水添ホホバ油の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 水添ホホバ油 |
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医薬部外品表示名 | 水素添加ホホバ油 |
INCI名 | Hydrogenated Jojoba Oil |
配合目的 | 増粘、感触改良、研磨・スクラブ など |
1. 基本情報
1.1. 定義
1.2. 物性・性状
水添ホホバ油は、ホホバ種子油に含まれる不飽和(二重結合)部分に水素を付加することで飽和(一重結合:単結合)に変化させ、その結果として融点(∗1)が上昇し、常温で固体となったものであり、その物性・性状は、
∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。
状態 | 融点(℃) | 溶解性 |
---|---|---|
結晶性固体 | 66-70 | – |
このように報告されています[2]。
1.3. 脂肪酸組成およびアルコール組成
ホホバ種子油の脂肪酸組成およびアルコール組成は、一例として、
炭素数:二重結合数 | 脂肪酸(%) | アルコール(%) |
---|---|---|
16:0 | 1.5 | 0.2 |
16:1 | 0.4 | – |
17:0 | 0.1 | – |
17:1 | – | 0.1 |
18:0 | 0.1 | 0.2 |
18:1 | 13.9 | 0.9 |
18:2 | 0.3 | – |
18:3 | 0.2 | – |
20:0 | 0.1 | 0.3 |
20:1 | 70.8 | 51.9 |
22:0 | 0.2 | 1.0 |
22:1 | 11.2 | 38.1 |
24:0 | 0.1 | 0.2 |
24:1 | 0.9 | 6.1 |
このような種類と比率で構成されていることが報告されており[3]、主に炭素数18-22(C18,C20,C22)の一価不飽和脂肪酸と炭素数20-24(C20,C22,C24)の一価不飽和アルコールを主成分としたエステルで構成されていることを特徴としています[4]。
水添ホホバ油は、ホホバ種子油の主成分となっている一価不飽和の二重結合部分に水素添加し単結合に変化させることで、融点を上昇させたものであると考えられます。
2. 化粧品としての配合目的
- 非水系増粘
- 硬度調整による感触改良
- 研磨・スクラブ
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、ピーリング系製品、ヘアスタイリング製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 非水系増粘
非水系増粘に関しては、水添ホホバ油は熱や酸化に対する安定性が非常に高く、液状でチキソトロピー性(∗2)を示すことから、チキソトロピー性を付与や粘度の調整目的で主にメイクアップ製品やクリーム系製品に使用されています[5a][6]。
∗2 チキソトロピー性とは、混ぜたり振ったり、力を加えることで粘度が下がり、また時間の経過とともに元の粘度に戻る現象をいいます。よく例に出されるのはペンキで、ペンキは塗る前によくかき混ぜることで粘度が下がり、はけなどで塗りやすくなります。そしてペンキは塗られた直後に粘度が上がり(元に戻り)、垂れずに乾燥します。
2.2. 硬度調整による感触改良
硬度調整による感触改良に関しては、水添ホホバ油は熱や酸化に対する安定性や硬度が高いことから、基剤や乳化物の硬さを調整する目的で主にメイクアップ製品やクリーム系製品に使用されています[5b]。
2.3. 研磨・スクラブ
研磨・スクラブに関しては、水添ホホバ油は融点が高く硬い固体であるため、粒状に調整し、物理的に古い角質を除去する研磨・スクラブ剤としてボディケア製品、ピーリング製品などに使用されています[1b]。
3. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「水添ホホバ油」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,537-538.
- ⌃田村 健夫・廣田 博(2001)「ロウ類」香粧品科学 理論と実際 第4版,100-107.
- ⌃日本油化学協会編(2001)「ワックス」第四版 油化学便覧,40-44.
- ⌃大石 孔(1983)「植物系ワックス」ワックスの性質と応用,14-31.
- ⌃ab小林 進(2007)「天然ロウの現状と化粧品原料としての新たな展開」Fragrance Journal臨時増刊(20),47-54.
- ⌃柴田 雅史(2017)「ワックスゲルの物性制御と化粧品への応用」オレオサイエンス(17)(12),633-642. DOI:10.5650/oleoscience.17.633.