ローカストビーンガムの基本情報・配合目的・安全性

ローカストビーンガム

化粧品表示名称 ローカストビーンガム
医薬部外品表示名称 ローカストビーンガム
化粧品国際的表示名称(INCI名) Ceratonia Siliqua (Carob) Gum
配合目的 増粘 など

1. 基本情報

1.1. 定義

マメ科植物イナゴマメ(学名:Ceratonia siliqua 英名:carob)の子葉部から得られる種子粘質物であり、以下の化学式で表される4個のマンノースを直鎖状主鎖とし、側鎖に1個のガラクトースが結合した構造の繰り返し単位で構成されたガラクトマンナン(多糖)(∗1)かつ植物系水溶性高分子です[1a][2a]

∗1 ガラクトマンナン(galactomannan)とは、多糖類の一群で、マンノースからなる直線状主鎖にガラクトースがα1,6結合結合したものをいいます。マンノースとガラクトースの比率は由来により異なり、ローカストビーンガムのマンノースとガラクトースの比率は4:1です。

ローカストビーンガム

1.2. 分布

ローカストビーンガムは、自然界において乾燥した気温の高い地中海沿岸にのみ生育するマメ科常緑樹であるイナゴマメ(学名:Ceratonia siliqua)の種子に存在しています[2b]

1.3. 化粧品以外の主な用途

ローカストビーンガムの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 増粘安定目的でドレッシングやアイスクリームなどに、キサンタンガムやカラギナンなど他の増粘剤と混ぜると相乗効果により強いゲル強度をつくることができるため、他の増粘剤と併用してゲル化目的でゼリー、プリン、コンニャクなどに用いられています[3]
医薬品 粘稠目的の医薬品添加剤として経口剤に用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性増粘

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、ボディソープ製品、洗顔料などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性増粘

親水性増粘に関しては、ローカストビーンガムは非常に高い保水性をもち、その水溶液はシュードプラスチック性(∗2)を示し、糸引き性がなくすっきりとした粘性を示すといった特徴から、粘度を調整し粘度あるいは製品の安定性を保つ目的で様々な製品に汎用されています[1b][5]

∗2 シュードプラスチック性とは、加える力を強くすることで粘度が低下する特性のことで、たとえばシュードプラスチック性を有するマヨネーズは、保管している状態(力が加わっていない状態)では液が動かず、チューブを押す(力を加える)と粘度が低下して液が絞り出されます。また口に入れると咀嚼による力が加えられるので、口の中では粘度を感じにくくなります。

粘度に関しては、DSP五協フードによると以下のグラフのように、

天然系水溶性高分子の濃度と粘度の関係

ローカストビーンガムは、同じガラクトマンナンであるグアーガムと同様に濃度依存的な粘度の増加を示します[6]

また、ローカストビーンガムの最も特徴的な性質として、単独ではゲル化しないものの、他の多糖であるカラギーナンキサンタンガムなどを併用することで弾力のあるゲルを形成することが知られていることから[2c]、ローカストビーンガムとカラギーナンやキサンタンガムが併用されている場合はこれらによるゲル化目的で配合されている可能性が考えられます。

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ローカストビーンガムの配合製品数と配合量の調査結果(2011年)

4. 安全性評価

ローカストビーンガムの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7a]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚に食塩水で湿らせたローカストビーンガム0.5gを4時間半閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいて4.5,24,48および72時間後に皮膚刺激性を0.0-8.0のスケールで評価したところ、皮膚刺激スコアは0.04であり、最小限の皮膚刺激であった(J.D. McCarty,1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり最小限の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7b]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼にローカストビーンガム0.1gを適用し、3匹のウサギは適用後に眼をすすぎ、6匹はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらず最小限の眼刺激剤に分類された(J.D. McCarty,1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7c]によると、

– 個別事例 –

  • [個別事例] ジャム工場で働く48歳の男性がローカストビーンガムとグァーガムに曝露された後に鼻炎や眼の炎症および喘息を訴えたため、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナンの混合物について皮膚感作テストを行ったところ陰性でした。喘息はガムに触れることを止めた後には起こりませんでしたが、一重盲検法で15分間イナゴマメの粉末を調節したところ、咳、鼻炎、およびくしゃみが発生したため、最終的にグァーガムとローカストビーンガムが陽性であった(van der Brempt X,1992)
  • [個別事例] 59歳の女性がデザートを食べた数分後に唇の腫れに気づき、また彼女はデザートを準備する粉末を扱う間に鼻水やくしゃみの症状を訴えたため、皮膚感作試験を行ったところ、ローカストビーンガムに陽性反応を示し、生のローカストビーンガムで14mmのじんま疹、ゆでたローカストビーンガムで9mmのじんま疹が報告された(E. Alarcon,2011)
  • [個別事例] アレルギー性鼻炎を有する30歳の男性はローカストビーンを処理すると定期的に喘息を発症した。ローカストビーンに対するプリックテストおよびRAST(IgEの検査法のひとつ)を実施したところ、どちらも陽性であった(A. Scoditti et al,1996)
  • [個別事例] 8ヶ月の幼児に増粘剤としてローカストビーンガムを含むARミルクを与えたところ、じんま疹と嘔吐が報告された(F. Savino et al,1999)

このように記載されており、主に食品における個別事例のみではありますが、1992-2011年の間で4例の感作事例が報告されています。

化粧品においては、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ローカストビーンガム」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1095.
  2. abc唐川 敦(1999)「植物性多糖類」Fragrance Journal臨時増刊(16),40-48.
  3. 樋口 彰, 他(2019)「カロブビーンガム」食品添加物事典 新訂第二版,86-87.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ローカストビーンガム」医薬品添加物事典2021,740.
  5. 南口 利一(1998)「増粘安定剤としての多糖類の香粧品への応用」Fragrance Journal(26)(7),48-56.
  6. “多糖類.com”(-)「ローカストビーンガム」,2021年9月22日アクセス.
  7. abcW. Johnson, et al(2015)「Safety Assessment of Galactomannans as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(34)(1_Suppl),35S-65S. DOI:10.1177/1091581815586798.

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