水添ロジン酸ペンタエリスリチルの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 水添ロジン酸ペンタエリスリチル |
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INCI名 | Pentaerythrityl Hydrogenated Rosinate |
配合目的 | 増粘 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるペンタエリスリトールのヒドロキシ基(-OH)にロジン酸のカルボキシ基(-COOH)を脱水縮合(∗1)したエステルです[1a]。
∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。
1.2. 物性・性状
水添ロジン酸ペンタエリスリチルの物性・性状は(∗2)、
∗2 融点は完全に液体になった状態の温度を指しますが、軟化点とはガラスや樹脂などの物質の温度が上昇し、変形し始めるときの温度のことをいいます。そのため、同じ物質でも軟化点より融点のほうが高くなります。
状態 | 琥珀色の固体 |
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軟化点(℃) | 98 |
溶解性 | 炭化水素など非極性液体に可溶 |
2. 化粧品としての配合目的
- 非水系増粘
主にこれらの目的で、マスカラ製品、リップ系メイクアップ製品、その他のメイクアップ製品、ヘアスタイリング製品などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 非水系増粘
非水系増粘に関しては、水添ロジン酸ペンタエリスリチルは酸化安定性や色安定性に優れた熱可塑性樹脂であり、軟化点が高く、炭化水素など非極性油に溶けて増粘し、その液性は強い粘稠性を示すことから、付着性を高める目的でマスカラ製品、リップ系メイクアップ製品、その他のメイクアップ製品などに汎用されています[1b][3b]。
3. 混合原料としての配合目的
水添ロジン酸ペンタエリスリチルは混合原料が開発されており、水添ロジン酸ペンタエリスリチルと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | GEL-ISOD |
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構成成分 | 水添ロジン酸ペンタエリスリチル、イソステアリン酸オクチルドデシル |
特徴 | 高い屈折率および優れた粘性をもつことから、付着性の改善および光沢を付与する油性原料 |
4. 安全性評価
- 15年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性
進栄化学の安全性データ[4]によると、
- [ヒト試験] 9名の被検者に水添ロジン酸ペンタエリスリチルおよびイソステアリン酸オクチルドデシル混合物を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび48時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚反応はみられず、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった
このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)
15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「水添ロジン酸ペンタエリスリチル」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,540.
- ⌃Eastman Chemical Company(2015)「Foral 105-E CG Hydrogenated Rosinate」Safety Data Sheet.
- ⌃abSynthomer PLC(2022)「Foral 105-E CG Hydrogenated Rosinate」Technical Data Sheet.
- ⌃進栄化学株式会社(2006)「水素添加ロジンのアルコールエステルを含有する安定な液状組成物およびそれを含有する化粧料」特開2006-316003.