メントールとは…成分効果と毒性を解説

冷感
メントール
[化粧品成分表示名称]
・メントール

[医薬部外品表示名称]
・l-メントール、dl-メントール

シソ科植物ニホンハッカ(学名:Mentha canadensis var. piperascens 英名:Japanese peppermint)やペパーミント(学名:Mentha piperita 英名:peppermint)に多量に含まれる(文献4:2011)、化学構造的にp-メンタン(∗1)骨格をもつテルペノイド化合物(∗2)であり、モノテルペン(∗3)に分類されるペパーミント様の香気を有した(∗4)分子量156.27の環式モノテルペンアルコール(∗5)です(文献5:1994)

∗1 シクロヘキサン環の1位と4位にメチル基(-CH3)とイソプロピル基(-CH(CH3)2)が置換した構造をもつ有機化合物であり、p-メンタン骨格は多くのテルペン類の母体となっています。

∗2 二重結合をもち炭素数5個(C5)を分子構造とするイソプレンを分子構造単位(イソプレンユニット)とし、イソプレンが直鎖状に複数個(C5×n個)連結した後に環化や酸化など種々の修飾を経て生成する化合物のことです(文献6:2017)。多くのテルペノイドは疎水性であり、メントールもまた疎水性です。イソプレン単体(C5)の場合はイソプレンまたはテルペンと呼ばれますが、イソプレンが2個以上連なった場合(C5×2個以上)は複数形としてテルペノイド(イソプレノイド)と呼ばれます。

∗3 イソプレン(C5)ユニットが2個連結した炭素数10個(C5×2)のテルペノイド化合物です。

∗4 ペパーミント様の香気をもつのはl-メントールのみです(文献7:2010)。

∗5 モノテルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物の総称です。

主な用途としては、医薬品分野においては鎮痛作用および局所の血流増加作用があることから筋肉痛などの外用薬として湿布や軟膏などに、また止痒作用があることからかゆみ止めに、喉の弱い炎症を短期間軽減する目的で咳止めなどに用いられ、トイレタリー分野においては歯磨き粉などに、食品分野においては食品香料として菓子類などに、また香り付けとしてタバコなどに汎用されています(文献4:2011;文献8:2012)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品、リップケア化粧品、シート&マスク製品、デオドラント製品、クレンジング製品、口紅など様々な製品に汎用されています。

TRPM8活性化による冷涼感付与効果

TRPM8活性化による冷涼感付与効果に関しては、まず前提知識として自由神経終末、温度感受性TRP(Transient Receptor Potential)チャネルおよびTRPM8について解説します。

皮膚には、体温を維持するために環境温を感受する温度受容器官が備わっており、温度受容器として働いているのが、表皮顆粒層に分布するケラチノサイト(角化細胞)および真皮から表皮に分布する自由神経終末です(文献9:2012;文献10:2013)

皮膚の温度受容器官

ケラチノサイトおよび自由神経終末では、温度感受性TRPチャネルと呼ばれる陽イオンチャネル受容体が細胞膜に存在しており、これらが温度受容の一端を担っていると考えられています(文献9:2012;文献10:2013)

温度感受性TRPチャネルとは、温度だけでなく多くの化学的・物理的刺激を感受する刺激受容体であり、以下の図をみるとわかりやすいと思いますが、

温度感受性TRPチャネル

活性化温度域、発現部位などにより9つのチャネルが存在し、主に28℃以下の冷たい温度領域および43℃以上の熱い温度領域で活性化する温度感受性TRPチャネルは自由神経終末で発現、30-40℃の温かい温度領域で活性化する温度感受性TRPチャネルはケラチノサイトで発現すると報告されています(文献10:2013)

TRPM8は、主に自由神経終末に存在する8-28℃の冷刺激およびメントールによって活性化する冷刺激受容体であることが明らかにされており(文献11:2004)、メントールを皮膚に接触させると活性化温度閾値が上昇することによって常温に近い温度で冷感が引き起こされるため、冷涼感が付与されます(文献12:2017)

ただし、この冷涼感はメントールによってTRPM8が活性化したことによって引き起こされたものであり、実際に温度が低下したわけではありません。

このような背景から、一般的な清涼化粧品にはメントール(l-メントール)が最も汎用されており(文献3:2015)、またメントールと同様にのスーッとする清涼感を付与する効果を有したカンフルが併用されることが多いです。

メントールは、昇華性(∗6)および揮発性(∗7)を有していることから、皮膚に塗布した場合に効果持続性に欠けますが、シクロデキストリンでメントールを包接することで、シクロデキストリンからメントールが徐々に放出されるようになり、冷涼感が持続するようになるため(文献13:2012)、メントールとシクロデキストリンが併用されている場合はメントールの冷涼感持続目的で配合されている可能性が考えられます。

