イソステアリルアスコルビルリン酸2Naとは…成分効果と毒性を解説

美白 抗酸化成分 抗老化成分
イソステアリルアスコルビルリン酸2Na
[化粧品成分表示名称]
・イソステアリルアスコルビルリン酸2Na

[慣用名]
・APIS

アスコルビン酸(ビタミンC)にイソステアリルリン酸エステル(イソステアリルアルコール+リン酸)を結合させた両親媒性ビタミンC誘導体(∗1)のひとつです。

∗1 言い換えると、水溶性リン酸型ビタミンC誘導体であるアスコルビルリン酸Naに油溶性のイソステアリルアルコールを付加して両親媒性(親水性と親油性の両方の性質を有した性質)に合成した化合物です。

両親媒性ビタミンC誘導体というとパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)が有名ですが、APPSは安定性が低いため、製品に原料を同梱し使用前に混ぜて使用するという方法が提案されていました(文献1:2008)

一方でイソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、両親媒性でありながら安定性が高く、なおかつAPPSと同様に皮膚浸透性が高いのが特徴であり、浸透すると皮膚内に存在する酵素であるフォスファターゼによってアスコルビン酸(ビタミンC)へ分解・代謝され、ビタミンCとしての作用・効果を発揮します。

2008年に自治医科大学皮膚科によって報告されたイソステアリルアスコルビルリン酸2Naの皮内浸透性検証によると、

三次元培養ヒト皮膚モデルを用いて、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naの皮内浸透性を検討した。

対照としてアスコルビン酸および水溶性ビタミンC誘導体であるアスコルビルリン酸Naを使用し、1,3,5,10および24時間時点での浸透量を計測したところ、以下のグラフのように、

三次元培養ヒト皮膚モデルを用いたイソステアリルアスコルビルリン酸2Na浸透性試験

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、アスコルビルリン酸Naと比較して顕著な皮内浸透性を示した。

また24時間時点までは経時的に浸透量は増加し続けた。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2008)、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは水溶性ビタミンC誘導体と比較して、優れた皮内浸透性が認められています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、美白化粧品、スキンケア化粧品に使用されています。

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

この一連のプロセスによって黒化メラニンが生合成されますが、アスコルビン酸(ビタミンC)には、以下のように、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

黒化メラニンになる前に還元して黒化メラニンを防止する作用と、黒化メラニンそのものを還元して色素を薄くする作用があります。

このような背景からチロシナーゼ活性を抑制・阻害およびメラニンの還元(淡色化)は色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

2008年に東洋ビューティー、自治医科大学皮膚科および近畿大学薬学部の共同研究によって報告されたイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのメラニン形成抑制検証によると、

正常ヒト表皮メラノサイトを用いた培地に濃度50-100μMのイソステアリルアスコルビルリン酸2Naを添加し、また比較対照としてアスコルビン酸およびアスコルビルリン酸Naを添加し、メラニン産生量を測定したところ、以下のグラフのように、

正常ヒト表皮メラノサイトにおけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのメラニン抑制効果

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、濃度依存的にメラニン産生量を減少させた。

またメラニン合成に対するイソステアリルアスコルビルリン酸2Naの阻害効果が細胞増殖の阻害によって引き起こされる可能性を排除するために、イソステアリルアスコルビルリン酸2Na存在下および非存在下で増殖したヒト表皮メラノサイトの数を比較したところ、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは100μM未満濃度において細胞生存率を阻害しないことを確認した。

次に3次元培養ヒト皮膚モデルを用いて、0.5-1.0%濃度イソステアリルアスコルビルリン酸2Naを3週間にわたって処理し、メラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

3次元培養ヒト皮膚モデルにおけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのメラニン合成への影響

0.5-1.0%濃度イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、アスコルビン酸およびアスコルビルリン酸Naに比べて顕著にメラニン合成を抑制した。

また各試料1.0%未満濃度での処理において、細胞生存率の有意な減少は観察されていないことも確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2008)、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naにメラニン合成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

次に、同じく2008年に東洋ビューティー、自治医科大学皮膚科および近畿大学薬学部の共同研究によって報告されたイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのチロシナーゼ活性阻害検証によると、

正常ヒト表皮メラノサイトを用いた培地に濃度50-100μMのイソステアリルアスコルビルリン酸2Naを添加し、また比較対照としてアスコルビン酸およびアスコルビルリン酸Naを添加し、チロシナーゼ活性率を測定したところ、以下のグラフのように、

正常ヒト表皮メラノサイトにおけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのチロシナーゼ活性阻害効果

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、濃度依存的にチロシナーゼ活性を抑制した。

またイソステアリルアスコルビルリン酸2NaのIC₅₀値(50%阻害濃度)は125μMであった。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2008)、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用

紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用に関しては、2008年に東洋ビューティー、自治医科大学皮膚科、近畿大学薬学部および弘前大学医学部皮膚科の共同研究によって報告されたイソステアリルアスコルビルリン酸2Naの紫外線照射における細胞生存検証によると、

ヒト皮膚線維芽細胞を各濃度の各試料で前処理した後、細胞をUVB(30mJ/c㎡)またはUVA(15J/c㎡)にさらし、24時間の培養後に細胞の生存率を評価したところ、以下のグラフのように、

活性酸素に対する防御効果試験結果(UV-B)

活性酸素に対する防御効果試験結果(UV-A)

イソステアリルアスコルビルリン酸2Na(APIS)は、UVBまたはUVA照射による酸化ストレスによって誘発された細胞損傷を濃度依存的に減少させた。

また同濃度においてアスコルビルリン酸Na(VCP-Na)は、約10%の細胞保護効果を示し、アスコルビン酸(VC)はほとんど保護作用を示さなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2008)、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naに紫外線照射における活性酸素抑制による細胞保護・抗酸化作用が認められています。

コラーゲン合成促進による抗老化作用

コラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割と線維芽細胞について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

コラーゲンは、真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献6:2002)

ただし、加齢や過剰な紫外線によって線維芽細胞数が減少することで、コラーゲン量も減少していくことが知られており、線維芽細胞の増殖を促進することはハリのある若々しい肌を維持するために重要であると考えられています。

2008年に東洋ビューティー、自治医科大学皮膚科および近畿大学薬学部の共同研究によって報告されたイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのコラーゲン合成促進検証によると、

正常ヒト線維芽細胞を24時間培養し、培地を各濃度のイソステアリルアスコルビルリン酸2Naを含む培地に交換し、72時間培養した後に線維芽細胞の増殖効果を評価したところ、以下のグラフのように、

ヒト線維芽細胞におけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naの線維芽細胞増殖効果

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、容量依存的に正常ヒト線維芽細胞の増殖を促進させた。

次に、同様の試験において各濃度の各試料を含む培地を72時間培養後、コラーゲン合成量を測定したところ、以下のグラフのように、

ヒト線維芽細胞におけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのコラーゲン合成促進効果

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは、容量依存的に正常ヒト線維芽細胞のコラーゲン合成量を促進させた。

また、コラーゲン合成に対するイソステアリルアスコルビルリン酸2Naの効果が、イソステアリルアスコルビルリン酸2Nasのものではなく、線維芽細胞におけるホスファターゼによる分解によって産生されるアスコルビン酸によって引き起こされることを立証するために、同様の試験をいくつかの濃度のホスファターゼ阻害剤を含む培地で培養し、コラーゲン合成量を測定したところ、以下のグラフのように、

ホスファターゼ阻害剤による正常ヒト線維芽細胞におけるイソステアリルアスコルビルリン酸2Naのコラーゲン合成への影響

ホスファターゼ阻害剤の存在下では、コラーゲン合成に対するイソステアリルアスコルビルリン酸2Naおよびアスコルビルリン酸Naの促進効果は濃度依存的に減少したが、アスコルビン酸の効果は大きく影響されなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2008)、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naにコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。

また、イソステアリルアスコルビルリン酸2Naのコラーゲン合成促進効果は皮膚内酵素であるホスファターゼによる分解によって産生されたアスコルビン酸のものであることが確認されています(文献5:2008)

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イソステアリルアスコルビルリン酸2Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

イソステアリルアスコルビルリン酸2Naの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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イソステアリルアスコルビルリン酸2Naは美白成分、抗酸化作用、抗老化成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗酸化成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. 櫃田 廣子, 他(2008)「L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-脂肪酸凍結乾燥製剤及び化粧料」特開2008-106035.
  2. H.Shibayama, et al(2008)「Permeation and Metabolism of a Novel Ascorbic Acid Derivative,Disodium Isostearyl 2-O-L-Ascorbyl Phosphate, in Human Living Skin Equivalent Models」Skin pharmacology and Physiology(21)(4),235-243.
  3. H.Shibayama, et al(2008)「Inhibitory Effects of a Novel Ascorbic Derivative, Disodium Isostearyl 2-O-L-Ascorbyl Phosphate on Melanogenesis」Chemical & Pharmaceutical Bulletin(56)(3),292-297.
  4. H.Shibayama, et al(2008)「Effect of a Novel Ascorbic Derivative, Disodium Isostearyl 2-O-L-Ascorbyl Phosphate, on Normal Human Dermal Fibroblasts against Reactive Oxygen Species」Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(72)(4),1015-1022.
  5. H.Shibayama, et al(2008)「Effect of a Novel Ascorbic Derivative, Disodium Isostearyl 2-O-L-Ascorbyl Phosphate on Human Dermal Fibroblasts: Increased Collagen Synthesis and Inhibition of MMP-1」Biological & Pharmaceutical Bulletin(31)(4),563-568.
  6. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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