セレシンの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名称 セレシン
医薬部外品表示名称 セレシン
慣用名称 セレシンワックス
化粧品国際的表示名称(INCI名) Ceresin
配合目的 固化・増粘 など

1. 基本情報

1.1. 定義

オゾケライトを精製して得られる、化学的に主に炭素数29-35(C29-35の直鎖状炭化水素から成り一部に側鎖状炭化水素を含むロウ状の炭化水素の混合物(鉱物系または石油系炭化水素)(∗1)です[1a][2][3]

∗1 石油産地近辺で産する地ロウと称する鉱物から得られるものは鉱物系炭化水素、石油の分留から得られるものは石油系炭化水素に分類されます。

1.2. 物性・性状

セレシンの物性・性状は(∗2)

∗2 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

状態 融点(℃) 溶解性
微結晶性の塊 53-79 水に不溶、エタノールに難溶、エーテルに可溶

このように報告されています[4a][5a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

セレシンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 チューインガムに柔軟性を付与するとともに食感を改良する目的でガムベースに用いられています[6]
医薬品 基剤目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[7]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 固化
  • 非水系増粘

主にこれらの目的で、スティック系メイクアップ製品、ペンシル系メイクアップ製品、その他のメイクアップ製品、化粧下地製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 固化

固化に関しては、セレシンは微結晶性の直鎖と分岐鎖パラフィンの混合物であり、直鎖炭化水素を主成分としたパラフィンと比較して硬度、融点などが高く、液状の油性成分と加熱混合した後に冷却することによって以下の図のように、

固化のメカニズム

板状のワックス結晶同士が物理的な噛み合わせで結合したカードハウス構造(∗3)を形成し、その結果として油性成分をはじめ着色料や粉体などが各噛み合わせの内部空間に溜まり、物理的に流動性を失うことによって固形状になることから、油性成分と混合し油性固形基剤の形成およびその耐温性を高める目的でスティック系製品やペンシル系製品を中心に汎用されています[8][9][10][11]

∗3 カードハウス構造とは、トランプのカードをタワーをつくるように組み合わせた構造のことをいい、ワックス結晶の結合は実際にはトランプタワーのような規則的な構造ではありませんが、物理的な隙間をつくる構造が類似していることから、このワックス結合の構造もカードハウス構造とよばれています。

2.2. 非水系増粘

非水系増粘に関しては、セレシンは粘性をもつことから、粘度を調整し粘度あるいは乳化物の安定性を保つ目的で主にクリーム系化粧品などに使用されています[1b][5c]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

セレシンの配合製品数と配合量の調査結果(1984年および2002-2003年)

4. 安全性評価

セレシンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4b]によると、

  • [ヒト試験] 102名の被検者に2%セレシンを含む口紅製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を解放および閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は実質的に皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 1,078名の被検者に2%セレシンを含む口紅製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を解放および閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
  • [ヒト試験] 98名の被検者に6%ミツロウと6%セレシンを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験製剤は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Research Testing Labs,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4c]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに2%セレシンを含む口紅製品を適用し、適用後72時間まで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアはいずれも0.0であり、この試験製品は眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に6%セレシンを含むアイクリーム0.1mLを適用し、適用から7日後まで眼刺激性を評価したところ、適用1,24,48および72時間後までは結膜で軽度の刺激がみられたが、その後炎症はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に6%セレシンを含むアイクリーム0.1mLを適用し、適用から7日後まで眼刺激性を評価したところ、適用1時間で軽度の虹彩刺激が、48時間で軽度の結膜刺激がみられたが、その後炎症はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4d]によると、

  • [ヒト試験] 102名の被検者に2%セレシンを含む口紅製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を解放および閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 1,078名の被検者に2%セレシンを含む口紅製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を解放および閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して光感作なしと報告されているため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「セレシン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,620.
  2. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブックⅠ,25-31.
  3. エイチ・ホルスタイン株式会社(2015)「ABWax Ozokerite – ABWax Ceresin」ABWax Lineカタログ,22-23.
  4. abcdR.L. Elder(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Fossil and Synthetic Waxes」Journal of the American College of Toxicology(3)(3),43-99. DOI:10.3109/10915818409010516.
  5. abc大石 孔(1983)「オゾケライトとセレシン」ワックスの性質と応用,49-51.
  6. 樋口 彰, 他(2019)「オゾケライト」食品添加物事典 新訂第二版,63.
  7. 日本医薬品添加剤協会(2021)「セレシン」医薬品添加物事典2021,357.
  8. 柴田 雅史(2012)「硬いスティックにする成分」おもしろサイエンス リップ化粧品の科学,50-57.
  9. 柴田 雅史(2017)「ワックスゲルの物性制御と化粧品への応用」オレオサイエンス(17)(12),633-642. DOI:10.5650/oleoscience.17.633.
  10. 柴田 雅史(2019)「油性ゲルの物性制御と化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(53)(1),2-8. DOI:10.5107/sccj.53.2.
  11. 田村 健夫・廣田 博(2001)「炭化水素」香粧品科学 理論と実際 第4版,108-112.

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