∗6 昇華性とは、液体を経ずに固体から気体へ相転移する現象のことです。

∗7 揮発性とは、液体が蒸発しやすい性質のことです。

l-メントールは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 7.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 7.0
粘膜に使用されることがある化粧品 1.0

l-メントールおよびdl-メントールは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0 dl-メントール及びl-メントールとして合計。
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

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メントールの安全性(刺激性・アレルギー)について

メントールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:8%濃度以下においてほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):8%濃度以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-ごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 0.2%および2%メントールの冷感作用を評価した臨床試験において5%および10%メントールの皮膚適用は強い灼熱感を誘発し、また刺激性も確認された(Eccles review,1994)

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献2:2008)によると、

  • [ヒト試験] 5人の被検者に8%メントールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1973)
  • [ヒト試験] 24人の被検者に8%l-メントールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1974)
  • [ヒト試験] 133人の被検者に0.05%-0.5%メントールを含むクリームを24-48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分後に皮膚刺激性を評価したところ、2人の被検者にわずかな紅斑がみられたが、他の被検者は皮膚刺激を示さなかった(Takenaka et al,1986)
  • [ヒト試験] 9人の被検者に30%l-メントールを含む水とエタノール混合液2.5mLを数分間閉塞パッチ適用したところ、この試験物質は感覚刺激(灼熱感、冷感および主観的なチクチク刺すような刺激感)を誘発した(Green and Shaffer,1992)

と記載されています。

l-メントールは適度であれば快適な清涼感を付与する一方で、多すぎると灼熱感やヒリヒリ感といった不快刺激を感じることが知られており、またl-メントールに対する感受性の違いや清涼感の感じ方の違いに個人差があることが明らかにされているため(文献3:2015)一般に8%濃度以下において皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 健常皮膚を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献2:2008)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に8%l-メントールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1973)
  • [ヒト試験] 24人の被検者に8%l-メントールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1974)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して8%濃度において皮膚感作なしと報告されていることから、一般に8%濃度以下において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献2:2008)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する220人の患者に1%l-メントールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、2人(0.9%)の患者に陽性反応がみられた(Japan Contact Dermatitis Research Group,1981)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する877人の患者に5%メントールを含むパラフィンを対象にパッチテストを実施したところ、8人(1%)の患者に陽性反応がみられた(Rudzki and Kleniewska,1971)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する1,070人の患者に5%メントールを含むパラフィンを対象にパッチテストを実施したところ、9人(0.9%)の患者に陽性反応がみられた(Rudzki and Kleniewska,1971)
  • [ヒト試験] 接触皮膚炎を有する1,200人の患者に5%メントールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、1人(0.08%)の患者に陽性反応がみられた(Santucci et al,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、濃度に関係なくごくまれに皮膚感作反応が報告されていることから、皮膚炎を有する場合においてごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

メントールは温冷感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:温冷感成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Mentha Piperita (Peppermint) Oil, Mentha Piperita (Peppermint) Leaf Extract, Mentha Piperita (Peppermint) Leaf, and Mentha Piperita (Peppermint) Leaf Water」International Journal of Toxicology(20)(3_Suppl),61-73.
  2. Research Institute for Fragrance Materials(2008)「A toxicologic and dermatologic assessment of cyclic and non-cyclic terpene alcohols when used as fragrance ingredients」Food and Chemical Toxicology(46)(11),S1-S71.
  3. 嶋田 格, 他(2015)「心地よい清涼感の実現に向けた評価方法」オレオサイエンス(15)(9),415-421.
  4. 鈴木 洋(2011)「ペパーミント」カラー版健康食品・サプリメントの事典,167.
  5. 大木 道則, 他(1994)「l-メントール」化学辞典,1445.
  6. 池田 剛(2017)「モノテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
  7. 福井 寛(2010)「化粧品におけるにおい・香り」におい・かおり環境学会誌(41)(2),110-118.
  8. 鈴木 一成(2012)「メントール」化粧品成分用語事典2012,404-405.
  9. 富永 真琴(2012)「刺激感受性:温度感受性TRPチャネルの生理機能」日本香粧品学会誌(36)(4),296-302.
  10. 富永 真琴(2013)「温度感受性TRPチャネル」Science of Kampo Medicine(37)(3),164-175.
  11. 富永 真琴(2004)「温度受容の分子機構」日本薬理学雑誌(124)(4),219-227.
  12. 鈴木 喜郎(2017)「TRPM8」温度生物学ハンドブック,10.
  13. 寺尾 啓二(2012)「シクロデキストリンの食品・化粧品への応用」化学と教育(60)(1),18-21.

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