タマリンドガムの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | タマリンドガム |
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医薬部外品表示名 | タマリンドシードガム |
INCI名 | Tamarindus Indica Seed Gum |
配合目的 | 増粘 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
マメ科常緑高木であるタマリンド(学名:Tamarindus indica)の種子から得られる種子粘質物であり、以下の化学式で表されるグルコースを主鎖とし、側鎖にキシロースとガラクトースをもつ構造(∗1)の繰り返し単位で構成されたキシログルカン(多糖)かつ植物系水溶性高分子です[1a][2a]。
∗1 詳細な化学構造としては、β-D-グルコースのβ-1,4結合を主鎖とし、O-6でα-D-キシロースと結合し、キシロースのいくつか(ユニットあたり0-2個)にO-2でβ-D-ガラクトースが結合したオリゴ糖ユニットです。
1.2. 分布と歴史
タマリンドは、西アフリカ(∗2)を原産とし、アフリカでは古くからキビの粥を酸っぱくするためにタマリンドの果肉をペースト状にしたもの加えたり、サヘル地域ではゲル状の粥をつくる際にタマリンドを用い、また果実は乾燥保存させておくことで新鮮な果物が不足する乾季の栄養補給源として用いられてきた歴史があります[2b][3a]。
∗2 タマリンドはインド原産説があり、学名にも「indica(インディカ)」が含まれていますが、実際には西アフリカ原産と報告されています。
現在は、アフリカのみならずインドやタイなどのアジア、米国のフロリダ州など世界各地の熱帯地方に広く分布し、タマリンド果実をベースとしたソフトドリンク、シロップ、ジャム、菓子などが現地で普及しているとともに、ヨーロッパや北米ではスープ、ソース、チャツネ、カレーなどの鍵となる成分として汎用されています[3b]。
また、タマリンドの種子はピーナッツのように焙煎または煮沸して食されるほか、ペクチン様ガムの原料や搾油原料として用いられています[3c]。
1.3. 化粧品以外の主な用途
タマリンドガムの化粧品以外の主な用途としては、
分野 | 用途 |
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食品 | 乳化安定目的でアイスクリームなどに、増粘目的でソースなどに、ゲル化目的で各種デザートなどに用いられています[4]。 |
これらの用途が報告されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 親水性増粘およびゲル化
主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、など様々な製品に使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 親水性増粘およびゲル化
親水性増粘およびゲル化に関しては、タマリンドガムは増粘剤として使用される他の天然系多糖と比較すると中程度の粘度を示しますが、耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れ、その液性はシュードプラスチック性(∗3)を示すといった特徴をもつことから、粘度を調整し粘度あるいは製品の乳化安定性を保つ目的で様々な製品に使用されています[1b][2c][5a]。
∗3 シュードプラスチック性とは、加える力を強くすることで粘度が低下する特性のことで、たとえばシュードプラスチック性を有するマヨネーズは、保管している状態(力が加わっていない状態)では液が動かず、チューブを押す(力を加える)と粘度が低下して液が絞り出されます。また口に入れると咀嚼による力が加えられるので、口の中では粘度を感じにくくなります。
粘度に関しては、DSP五協フードによると以下のグラフのように、
タマリンドガムは、添加量に比例して粘度が大きくなりますが、他の多糖と比較すると中程度の粘度を示します[5b]。
また、タマリンドガムはアルコール類や糖類と併用することで相乗効果によりゲル化することが知られており[2d]、併用する成分によって、
併用成分(∗4) | 硬さ | 弾力 | 離水 | 透明性 |
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低級アルコール | 硬い ↑ 柔らかい |
弱い ↓ 強い |
多い ↑ 少ない |
白濁 ↓ 透明 |
多価アルコール | ||||
糖アルコール・糖類 |
∗4 タマリンドガムと併用される代表的な低級アルコールとしてはエタノール、多価アルコールとしてはBG、PEG-400、グリセリン、糖アルコールとしてはソルビトール、糖類としてはトレハロースなどがあります。
このようなゲル物性を示します[5c]。
3. 配合製品数および配合量範囲
配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗5)。
∗5 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 食品添加物の既存添加物リストに収載
- 15年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
食品添加物の既存添加物リストに収載されており、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「タマリンドガム」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,635-636.
- ⌃abcdK. Yamatoya, et al(2020)「Tamarind seed polysaccharide: Unique profile of properties and applications」Biopolymer-Based Formulations,445-461. DOI:10.1016/B978-0-12-816897-4.00020-5.
- ⌃abcNational Research Council(2008)「TAMARIND」Lost Crops of Africa: Volume Ⅲ:Fruits,149-164.
- ⌃樋口 彰, 他(2019)「タマリンドシードガム」食品添加物事典 新訂第二版,215.
- ⌃abc“多糖類.com”(-)「タマリンドガム」,2021年10月2日アクセス.