アスコルビルリン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

美白
アスコルビルリン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・アスコルビルリン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・リン酸L-アスコルビルナトリウム

[慣用名]
・APS、安定型ビタミンC誘導体

1990年代に医薬部外品美白有効成分として承認された、アスコルビン酸(ビタミンC)にリン酸を付加したナトリウム塩であり、水溶性ビタミンC誘導体です。

安定型ビタミンC誘導体と呼ばれていることからも推察されるように、pH7以上で安定性が高いのが特徴ですが、長期保存では少しずつ濁りや変臭などが生じる可能性があるため、アスコルビルリン酸Naの保存安定性を向上することが報告されているBGなどの多価アルコールや2価金属塩などを一定量併用することで、保存安定性を高める処方がなされていることもあります(文献5:1991;文献7:1997)

2価金属塩の中で、アスコルビルリン酸Naとの併用で保存安定性が向上され、かつ効果が損なわれない(アスコルビン酸の本来の効果が発揮される)ものは、塩化Mg、硫酸Mg、塩化亜鉛、塩化Al、炭酸Mgが報告されています(文献7:1997)

また一方で、アスコルビルリン酸Naの作用は、主にアスコルビルリン酸Naが皮膚内の酵素であるフォスファターゼによりアスコルビン酸に加水分解されることによるアスコルビン酸の作用です(文献6:1994)

2004年に昭和電工によって公開されたビタミンC誘導体の皮膚浸透性および皮内アスコルビン酸量の比較検証によると、

ヒト表皮角化細胞を用いて、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)、アスコルビルリン酸Na、アスコルビルグルコシド(AA2G)それぞれ100μMを含む培地に交換し、3,6および18時間培養後に細胞を回収して洗浄し、細胞内のアスコルビン酸濃度を測定したところ、以下のグラフのように、

アスコルビルグルコシドの細胞内アスコルビン酸濃度への影響

アスコルビルリン酸Naを添加して培養した細胞は、いずれの時間においても、APPSほどではありませんが、アスコルビルグルコシドよりアスコルビン酸濃度が高かった。

次にボランティアより提供を受けたヒト皮膚バイオプシー小片を用いて、表皮側に各ビタミンC誘導体0.5%を投与し、4時間経過した時点で皮膚片を取り出し、表皮および真皮中のアスコルビン酸濃度を測定した。

用いた皮膚片によって皮膚透過量にかなりの差異がみられたが、いずれの試験においても以下のグラフのように、

アスコルビルグルコシドの皮内アスコルビン酸濃度への影響

アスコルビルリン酸Naは、APPSほどではありませんが、アスコルビルグルコシドより表皮内アスコルビン酸濃度が高かった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2004)、アスコルビルリン酸Naは表皮内酵素活性によって正常にアスコルビン酸に分解・代謝されていることが示されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、薬用美白化粧品、美白化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品などに使用されています。

メラニン還元による色素沈着抑制作用

メラニン還元による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

この一連のプロセスによって黒化メラニンが生合成されますが、アスコルビン酸(ビタミンC)には、以下のように、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

黒化メラニンになる前に還元して黒化メラニンを防止する作用と、黒化メラニンそのものを還元して色素を薄くする作用があります。

1997年にカネボウによって公開された技術情報によると、

20人の被検者の背部にUVBを最小紅斑線量の2倍照射し、各濃度のアスコルビルリン酸Na配合製剤塗布部位と未塗布部位を設定し、皮膚の基準明度を測定した。

続いて試料塗布部位には試料を1日2回ずつ15週間連続塗布した後、3,6,9,12および15週間後の塗布部位および未塗布部位の皮膚明度を測定し、以下の判定基準にしたがって皮膚色の回復を評価したところ、以下の表のように、

判定は5段階基準とし、塗布部位の明度 -未塗布部位の明度の差が0以下なら1、0-0.04の範囲なら2、0.04-0.08の範囲なら3、0.08-0.12の範囲なら4、0.12以上なら5とした(5が最も明度差が大きく、すなわち明度回復値が大きい)。

アスコルビルリン酸Na濃度(%) 皮膚明度判定
6.0 4.3
3.0 4.2
2.0 4.1
1.0 4.0
0.05 4.0
0.0001 2.2

アスコルビルリン酸Naは、0.05%濃度以上で有意な皮膚明度回復効果が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1997)、アスコルビルリン酸Naにメラニン還元による色素沈着抑制作用が認められています。

また2015年にDSMニュートリションジャパンによって報告されたアスコルビルリン酸Naにおける有効性試験によると、

39人の女性被検者(30-45歳)に3%アスコルビルリン酸Na配合クリームを1日2回、12週間連用してもらったところ、皮膚の色を均一にし、かつ明るくするという結果がでた

