カモミラETとは…成分効果と毒性を解説

色素沈着抑制
カモミラET
[医薬部外品表示名称]
・カモミラET

1998年に日焼けによるシミ、そばかすを防ぐ医薬部外品主剤(美白有効成分)として承認された、キク科植物ジャーマンカモミール(学名:Matricaria recutita = Matricaria chamomilla 和名:カミツレ)の花からスクワランで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ジャーマンカモミール(German chamomile)は、ヨーロッパを原産とし、紀元前1世紀頃にはハーブ療法として一定の評価を得ていたことから中世には消化器系の不調や膨満感をの緩和や睡眠を促す効果が記され、乳児から大人まで幅広い年齢層で不安感、筋肉の痙攣、皮膚のトラブル、消化器系の不調を緩和・改善するハーブとして評価されてきた歴史があり、現在においてもヨーロッパの代表的なメディカルハーブとして広く認知されています(文献1:2014)

また、花はリンゴ様のフルーティーでふくよかな芳香をもち、その香りが鎮静・リラックス効果をもたらすことから現在では世界各国でハーブティーとして愛飲されています(文献2:2010)

ヨーロッパ、北アフリカ、アジアに広く自生していますが、商用栽培としては東ヨーロッパ(とくにスロバキア、チェコ、ハンガリー)を中心にアルゼンチン、エジプトなどで栽培されています(文献1:2014;文献3:2005)

ジャーマンカモミールの花の化粧品以外の主な用途としては、メディカルハーブ分野において消化器系の痙攣や炎症を改善することから食後の膨満感の緩和や胸焼けに、また子どものお腹の調子を整えたり、たかぶる神経やストレスを鎮静するためにハーブティーやカプセル剤として用いられ、また皮膚の炎症を鎮めることから湿疹、おむつかぶれ、皮膚炎、軽度の傷などに外用剤として用いられます(文献1:2014;文献4:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

ET-1阻害による色素沈着抑制作用

ET-1阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびET-1について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献5:2002;文献6:2016;文献7:2019)

このメラノサイト活性化因子のひとつとしてET-1(endothelin-1:エンドセリン-1)が知られており、ET-1はメラノサイト増殖作用およびチロシナーゼ合成促進作用が認められています(文献8:1992)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献5:2002;文献7:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献5:2002;文献7:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献5:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献5:2002)

このような背景から、紫外線によるET-1の伝達を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

1997年に花王によって報告されたカモミラETのET-1に対する影響検証によると、

in vitro試験において培養ヒトメラノサイトに各濃度のカモミラET溶液を添加した後に10nM濃度ET-1溶液を添加し、DNA合成量を測定するために16時間培養後の³Hチミジン(³H-thymidine)取り込み量を測定したところ、以下のグラフのように、

カモミラETのET-1阻害作用

カモミラETは、濃度依存的にET-1の阻害作用を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:1997)、カモミラETにET-1阻害作用が認められています。

次に、1999年に花王によって報告されたカモミラETのヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

健常な皮膚を有する22人の男性被検者の上腕内側に2MED(最小紅斑線量)のUVAおよびUVBを含む人工紫外線を照射し、1箇所に0.5%カモミラET配合クリームを、もう1ヶ所に未配合クリームをそれぞれ二重盲検法に基づいて1日2回(朝夕)20日間にわたって塗布してもらった。

試験開始日から7日おきに21日目まで紫外線照射によって誘導された各試験部位の色素沈着の黒化度を「++:高度」「+:中程度」「±:軽度」「-:なし」の4段階で判定したところ、以下の表のように、

試料 判定日 皮膚の色素沈着に対する評価
++ + ±
カモミラET配合クリーム 7日後 13 9 0 0
14日後 7 9 6 0
21日後 1 13 8 0
クリームのみ(対照) 7日後 16 6 0 0
14日後 8 13 1 0
21日後 1 15 6 0

0.5%カモミラET配合クリームは、未配合クリームと比較して皮膚の色素沈着に対して黒化度が低い傾向を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1999)、カモミラETに色素沈着抑制作用が認められています。

カモミラETの安全性(刺激性・アレルギー)について

カモミラETの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 1998年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

皮膚一次試験、皮膚累積刺激性試験、皮膚感作性試験およびヒトパッチ試験を実施した結果、とくに問題ないと報告されており(文献11:1998)、また1998年からの使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

眼刺激性試験を実施した結果、とくに問題ないと報告されており(文献11:1998)、また1999年からの使用実績がある中で重大な眼刺激の報告がみあたらないため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

光感作試験を実施した結果、とくに問題ないと報告されており(文献11:1998)、また1999年からの使用実績がある中で重大な光感作の報告がみあたらないため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

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カモミラETは美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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参考文献:

  1. レベッカ ジョンソン, 他(2014)「ジャーマンカモミール」メディカルハーブ事典,145-147.
  2. 長島 司(2010)「ジャーマンカモミール」ハーブティー その癒しのサイエンス,42-43.
  3. 北野 佐久子(2005)「カモミール」基本 ハーブの事典,25-28.
  4. 林 真一郎(2016)「ジャーマンカモミール」メディカルハーブの事典 改定新版,74-75.
  5. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  7. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  8. G. Imokawa, et al(1992)「Endothelins secreted from human keratinocytes are intrinsic mitogens for human melanocytes」Journal of biological chemistry(267)(34),24675-24680.
  9. G. Imokawa, et al(1997)「The Role of Endothelin‐1 in Epidermal Hyperpigmentation and Signaling Mechanisms of Mitogenesis and Melanogenesis」Pigment Cell Res(10)(4),218-228.
  10. 市橋 正光, 他(1999)「カミツレエキスの紫外線誘導色素沈着に対する抑制効果」皮膚(41)(4),475-480.
  11. 厚生労働省(1998)薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録,平成10年12月7日.

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