α-アルブチンとは…成分効果と毒性を解説

美白
α-アルブチン
[化粧品成分表示名称]
・α-アルブチン

ハイドロキノングルコースをα結合して生成されるハイドロキノン誘導体です。

一般的に化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)の成分表示に「アルブチン」と記載されているアルブチンは、α-アルブチンの構造異性体であるβ-アルブチンであり、β-アルブチンの色素沈着抑制効果および安全性はすでに詳しく報告されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、主に美白を訴求するスキンケア化粧品に使用されます。

チロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合し、チロシンが酸化することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

このような背景からチロシナーゼ活性を抑制・阻害し、チロシンとの結合を阻害またはチロシンとの結合量を減らすことは、色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

2007年に江崎グリコによって報告されているα-アルブチンのチロシナーゼに対する阻害効果検証によると、

β-アルブチンのメラニン生成抑制効果の主要メカニズムは、メラニン合成のキー酵素のひとつであるチロシナーゼ阻害であると考えられている。

一方で、α-アルブチンのチロシナーゼに対する阻害作用についても複数の研究グループによって研究が行われており、α-アルブチンとβ-アルブチンのマッシュルーム由来、B16マウス由来およびヒト由来メラノーマ細胞のチロシナーゼに対する阻害作用について比較したところ、以下の表のように(∗1)

∗1 IC₅₀値とは、50%阻害に必要な濃度のことであり、数値が低いほど作用が強いkことを表します。

化合物 IC₅₀(mM)
ヒト由来
メラノーマ細胞
B16マウス由来
メラノーマ細胞
マッシュルーム由来
メラノーマ細胞
α-アルブチン 2.1 0.48 >10
β-アルブチン >30.0 4.8 8.4

α-アルブチンとβ-アルブチンは異なる特異性を示した。

α-アルブチンは、マッシュルーム由来チロシナーゼを阻害しなかったが、β-アルブチンは阻害作用を示した。

一方で、α-アルブチンは、マウス由来チロシナーゼをβ-アルブチンに比べて協力に阻害した。

またα-アルブチンの化粧品への応用を考慮した場合、ヒト由来チロシナーゼに対する阻害作用が重要であるが、ドーパを含むヒト由来メラノーマ細胞を用いた場合、α-アルブチンは、β-アルブチンよりも強力にヒトチロシナーゼを阻害した。

α-アルブチンとβ-アルブチンの各種チロシナーゼに対する阻害効果の違いは、チロシナーゼ蛋白の構造と密接な関係があると考えられており、マッシュルーム由来チロシナーゼとヒトチロシナーゼのアミノ酸配列の同一性は23%でしかなく、マウス由来チロシナーゼとヒトチロシナーゼ間の同一性は82%とかなり高い相同性を有していることから、メラニン生成抑制のスクリーニングにはヒトチロシナーゼの指標が重要であると考えられた。

これらの結果および考察から、ヒトチロシナーゼを強力に阻害するα-アルブチンは、β-アルブチンよりも優れたチロシナーゼ阻害剤となりうると考えられる。

このような検証結果が明らかになっており(文献4:2007;文献5:1995;文献6:2003)、α-アルブチンにチロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

α-アルブチンのチロシナーゼ阻害作用は、α-アルブチンの添加によりチロシナーゼmRNA量に変化が認められなかったことから、チロシナーゼ遺伝子発現の抑制によるものではなく、α-アルブチンが細胞内に取り込まれ、チロシナーゼを直接阻害することにより発揮していると考えられています(文献7:2005)

また、α-アルブチンはハイドロキノン誘導体ですが、α-アルブチンのチロシナーゼ阻害作用は、α-アルブチン自体によるものであり、α-アルブチンはグルコースとハイドロキノンに分解されないことが確認されています(文献3:1995)

次に、2005年に江崎グリコによって報告されているヒト皮膚モデルにおけるα-アルブチンのメラニン生成抑制効果検証によると、

正常ヒト皮膚3次元モデルにα-アルブチン水溶液125μgあるいは250μgを1日おきに13日間培養し、培養終了後にメラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

正常ヒト皮膚3次元モデルのメラニン生成に対するα-アルブチンの効果

α-アルブチンを添加した場合、メラニン生成量は、125μgおよび250μgで70%および40%に抑制されていることが確認された。

このような検証結果が明らかになっており(文献7:2005)、α-アルブチンにメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