このように報告されており(文献4:2015)、アスコルビルリン酸Naにメラニン還元による色素沈着抑制作用が認められています。

効果・作用についての補足

アスコルビルリン酸Naの作用は、基本的に皮膚内でビタミンC誘導体が分解・代謝されることによって発揮されるアスコルビン酸の効果であると考えられます。

そのため、アスコルビン酸の作用として広く知られているチロシナーゼ活性阻害作用、コラーゲン合成促進作用および紫外線照射における抗炎症作用(紅斑抑制作用)などの作用を有している可能性も考えられます。

ただし、アスコルビルリン酸Naにおいてチロシナーゼ活性阻害作用、コラーゲン合成促進作用および紫外線照射における抗炎症作用(紅斑抑制作用)の有効性試験はみあたらず、これらの作用に関しては推測の域をでないため保留とし、見つけしだい追加します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

アスコルビルリン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2000-2001年)

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アスコルビルリン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

アスコルビルリン酸Naの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • アスコルビルリン酸Naは現在の使用実績において化粧品成分として安全であることが判明している

オーストラリアの公的機関であるNICNASが公開している安全性データ(文献2:2002)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギにアスコルビルリン酸Naを48時間半閉塞パッチ適用し、OECD404テストガイドラインに基づいて24,48および72時間で皮膚反応を評価したところ、一次刺激スコア(0-4)は0.75であり、わずかな刺激剤であると判断された(BASF,1997)

開発元であるDSMニュートリションジャパンの安全データ(文献3:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いたOECDテストガイドライン404に基づいた皮膚刺激試験を実施したところ、皮膚刺激性なしと結論づけられた。ただし、皮膚に長時間接触すると皮膚刺激を引き起こすことがある

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな刺激ありと報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-わずかな刺激性が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

オーストラリアの公的機関であるNICNASが公開している安全性データ(文献2:2002)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼にアスコルビルリン酸Naを点眼し、処置後24時間後に眼をすすぎ、OECD405テストガイドラインに基づいて72時間観察したところ、48時間でわずかな発赤とケモーシスがみられたが、72時間では正常に戻った。この試験物質はわずかな眼刺激剤であると結論付けられた(BASF,1997)

開発元であるDSMニュートリションジャパンの安全データ(文献3:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いたOECDテストガイドライン405に基づいた眼刺激評価試験を実施したところ、眼刺激性なしと結論付けられた。ただし、眼に触れると機械的刺激を引き起こすことがある

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな眼刺激性が報告されているため、わずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • アスコルビルリン酸Naは現在の使用実績において化粧品成分として安全であることが判明している

オーストラリアの公的機関であるNICNASが公開している安全性データ(文献2:2002)によると、

  • [動物試験] 23匹のモルモットを用いてアスコルビルリン酸Na水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、1回目のチャレンジパッチの24および48時間後に23匹のうち4匹に皮膚反応がみられ、2回目のチャレンジパッチではいずれのモルモットにも皮膚反応はみられなかった。この皮膚反応はこの条件下に限定されたもので感作と関連がないと判断された(BASF,1997)

開発元であるDSMニュートリションジャパンの安全データ(文献3:2012)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてOECDテストガイドライン406に基づいた皮膚感作性評価試験を実施したところ、皮膚感作を引き起こさなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光感作性について

開発元であるDSMニュートリションの安全データ(文献3:2012)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて光感作性評価試験を実施したところ、光感作剤ではなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

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アスコルビルリン酸Naは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2005)「Final Report of the Safety Assessment of L-Ascorbic Acid, Calcium Ascorbate, Magnesium Ascorbate, Magnesium Ascorbyl Phosphate, Sodium Ascorbate, and Sodium Ascorbyl Phosphate as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(24)(2),51-111.
  2. NICNAS(2002)「Sodium Ascorbyl Phosphate」Full Public Report.
  3. DSMニュートリションジャパン(2012)「STAY-C50」Safety Data Sheet.
  4. DSMニュートリションジャパン(2015)「安定型ビタミンC誘導体「ステイ-C 50」に期待」C&T(4)(163),44.
  5. 小野 康幸, 他(1991)「化粧料」特開平03-109308.
  6. 引間 俊雄, 他(1994)「皮膚化粧料」特開平06-024931.
  7. 引間 俊雄(1997)「皮膚化粧料」特開平09-118613.
  8. 加藤詠子, 他(2004)「第ニ世代プロビタミンC」Fragrance Journal(32)(2),55-60.

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