アーチチョーク葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

美白 抗老化
アーチチョーク葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・アーチチョーク葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・アーティチョークエキス

キク科植物アーティチョーク(学名:Cynara scolymus 英名:Artichoke 和名:チョウセンアザミ)の葉からエタノールで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

アーティチョークは、その歴史がまだ完全に解明できているわけではなく仮説ではありますが、ローマ時代におそらくイタリアのシチリア半島で飼育され(文献1:2007)、中世初期に広まり、日本では江戸中期から栽培されていましたが、食用としては普及せず、主に鑑賞目的であったことが報告されています(文献2:2018)

西洋では蕾と葉が食品として常用され、またベトナム、ルーマニア、メキシコなどではハーブティーとして消費されており、ほかにもアーティチョークを主原料としたイタリア産ワインベースリキュールの「Cynar(チナール)」が広く知られています。

アーチチョーク葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド セスキテルペンラクトン シナロピクリン

苦味成分であるシナロピクリン(Cynaropicrin)以外の成分の多くを除去し、シナロピクリンを作用の中心としたものであると報告されています(文献3:2006)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、パック&マスク製品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されています。

NF-κB活性阻害による色素沈着抑制作用

NF-κB活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびNF-κBと色素沈着の関係について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイト(表皮細胞:角化細胞)から分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献4:2002;文献5:2016;文献6:2019)

次に、以下のNF-κBの働きに特化したメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが(∗1)

∗1 図ではNF-κBを「κB」と略しています。

メラニン合成におけるNF-κBの影響[表皮]

この紫外線曝露時において、転写因子(∗2)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)も過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、

∗2 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

慣用名 正式名称 分類 作用
ET-1 endothelin-1
エンドセリン-1
エンドセリン メラノサイトの増殖
チロシナーゼの合成促進
bFGF basic fibroblast growth factor
線維芽細胞増殖因子
サイトカイン
成長因子(増殖因子)
メラノサイトの増殖
TRPの合成促進
チロシナーゼの活性促進
COX-2 cyclooxygenase-2
シクロオキシゲナーゼ-2
プロスタグランジン産生酵素 プロスタグランジンを生成

これらのメラノサイト活性化因子の産生が促進されることが報告されています(文献7:2005;文献8:2014)

また、紫外線曝露によって過剰に発現したNF-κBは、炎症性サイトカイン(∗3)の一種であるTNFα(Tumor Necrosis Factor‐α:腫瘍壊死因子)とIL-1(Interleukin-1:内因性発熱物質)を産生し、これらの炎症性サイトカインによってさらにNF-κBの発現が引き起こされるという悪循環が生じ、この循環がさらなるメラノサイト活性化因子の産生促進につながります(文献7:2005)

∗3 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

メラノサイト活性化因子はメラノサイトに届けられることで、メラニン合成に必要な酸化酵素であるチロシナーゼやTRP(tyrosinaserelated protein:チロシナーゼ関連タンパク)の活性を促進し、メラノサイトの増殖に関与することから、NF-κBの過剰な発現を抑制・阻害しメラノサイト活性化因子の産生を抑制することは、メラニン合成の抑制において重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告された紫外線曝露におけるNF-κBに対するアーチチョーク葉エキスの影響検証によると、

In vitro試験において表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いてNF-κBを活性化させ、1%-3%アーチチョーク葉エキスを添加したのちに、NF-κBの転写活性を比較したところ、以下のグラフのように、

NF-κB活性に対するアーチチョーク葉エキスの影響

アーチチョーク葉エキスは、濃度依存的にNF-κB活性に対する抑制効果を示した。

次に、In vitro試験において表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いてNF-κBを活性化させた場合および3%アーチチョーク葉エキスを添加した場合のbFGF産生量を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線曝露によるbFGF産生に対するアーチチョーク葉エキスの影響

アーチチョーク葉エキスは、bFGFの産生量に対して有意に抑制効果を示した。

さらに、5人の被検者(20-40代)の左右頬部に5%アーチチョーク葉エキスを1日2回3ヶ月間塗布し、塗布前と塗布開始1-3ヶ月後にメラニンインデックス(皮膚の黒色度)を測定した。

