PEG-90Mの基本情報・配合目的・安全性

PEG-90M

化粧品表示名 PEG-90M
医薬部外品表示名 高重合ポリエチレングリコール
部外品表示簡略名 高重合PEG
INCI名 PEG-90M
配合目的 増粘 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、酸化エチレンの重合体(∗1)です[1a][2]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指します。

PEG-90M

PEGは、化粧品表示名においては「PEG-数字」の数字部分に平均重合度が、医薬部外品表示名においては「ポリエチレングリコール数字」の数字部分に平均分子量が表示されますが(∗2)、医薬部外品表示名は平均分子量20000以上はすべて「高重合ポリエチレングリコール」と表示されます。

∗2 一例として化粧品表示名「PEG-8」の場合は、平均重合度は8、医薬部外品表示名は「ポリエチレングリコール400」で平均分子量400です。

1.2. 物性

PEG(polyethylene glycol:ポリエチレングリコール)の物性は(∗3)(∗4)

∗3 PEGは医薬部外品表示名の数値がそのまま平均分子量を表しており、表の「PEG」における数字は、性質を反映してわかりやすいことから医薬部外品表示名であるポリエチレングリコールの数字部分を記載しています。

∗4 表中の「1500(ポリエチレングリコール1500)」は「PEG-6」と「PEG-32」の混合物であることから、物性が他とは異なります。

PEG 平均分子量 水酸基価(∗5) 粘度(mm²/s) 吸湿性
300 285-315 356-393 5.0-6.2


4000以上はほとんどなし

400 380-420 267-295 6.0-8.0
600 570-630 178-196 10-12
1000 950-1050 107-118 17-20
1500 500-600 187-224 13-18
1540 1300-1600 70.0-86.2 25-32
2000 1800-2200 51.0-62.0 36-46
4000 2700-3400 33.0-41.0 75-85
6000 7400-9000 12.5-15.2 700-900
20000 18000-25000 5.2-6.2 11500-15000

∗5 水酸基価とは、試料中の水酸基(ヒドロキシ基:-OH)の含有量を表す指標であり、分子中に水酸基の占める割合いが多いほど水酸基価は大きくなります。ポリエチレングリコールにおいては水酸基価が大きくなるにつれて保湿性・吸湿性および水への溶解性が高くなり、一方で水酸基価が小さいほど保湿性・吸湿性および水への溶解性は低くなります[3]

このように報告されています[4]

「ポリエチレングリコール1500」は「PEG-6」と「PEG-32」の等量混合物であるため例外となりますが、PEGは分子量の増加とともに水酸基価および吸湿性が低下し、一方で粘度は増加する性質を示します。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性増粘

主にこれらの目的で、コンディショナー製品、トリートメント製品、洗顔料、洗顔石鹸、ヘアスタイリング製品、ボディソープ製品、スキンケア製品、入浴剤などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性増粘

親水性増粘に関しては、PEG-90Mは平均分子量400万の水溶性高分子であることから、水溶性基剤として、また水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)エマルションなど乳化物の増粘・粘度調整や乳化安定化を目的に使用されています[1b][5][6]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2008-2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

PEG-90Mの配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

4. 安全性評価

PEG-90Mの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されている平均分子量400万の水溶性高分子であり、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどない(あった場合でも軽度以下)と考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「PEG-90M」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,31.
  2. 大木 道則, 他(1989)「ポリエチレングリコール」化学大辞典,2243.
  3. 田村 健夫・廣田 博(2001)「保湿剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,130-133.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「多価アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,95-101.
  5. 鈴木 一成(2012)「増粘剤」化粧品成分用語事典2012,591-592.
  6. 堀内 照夫(2005)「水溶性高分子の物理化学的性質」水溶性高分子の機能と応用,18-73.

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