水添(スチレン/イソプレン)コポリマーの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 水添(スチレン/イソプレン)コポリマー |
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INCI名 | Hydrogenated Styrene/Isoprene Copolymer |
配合目的 | 増粘、皮膜形成 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるスチレン(∗1)とイソプレン(∗2)の共重合体(∗3)を水素添加したものです[1]。
∗1 スチレン(styrene 化学式:C₈H₈)とはベンゼンの水素原子の一つがビニル基に置換した構造をもつ芳香族炭化水素であり、天然樹脂である蘇合香(そごうこう 英名:styrax)の成分として発見され、蘇合香の英名である「styrax」と芳香族炭化水素を意味する「arene」からスチレン(styrene)と命名されています。
∗2 イソプレン(isoprene 化学式:C5H8 化学構造式:CH2=C(CH3)CH=CH2)とは2重結合を2個もつ室温で揮発性の高い炭化水素です。
∗3 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。
1.2. 物性・性状
水添(スチレン/イソプレン)コポリマーの物性・性状は、
状態 | 白色の粉末 |
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溶解性 | 炭化水素など極性の低い油に可溶 |
2. 化粧品としての配合目的
- 非水系増粘
- 皮膜形成
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ネイルケア製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 非水系増粘
非水系増粘に関しては、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーは炭化水素など極性の低い油を増粘し、撥水性(∗4)かつチキソトロピー性(∗5)のゲルを形成することから、油性成分の粘度調整目的で主にメイクアップ製品、ネイルケア製品に使用されています[2b][3b][4b]。
∗4 撥水性とは水をはじく性質のことです。
∗5 チキソトロピー性とは、混ぜたり振ったり、力を加えることで粘度が下がり、また時間の経過とともに元の粘度に戻る現象をいいます。よく例に出されるのはペンキで、ペンキは塗る前によくかき混ぜることで粘度が下がり、はけなどで塗りやすくなります。そしてペンキは塗られた直後に粘度が上がり(元に戻り)、垂れずに乾燥します。
2.2. 皮膜形成
皮膜形成に関しては、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーは透明で光沢があり、耐水性に優れた皮膜を形成することから、耐水性の皮膜を形成する目的で主にメイクアップ製品などに使用されています[2c][3c][4c]。
3. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗6)。
∗6 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。