その結果、いずれの被検者も5%アーチチョーク葉エキス塗布部位のメラニンインデックスは低下し、肌の白色度が向上する傾向が認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献3:2006)、アーチチョーク葉エキスにNF-κB活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

次に、2008年に一丸ファルコスによって報告された紫外線曝露におけるメラノサイト活性化因子の一種であるCOX-2およびエンドセリン-1に対するアーチチョーク葉エキスの影響検証によると、

TNFαで刺激しNF-κBを活性化させたヒト腎臓細胞に1%-3%アーチチョーク葉エキスを添加し、COX-2の発現を測定したところ、以下のグラフのように、

アーチチョーク葉エキスのCOX-2産生抑制作用

アーチチョーク葉エキス添加群は、濃度依存的な発現の抑制が認められた。

次に、ヒト線維芽細胞に0.5および1.0%アーチチョーク葉エキスを添加し、3時間後に紫外線(UVB)を照射、照射18時間後にエンドセリン量を測定したところ、以下のグラフのように、

アーチチョーク葉エキスのエンドセリン産生抑制作用

アーチチョーク葉エキス添加群は、未添加と比較して有意にエンドセリン量が抑制された。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:2008)、アーチチョーク葉エキスにCOX-2およびエンドセリン-1の産生抑制作用が認められています。

COX-2およびエンドセリン-1は紫外線曝露によるNF-κBの活性化によって産生が促進されることが知られており(文献9:2008)、アーチチョーク葉エキスにはNF-κBの活性阻害効果が認められていることから(文献3:2006)、アーチチョーク葉エキスのCOX-2およびエンドセリン-1産生抑制作用はNF-κB阻害によるものであると考えられます。

また、アーチチョーク葉エキスのNF-κB阻害効果は、シナロピクリンによる効果であることが明らかにされていることから(文献10:2005)、NF-κB活性阻害による色素沈着抑制作用はシナロピクリンによるものであると考えられます。

NF-κB活性阻害による抗老化作用

NF-κB活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造と、真皮におけるコラーゲン、NF-κB、MMP-1、線維芽細胞および老化の関係について解説します。

真皮については以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス)に二分されますが、主成分である間質成分は大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞はその間に散在しています(文献11:2002;文献12:2018)

間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚の張りを支えています(文献11:2002)

コラーゲンは、Ⅰ型コラーゲン(80-85%)とⅢ型コラーゲン(10-15%)が一定の割合で会合(∗4)することによって構成されており(文献13:1987)、Ⅰ型コラーゲンは皮膚や骨に最も豊富に存在し、強靭性や弾力をもたせたり、組織の構造を支える働きが、Ⅲ型コラーゲンは細い繊維からなり、しなやかさや柔軟性をもたらす働きがあります(文献14:2013)

∗4 会合とは、同種の分子またはイオンが比較的弱い力で数個結合し、一つの分子またはイオンのようにふるまうことをいいます。

また、コラーゲンは古くなったり不必要になると分解され、新しいコラーゲンへと変換されますが、このときにコラーゲンを分解するのがタンパク質分解酵素の一種であるコラゲナーゼであり、コラゲナーゼおよびコラーゲンは常時産生されるわけではなく、これらを産生する線維芽細胞(fibroblast)によって、必要なときに必要なだけ活発に働くように産生と分解のバランスを保たれています(文献15:2002)

コラゲナーゼの中でⅠ型コラーゲンを分解するコラゲナーゼは、MMP-1(Matrix metalloproteinase-1:マトリックスメタロプロテアーゼ-1)と呼ばれており、このMMP-1は紫外線やストレスなどによって過剰に産生されることが報告されていますが(文献7:2005)、以下のNF-κBの働きに特化した光老化図をみてもらうとわかるように、

光老化におけるNF-κBの影響 [真皮]

