硫酸Naの基本情報・配合目的・安全性

硫酸Na

化粧品表示名 硫酸Na
医薬部外品表示名 硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム(乾燥)、乾燥硫酸ナトリウム
部外品表示簡略名 硫酸Na、乾燥硫酸Na
INCI名 Sodium Sulfate
配合目的 増粘、保温 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される硫酸(H2SO4のナトリウム塩です[1a]

硫酸Na

1.2. 物性・性状

硫酸Naの物性・性状は、

状態 結晶または粉末
溶解性 水に可溶

このように報告されています[2][3a]

1.3. 分布

硫酸Naは、自然界において米国、カナダ、中国、ロシアなどの砂漠地帯に産出し、塩水湖の水中にも含まれています[3b]

また、温泉の一種であるナトリウム-硫酸塩泉(旧称:芒硝泉)の主成分として存在しています[4a]

ナトリウム-硫酸塩泉は、単純温泉と同様に抹消部の血行を促進し、高血圧症や外傷によく、また飲用では胆汁の運動や腸運動が活発になることから、胆道疾患や弛緩性便秘にいいことが知られており、国内においては北海道のニセコ、宮城県の作並温泉、福島県の飯坂温泉、石川県の山代温泉、島根県の玉造温泉などに存在しています[4b]

1.4. 化粧品以外の主な用途

硫酸Naの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 製造過程においてかんすいの成分として、また水のミネラル調整や製剤の希釈剤として用いられています[3c]
医薬品 便秘症の浸透圧性下剤(塩類下剤)として用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性増粘
  • 保温作用

主にこれらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、入浴剤、ボディスクラブ製品、洗顔料、アウトバストリートメント製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性増粘

親水性増粘に関しては、硫酸Naは電解質無機塩であり、一定量までは添加量に比例して増粘することから、粘度を調整する目的で主にシャンプー製品、ボディソープ製品などの洗浄系製品やボディスクラブ製品などに使用されています[1b][6]

2.2. 保温作用

保温作用に関しては、硫酸ナトリウム温水浴が保温効果を発揮することは以前より知られており、この保温効果の発現メカニズムは硫酸Naの皮膚表面の被覆あるいは皮下組織のわずかな循環刺激による血流量の増加であることが示唆されています[7][8]

このような背景から、主に保温目的で入浴剤に使用されています[9]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2000年および2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

硫酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2000年および2015-2016年)

4. 安全性評価

硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 19名の被検者に9.7%硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、1名の被検者はほとんど知覚できない反応を示したが、他の18名は皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 13名の被検者に0.1168%硫酸Naを含む固形石鹸フレーク溶液の24時間閉塞パッチを3回適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、11名の被検者に刺激スコア0.5-1.0が認められ、これらのうち7名は3回の適用すべてに反応し、2名は2および3回目の適用に反応し、残りの2名は3回目の適用のみ反応した。全体の平均刺激スコアは0.410であり、この試験物質は軽度の皮膚刺激剤に分類された(Hill Top Research Inc,1989)
  • [ヒト試験] 20名の被検者に1.8%硫酸Naを含むバブルバスパウダーを4日間連続でそれぞれ4時間パッチ適用したところ、この試験材料の適用濃度は予想される一般使用レベルの200倍であった。4回目の適用後に部位をスコアリングしたところ、13名の被検者は紅斑は認められず、乾燥も生じなかったが、軽度の紅斑および乾燥が7名および8名の被検者に認められた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に炭酸ナトリウムと硫酸Naの混合物(1:1)を0.01,0.03および0.1mL注入し、Draize法に基づいて注入1,2,3,4,7および14日後に眼刺激性を0-110のスケールで評価したところ、眼刺激スコアは0.01,0.03および0.1mLでそれぞれ11,17および36であった。これらの刺激は正常に戻るまで4-21日を要し、この試験物質は中程度の眼刺激剤に分類された(Griffith et al,1980)

このように記載されており、試験データをみるかぎり中程度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-中程度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、目領域に使用される製品について報告されている最大濃度は2016年時点で0.0064%であり、眼刺激を引き起こす可能性は非常に低いと推測されます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10c]によると、

  • [ヒト試験] 61名の被検者に1.01%硫酸Na水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において1名の被検者に軽度の紅斑がみられたが、チャレンジ期間においてはいずれの被検者においても皮膚反応はみられず、この試験物質は皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「硫酸Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1080.
  2. 大木 道則, 他(1989)「硫酸ナトリウム」化学大辞典,2496.
  3. abc樋口 彰, 他(2019)「硫酸ナトリウム」食品添加物事典 新訂第二版,385.
  4. ab阿岸 祐幸(2012)「硫酸塩泉」温泉の百科事典,302.
  5. 浦部 晶夫, 他(2021)「硫酸ナトリウム配合」今日の治療薬2021:解説と便覧,806.
  6. 河野 隆行・橋本 茂(1992)「シャンプーに用いられる添加剤」最新化粧品科学 改訂増補(2),185-192.
  7. 古元 嘉昭, 他(1990)「硫酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム浴の効果(第3報)」日本温泉気候物理医学会雑誌(53)(3),133-136. DOI:10.11390/onki1962.53.133.
  8. 白倉 卓夫, 他(1995)「硫酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム温水浴の体表温, 皮膚血流量および血圧の日内変化におよぼす効果に関する研究」日本温泉気候物理医学会雑誌(59)(4),230-235. DOI:10.11390/onki1962.59.230.
  9. 河野 隆行・橋本 茂(1992)「浴剤」最新化粧品科学 改訂増補(2),198-205.
  10. abcF.A. Andersen(2000)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Sulfate」International Journal of Toxicology(19)(1_suppl),77-87.

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