(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーの基本情報・配合目的・安全性

(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー

化粧品表示名 (PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー
医薬部外品表示名 ポリエチレングリコール・デシルテトラデセス-20・ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体
INCI名 PEG-240/HDI Copolymer Bis-Decyltetradeceth-20 Ether
配合目的 増粘

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるPEG-240、デシルテトラデセス-20およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の共重合体(∗1)です[1a]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。

(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性増粘

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性増粘

親水性増粘に関しては、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーは水に溶解し透明なゲルを形成し、その液性はチキソトロピー性(∗2)を示すことから、粘度を調整する目的で主にスキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、クレンジング製品などに使用されています[1b][2]

∗2 チキソトロピー性とは、混ぜたり振ったり、力を加えることで粘度が下がり、また時間の経過とともに元の粘度に戻る現象をいいます。よく例に出されるのはペンキで、ペンキは塗る前によくかき混ぜることで粘度が下がり、はけなどで塗りやすくなります。そしてペンキは塗られた直後に粘度が上がり(元に戻り)、垂れずに乾燥します。

3. 混合原料としての配合目的

(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーは混合原料が開発されており、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 アデカノール GT-700
構成成分 (PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーラウリン酸KBHT
特徴 塩に対する耐性をもち、弾力感のある透明なゲルを形成する増粘剤
原料名 アデカノール GT-730
構成成分 (PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーBGラウリン酸Kトコフェロール
特徴 塩に対する耐性をもち、水への溶解性を高めて室温でも弾力性のある透明なゲルを形成することができる増粘剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

5. 安全性評価

(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[3a]によると、

  • [動物試験] モルモットの皮膚に3,10および30%(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを含むPG溶液を単回適用し、適用後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Anonymous,2015)
  • [ヒト試験] モルモットの皮膚に3,10および30%(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを含むPG溶液を対象に14日間皮膚累積刺激性試験を開放パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Anonymous,2015)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[3b]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に3,10および30%(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを含むPG溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Anonymous,2015)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

6. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,56.
  2. 株式会社ADEKA(2019)「アデカノール GT-730」Technical Information.
  3. abL.C. Becker(2016)「Safety Assessment of Hexamethylene Diisocyanate (HDI) Polymers as Used in Cosmetics(∗4)」, 2022年11月12日アクセス.
    ∗4 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。

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