紫外線の曝露によって線維芽細胞内で転写因子の一種であるNF-κBが過剰に発現・活性化することによって、MMP-1を過剰に産生することが明らかにされていることから(文献3:2006)、MMP-1の産生を促進するNF-κBの過剰な発現を抑制・阻害することが紫外線曝露時の光老化抑制において重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告された紫外線曝露におけるNF-κBに対するアーチチョーク葉エキスの影響検証によると、

In vitro試験において表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いてNF-κBを活性化させ、1%-3%アーチチョーク葉エキスを添加したのちに、NF-κBの転写活性を比較したところ、以下のグラフのように、

NF-κB活性に対するアーチチョーク葉エキスの影響

アーチチョーク葉エキスは、濃度依存的にNF-κB活性に対する抑制効果を示した。

次に、In vitro試験において表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いてNF-κBを活性化させた場合および3%アーチチョーク葉エキスを添加した場合のMMP-1産生量を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線曝露によるMMP-1産生に対するアーチチョーク葉エキスの影響

アーチチョーク葉エキスは、MMP-1の産生量に対して有意に抑制効果を示した。

さらに、5人の被検者(20-40代)の左右頬部に5%アーチチョーク葉エキスを1日2回3ヶ月間塗布し、塗布前と塗布開始3ヶ月後に皮膚粘弾性測定器にて肌の弾力度を測定した。

その結果、いずれの被検者も未塗布部位と比較して5%アーチチョーク葉エキス塗布部位の肌弾力が向上する傾向が認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献3:2006)、アーチチョーク葉エキスにNF-κB活性阻害による抗老化作用が認められています。

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アーチチョーク葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

アーチチョーク葉エキスの現時点での安全性は、

  • 2006年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

NF-κBは生命活動を行う上で必須であり、皮膚の形成においても大きな役割を果たしていることから、NF-κB阻害剤を塗布することに懸念がもたれていましたが、一丸ファルコスによると基礎研究を通じて正常な皮膚にNF-κB阻害剤を投与しても本来の皮膚機能には影響を及ぼさないことが報告されています(文献7:2005)

また、アーチチョーク葉エキスは化粧品における皮膚一次刺激性試験、皮膚感作性試験およびヒトパッチ試験の結果、いずれも陰性であることが報告されています(文献3:2006)

このような背景があり、さらに2006年からの使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アーチチョーク葉エキスは美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. G. Sonnante, et al(2007)「The Domestication of Artichoke and Cardoon: From Roman Times to the Genomic Age」Annals of Botany(100)(5),1095-1100.
  2. ジャパンハーブソサエティー(2018)「アーティチョーク」ハーブのすべてがわかる事典,12-13.
  3. 田中 清隆(2006)「光老化におけるNF-κBの関与と新規化粧品原料の抗老化作用」Fragrance Journal(34)(10),52-57.
  4. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  5. 日光ケミカルズ(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  6. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  7. K. Tanaka, et al(2005)「Prevention of the Ultraviolet B-Mediated Skin Photoaging by a Nuclear Factor κB Inhibitor, Parthenolide」Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics(315)(2),624-630.
  8. 高橋 達治(2014)「肌老化に対するサケ鼻軟骨プロテオグリカン及びシナロピクリンによる内外美容効果」Fragrance Journal(42)(1),38-43.
  9. “日経ヘルス online Special”(2008)「メラニン合成の促進因子を抑制 肌の光老化を改善するアーティチョーク葉エキス」, <http://wol.nikkeibp.co.jp/nh/report/artichoke0808/02.html> 2018年7月26日アクセス.
  10. 小島 弘之, 他(2005)「アーティチョーク抽出物中のNF-κB抑制成分」日本薬学会 第125年会.
  11. 朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  12. 清水宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  13. D.R. Keene, et al(1987)「Type Ⅲ collagen can be present on banded collagen fibrils regardless of fibril diameter」Journal of Cell Biology(105)(5),2393–2402.
  14. 村上 祐子, 他(2013)「加齢にともなうⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少メカニズム」日本化粧品技術者会誌(47)(4),278-284.
  15. 朝田 康夫(2002)「線維芽細胞の能力低下とは」美容皮膚科学事典,135-137.

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