イタドリ根エキスとは…成分効果と毒性を解説

色素沈着抑制
イタドリ根エキス
[化粧品成分表示名称]
・イタドリ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・イタドリエキス

タデ科植物イタドリ(学名:Fallopia japonica = Polygonum Cuspidatum 英名:Japanese knotweed)の根からエタノール、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

イタドリ(痛取)は、日本各地、朝鮮半島、台湾、中国などに自生し、日本においては春先に出るタケノコ状の新芽・若芽が山菜として食されています(文献1:2011)

イタドリ根エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
ポリケタイド アントラキノン ポリゴニン
スチルベン レスベラトロール、ポリダチン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献2:1963)

イタドリの根(生薬名:虎杖根)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において清熱解毒・止痛・退黄・活血の効能があることから関節痛、黄疸、生理不順、火傷などに用いられています(文献1:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品などに使用されています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献3:2002;文献4:2016;文献5:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献3:2002;文献5:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献3:2002;文献5:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献3:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献3:2002)

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

1993年にノエビアによって報告されたイタドリ根エキスのチロシナーゼおよびヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

in vitro試験において、0.5mg/mLチロシン基質溶液0.5mLに0.16%チロシナーゼ溶液0.5mL、リン酸緩衝液2mLおよび固形分濃度1%イタドリ根エキス水溶液2mLを添加し、反応および処理後にチロシナーゼ阻害率を算出したところ、以下の表のように、

試料 チロシナーゼ活性阻害率(%)
イタドリ根エキス 58.5

イタドリ根エキスはチロシナーゼ活性を有意に阻害する作用を有することが確認された。

次に、シミ・ソバカスが気になる40人の女性被検者(30-40歳)のうち20人に各濃度のイタドリ根エキス配合製剤を1日2回(朝晩)洗顔後の顔面に2ヶ月間使用してもらい、別の20人に対照としてイタドリ根エキス未配合製剤を同様に使用してもらった。

評価方法として「有効:皮膚色素沈着が改善された」「やや有効:皮膚色素沈着がやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の基準で2ヶ月後に評価したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) 被検者数 ヒト皮膚色素沈着改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
イタドリ根エキス配合クリーム 5.0 10 9 1 0
クリームのみ(対照) 10 0 0 10
イタドリ根エキス配合乳液 1.0 10 8 2 0
乳液のみ(対照) 10 0 1 9

1%および5%イタドリ根エキス配合製剤は、未配合製剤と比較して有意に皮膚色素沈着を改善することを確認した。

このような試験結果が明らかにされており(文献6:1993)、イタドリ根エキスにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

イタドリ根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

イタドリ根エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献7:2003)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に固形分濃度1%イタドリ根エキス水溶液を塗布し、塗布24,48および72時間後に紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に固形分濃度1%イタドリ根エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に紅斑および浮腫を指標として皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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イタドリ根エキスは美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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参考文献:

  1. 鈴木 洋(2011)「虎杖根(コジョウコン)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,158-159.
  2. 野々村 進, 他(1963)「タデ科植物成分の研究(第1報)」YAKUGAKU ZASSHI(83)(10),988-990.
  3. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  5. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  6. 株式会社ノエビア(1993)「美白化粧料」特開1993-294819.
  7. 一丸ファルコス株式会社(2003)「メイラード反応阻害剤」特開2003-212770.

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