ステアリン酸イヌリンの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | ステアリン酸イヌリン |
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医薬部外品表示名 | ステアリン酸イヌリン |
INCI名 | Stearoyl Inulin |
配合目的 | 増粘、乳化安定化 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるステアリン酸クロリドとイヌリンとの縮合物です[1]。
1.2. 物性・性状
ステアリン酸イヌリンの物性・性状は、
状態 | 白-淡黄褐色の粉末または粒状の物質 |
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溶解性 | キシレンに可溶、水、エタノールに難溶 |
このように報告されています[2]。
2. 化粧品としての配合目的
- 非水系増粘
- 乳化安定化
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、クレンジング製品などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 非水系増粘
非水系増粘に関しては、ステアリン酸イヌリンは炭化水素、エステル、植物油脂などの油性成分に対して非常に硬度の高いゲルを形成することから、硬いゲルの形成目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、クレンジング製品などに汎用されています[3a][4a][5a]。
2.2. 乳化安定化
乳化安定化に関しては、ステアリン酸イヌリンは揮発性シリコーンを多量に配合したW/O型(油中水滴型)エマルションにおいて、経時的な油の分離がみられる場合に油相に加えて増粘させることにより乳化系を安定化できることから、乳化安定性を高める目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品などに汎用されています[3b][4b][5b]。
3. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)。
∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6a]によると、
- [動物試験] 6匹のウサギを用いてステアリン酸イヌリンを対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、この試験験物質は非刺激剤であった(Chiba Flour Milling Co,2010)
- [動物試験] モルモットを用いてステアリン酸イヌリンを対象にAPT皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は軽度の皮膚刺激剤および非常に弱い皮膚感作剤に分類された(Chiba Flour Milling Co,2010)
このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
皮膚感作性については、試験データをみるかぎり非常に弱い皮膚感作剤であると報告されているため、一般にほとんどないと考えられます。
4.2. 眼刺激性
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6b]によると、
- [動物試験] 6匹のウサギを用いてパルミチン酸デキストリンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、この試験物質は実質的に非刺激剤であった(Chiba Flour Milling Co,2010)
このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。
5. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2013)「ステアリン酸イヌリン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,561.
- ⌃千葉製粉株式会社(2020)「レオパールISL2」安全データシート.
- ⌃abChiba Flour Milling Co., Ltd.(2010)「Rheopearl ISL2」Product Sheet.
- ⌃abChiba Flour Milling Co., Ltd.(2016)「Rheopearl Series」Product List.
- ⌃ab鈴木 挙直(2013)「糖脂肪酸エステル系オイルゲル化剤について」オレオサイエンス(13)(2),73-77. DOI:10.5650/oleoscience.13.73.
- ⌃abW.F. Bergfeld, et al(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics(∗3)」, 2022年11月17日アクセス.
∗3 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。