サリチル酸メチルとは…成分効果と毒性を解説

冷感
サリチル酸メチル
[化粧品成分表示名称]
・サリチル酸メチル

[医薬部外品表示名称]
・サリチル酸メチル

化学構造的にβ-ヒドロキシ酸の一種であるサリチル酸のカルボキシル基(-COOH)にメチル基(-CH3)が結合したサリチル酸のメチルエステルであり、メントール様の清涼感のある芳香をもつ分子量152.15のサリチル酸誘導体です(文献4:1994)

化粧品以外の主な用途としては、医薬品分野において消炎鎮痛剤として湿布やスプレーなどに、バス・トイレタリー分野において歯茎の炎症を抑える目的または香料として歯磨剤に、消炎鎮痛剤として入浴剤などに使用されています(文献5:2011;文献6:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、頭皮ケア製品などに使用されています。

清涼感付与効果

清涼感付与効果に関しては、皮膚に浸透してメントール様の清涼感を付与する効果を有していることから(文献7:2012;文献8:2015)、一般的に単体または同様の効果をもつメントールと併用してスキンケア化粧品、ボディケア製品などに使用されています。

効果・作用についての補足

サリチル酸メチルは、医薬品として抗炎症および鎮痛剤として湿布などの主成分に用いられ、一般的に抗炎症・鎮痛剤として知られていますが、化粧品への処方事例としては清涼感を目的に単体またはメントールと併用して微量使用されている事例しか確認できなかったため、現時点では抗炎症・鎮痛作用としては記載していません。

サリチル酸メチルは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 5.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 5.0
粘膜に使用されることがある化粧品 0.10

サリチル酸メチルは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.10 すべてのサリチル酸、その塩及びその誘導体をサリチル酸に換算して、サリチル酸として合計。
紫外線吸収剤の合計は10以下とする。
育毛剤 0.10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.10
薬用口唇類 0.10
薬用歯みがき類 0.10
浴用剤 0.10

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-2000年および2018-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

サリチル酸メチルの配合製品数と配合量の調査(1998-2000年および2018-2019年)

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サリチル酸メチルの安全性(刺激性・アレルギー)について

サリチル酸メチルの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):5%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:重度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2019)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに1%,5%,10%および25%サリチル酸メチルを吹くエタノール/フタル酸ジエチル混合液0.5mLを4時間半閉塞パッチ適用し、パッチ除去7日目まで皮膚刺激性を評価したところ、25%濃度においてパッチ除去24-48時間で1匹に非常にわずかな紅斑がみられたが、25%以下濃度においてそれ以外に皮膚反応は観察されなかった。この試験物質はわずかな刺激剤に分類された(European Chemicals Agency,2018)
  • [動物試験] 8匹のモルモットに3%サリチル酸メチルを含む製剤0.025mLを24時間開放パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、2匹に軽度の紅斑がみられた(G Klecak et al,1977)
  • [動物試験] 6匹のモルモットに3%サリチル酸メチルを含む製剤0.1mLを21日間毎日開放パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は最小限の皮膚刺激剤であった(G Klecak et al,1977)

名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科のパッチテストデータ(文献3:1984)によると、

  • [ヒト試験] 健常な皮膚を有する30人の被検者に2%サリチル酸メチルを含むワセリンを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1,24および48時間後に皮膚刺激性を評価したところ、2人の被検者に軽微な刺激反応が認められた

と記載されています。

サリチル酸メチルは医薬成分であることから化粧品および医薬部外品に配合上限が定められており、試験データをみるかぎり、非刺激-軽度の刺激が報告されていることから、一般に5%濃度以下において皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹または接触性皮膚炎を有する20人の患者に3.75%-67%サリチル酸メチルを含むオイルまたは軟膏を閉塞パッチ適用したところ、67%のオイルで8人に、40%のオイルで2人に皮膚刺激が生じた。38%,15%および3.75%サリチル酸メチルを含むオイルおよび軟膏はいずれも皮膚刺激を生じなかった(Lee and Lam,1990)

と記載されています。

サリチル酸メチルは医薬成分であることから化粧品および医薬部外品に配合上限が定められており、試験データをみるかぎり、5%濃度以下において皮膚刺激なしと報告されていることから、一般に皮膚炎を有する場合において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2019)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.25%サリチル酸メチルを含む変性アルコール0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて点眼7日目まで眼刺激性を評価したところ、3匹すべてのウサギに結膜浮腫と流涙をともなう重度の結膜刺激が観察され、これらの眼刺激反応は7日目には消失した(A Lapczynski,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、重度の眼刺激が報告されていることから、一般に眼刺激性は重度の眼刺激を引き起こすと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003;文献2:2019)によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者に8%サリチル酸メチルを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も感作反応を示さなかった(Opdyke,1978)
  • [ヒト試験] 39人の被検者に1.25%サリチル酸メチルを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応は観察されなかった(A Lapczynski et al,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

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サリチル酸メチルは温冷感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:温冷感成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2003)「Safety Assessment of Salicylic Acid, Butyloctyl Salicylate, Calcium Salicylate, C12–15 Alkyl Salicylate, Capryloyl Salicylic Acid, Hexyldodecyl Salicylate, Isocetyl Salicylate, Isodecyl Salicylate, Magnesium Salicylate, MEA-Salicylate, Ethylhexyl Salicylate, Potassium Salicylate, Methyl Salicylate, Myristyl Salicylate, Sodium Salicylate, TEA-Salicylate, and Tridecyl Salicylate」International Journal of Toxicology(22)(3_Suppl),1-108.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2019)「Amended Safety Assessment of Salicylic Acid and Salicylates as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  3. 早川 律子(1984)「医療用形成パップ剤の皮膚刺激性」皮膚(26)(4),758-763.
  4. 大木 道則, 他(1994)「サリチル酸メチル」化学辞典,518.
  5. 槌間 聡(2011)「サリチル酸とサリチル酸誘導体の合成と性質」化学と教育(59)(8),418-421.
  6. 嶋田 朗(2011)「現代のサリチル酸メチルの製造法」化学と教育(59)(8),422-425.
  7. 鈴木 一成(2012)「サリチル酸メチル」化粧品成分用語事典2012,411-412.
  8. 宇山 侊男, 他(2015)「サリチル酸メチル」化粧品成分ガイド 第6版,114.

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