(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | (ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマー |
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医薬部外品表示名 | ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、ジメチル/ステアロキシポリシロキサン |
INCI名 | Stearoxymethicone/Dimethicone Copolymer |
配合目的 | 増粘、感触改良、光沢 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるジメチコンのメチル基(-CH3)の一部をステアロキシ基(C18H37)で置換した構造のシロキサン共重合体(∗1)(∗2)(アルコール変性シリコーン油)です[1]。
∗1 シロキサン(siloxane)とは、ケイ素(元素記号:Si)と酸素(元素記号:O)を骨格とする化合物で、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を持つものの総称です。
∗2 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーはジメチルシロキサンとメチルステアロキシシロキサンの共重合体です。
1.2. 物性・性状
(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーの物性・性状は(∗3)(∗4)、
∗3 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。また比重とは固体や液体においては密度を意味し、標準密度1より大きければ水に沈み(水より重い)、1より小さければ水に浮くことを意味します。
∗4 屈折とは光の速度が変化して進行方向が変わる現象のことで、屈折率は「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表されます。光の伝播速度は物質により異なり、また同一の物質でも波長により異なるため屈折率も異なりますが、化粧品において重要なのは空気の屈折率を1とした場合の屈折率差が高い界面ほど反射率が大きいということであり、平滑性をもつ表面であれば光沢が高く、ツヤがでます(屈折率の例として水は1.33、エタノールは1.36、パラフィンは1.48)。
状態 | 融点(℃) | 比重(22℃) | 屈折率(22℃) |
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液体 | 35-45 | 0.910-0.950 | 1.42-1.44 |
固体 | 50-55 | 0.880-0.920 | – |
このように報告されています[2a]。
2. 化粧品としての配合目的
- 非水系増粘
- 密着性向上およびベタつき感軽減による感触改良
- 光沢付与
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 非水系増粘
非水系増粘に関しては、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーは結合度を調整することにより目的の融点を設定することが可能であり、目的の融点に設定することにより油性成分の粘度を上げて粘度、顔料の分散性、乳化物の安定性を保つ目的で主にメイクアップ製品や化粧下地製品に使用されています[2b]。
2.2. 密着性向上およびベタつき感軽減による感触改良
密着性向上およびベタつき感軽減による感触改良に関しては、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーはシリコーンのさらっとしたべたつかない感触とステアリルアルコールの粘稠性(∗5)といった特徴を有しており、肌に対する密着性の改善とべたつかない肌触りを両立させる目的で主にメイクアップ製品や化粧下地製品に使用されています[2c]。
∗5 粘稠性(ねんちょうせい)とは、粘り(ねばり)のことであり、クリームや油性基剤の固さ・柔らかさを示します。粘稠性が高いほど固くなり、また流動性が低く(伸びにくく)なります。
2.3. 光沢付与
光沢付与に関しては、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマーは屈折率が高く、光沢・ツヤを調整する目的で主にメイクアップ製品などに使用されています[2d]。
3. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗6)。
∗6 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。