞれ0.01%-0.15%濃度範囲のクズ根エキスを含む基剤を1日1回塗布、UVBライト(100mJ/c㎡)を週3回照射する手順を20週間にわたって実施し、また水のみを塗布した群を対照とし、マウス背部におけるしわの形成状況を観察および点数化して評価した。
その結果、 対照群はUVB照射日数10週を超える頃にはシワの深さは中程度まで達し、20週後には深いシワの形成が認められていたが、各濃度のクズ根エキスを含む基剤塗布群では、いずれの濃度においても20週後に微小または軽微なシワを認めた程度で、シワの形成は顕著に抑制されていた。
このような試験結果が明らかにされており(文献26:2000;文献27:2001)、クズ根エキスにコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。
ただし、クズ根エキスのコラーゲン合成促進効果は、クズ根に含まれるイソフラボノイド(イソフラボン)の効果であることが報告されていることから(文献26:2000;文献27:2001)、イソフラボノイドの含有量に依存すると考えられます。
複合植物エキスとしてのクズ根エキス
クズ根エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、クズ根エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | バイオアンテージ B |
---|---|
構成成分 | 水、BG、クズ根エキス、アロエベラ葉エキス、クロレラエキス |
特徴 | メラニン生成抑制、経表皮水分蒸散抑制、角質水分量増加、線維芽細胞増殖促進など植物抽出液によってプラセンタ様作用を意図して組み合わせたことから「植物性プラセンタ」とも呼ばれる混合植物抽出液 |
原料名 | エバーセルホワイト |
---|---|
構成成分 | BG、水、アセチルチロシン、ボタンエキス、クズ根エキス |
特徴 | チロシナーゼ活性阻害およびメラニンポリマー重合阻害による多角的メラニン生合成抑制効果を意図して組み合わせた混合植物抽出液・アミノ酸混液 |
原料名 | ファルコレックス PSP |
---|---|
構成成分 | 水、BG、ユキノシタエキス、ボタンエキス、クズ根エキス |
特徴 | 相乗的にメラニン合成を阻害する3種類の色素沈着抑制系植物抽出液 |
クズ根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
また、化粧品原料におけるクズ根エキスに含まれるイソフラボノイド(イソフラボン)に関しても、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題ないと考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
- [ヒト試験] 30人の男性被検者に0.01%-0.1%クズ根エキスを含む各基剤を48時間閉塞パッチ試験を実施したところ、いずれの被検者も問題となる皮膚刺激反応は認められなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
安全性についての補足
化粧品に用いられるクズ根エキスの安全性の考察においては、天然化粧品原料としての安全性のほかに女性ホルモン作用を有する物質としての安全性を考慮する必要がありますが、天然化粧品原料としてのイソフラボンの安全性は通常の植物エキスと比較しても特に変わりがなく、化粧品配合量において安全性に問題ないと考えられています(文献28:2001)。
∗∗∗
クズ根エキスは美白成分、保湿成分、バリア改善成分、抗老化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
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