また、紫外線照射による色素沈着に対して、α-アルブチンとUVA吸収剤であるメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを併用することで、それぞれ単体で配合するよりも大幅に色素沈着を抑制することが報告されています(文献7:2005)

スポンサーリンク

α-アルブチンの安全性(刺激性・アレルギー)について

α-アルブチンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性について

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 20人の健康な女性被検者の前腕の内側に1%α-アルブチン、コウジ酸、β-アルブチンを1日2回30日間適用し、皮膚科医によって評価したところ、すべての試験物質は試験の間十分な耐用性を示し、安全性に問題はなかった
  • [ヒト試験] 20人のボランティアの前腕内側に1%α-アルブチンまたは6%メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールまたは1%α-アルブチンと6%メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールまたはプラセボ製剤のいずれかを含む4種類の製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中にアレルギー反応や偽アレルギー反応を含む皮膚反応は起こらなかった
  • [動物試験] 6匹のモルモットにα-アルブチン水溶液0.1mLを解放パッチで14日間毎日適用し、Draize法に従って評価したところ、14日間毎日1匹のモルモットにおいて紅斑が認められた。最大刺激スコアは0.03であり、この試験物質は14日の反復投与で非刺激性であることを示した

DSMニュートリショナルプロダクツの安全データ(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてOECDテストガイドライン404に従った皮膚刺激性試験の結果、刺激性なしであった。ただし、長時間の皮膚接触は皮膚刺激を引き起こす可能性がある
  • [動物試験] モルモットを用いてOECDテストガイドライン406に従った皮膚感作性試験の結果、この物質は弱い皮膚感作物質であることが示された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、長時間の皮膚接触が皮膚刺激を引き起こす可能性があるという記述がみられるため、注意が必要だと考えられます。

眼刺激性について

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼で10%α-アルブチン溶液の眼刺激性を評価したところ、最小限の眼刺激性であった

DSMニュートリショナルプロダクツの安全データ(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてOECDテストガイドライン405に従った眼刺激性試験の結果、わずかな眼刺激性がある

と記載されています。

試験データによると、最小限の眼刺激性が報告されているため、10%以下濃度において、最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 20人のボランティアの前腕内側に1%α-アルブチンまたは6%メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールまたは1%α-アルブチンと6%メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールまたはプラセボ製剤のいずれかを含む4種類の製剤を対象に光感作試験を伴ったHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚反応は観察されず、試験物質はUV曝露と組み合わせても良好な耐用性を示し、試験期間中にアレルギー反応や偽アレルギー反応を含む皮膚変化は起こらなかった

DSMニュートリショナルプロダクツの安全データ(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてα-アルブチンの光毒性試験を実施したところ、光毒性による皮膚反応はなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

安全性についての補足

α-アルブチンはハイドロキノン誘導体ですが、α-アルブチンが皮膚に作用するメカニズムはα-アルブチン自身によるものであり、皮膚に浸透する際に分解・代謝を通じてグルコースから遊離したハイドロキノンによるものではないことが確認されています(文献3:1995)

∗∗∗

α-アルブチンは美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Scientific Committee on Consumer Safety(2015)「α-arbutin」OPINION ON.
  2. DSMニュートリショナルプロダクツ(2015)「ALPHA-ARBUTIN」Safety Data Sheet.
  3. 西村 隆久, 他(1995)「ハイドロキノン-α-グルコサイドによるメラニン生成抑制効果」YAKUGAKU ZASSHI(115)(8),626-632.
  4. K Sugimoto, et al(2007)「アルフア-アルブチンの開発:工業スケールでの製造および美白化粧品原料への応用」Trends in Glycoscience and Glycotechnology(19)(110),235-246.
  5. K Sugimoto, et al(1995)「Effects of α- and β-Arbutin on Activity of Tyrosinases from Mushroom and Mouse Melanoma」Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(59)(1),143-144.
  6. K Sugimoto, et al(2003)「Syntheses of Arbutin-α-glycosides and a Comparison of Their Inhibitory Effects with Those of α-Arbutin and Arbutin on Human Tyrosinase」Chemical and Pharmaceutical Bulletin(51)(7),798-801.
  7. 杉本 和久, 他(2005)「ハイドロキノン配糖体のチロシナーゼ阻害効果およびα-アルブチンのメラニン生成抑制効果」Fragrance Journal(33)(5),60-66.

スポンサーリンク

TOPへ