t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンとは…成分効果と毒性を解説

紫外線吸収 退色防止
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン
[化粧品成分表示名称]
・t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン

[医薬部外品表示名称]
・4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン

[慣用名]
・アボベンゾン

油溶性のジベンゾイルメタン誘導体です。

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの物性は、

分子量 極大吸収波長(nm)(∗1)
310.4 357

このように記載されています(文献8:2014)

∗1 極大吸収波長とは、最も吸収する紫外線波のことであり、357という数値はUVA波長領域(320-400nm)であることから、UVA吸収剤に分類されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、リップケア製品、ネイル製品、香水などに汎用されています。

UVA吸収による紫外線防御作用

UVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗2)

∗2 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献4:2002;文献5:2002;文献6:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献7:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2007年にDSM ニュートリション ジャパンによって報告された紫外線吸収剤の吸収スペクトル資料によると、以下の表のように、

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの紫外線吸収波長

UVAへの吸収作用が明らかにされており(文献3:2007)、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンにUVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

UVA波長領域のみに吸収効果を有しているため、紫外線散乱剤やUVBを吸収する紫外線吸収剤と併用されますが、UVB吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルへの溶解性に優れているため、とくにメトキシケイヒ酸エチルヘキシルと併用されます(文献8:2014)

また、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンは光安定性に課題があることが知られていますが、UVB吸収剤のオクトクリレンと併用することで分解が抑制され、光安定性が改善されることが明らかにされているなど(文献9:2006)、通常は他の吸収剤との併用で光り安定性を維持する工夫がなされていると考えられます。

製品自体の退色・変色防止

製品自体の退色・変色防止に関しては、UVA吸収作用に優れていることから、香料や着色剤など紫外線で劣化しやすい成分が配合されている化粧品を紫外線から防御する目的で化粧品、香水またはネイル製品などに配合されます。

製品自体の退色・変色防止目的で配合されている場合は、配合量が微量であるため全成分表示欄には末尾に記載されます。

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 10
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 10
粘膜に使用されることがある化粧品 10

4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタンは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 10 紫外線吸収剤の合計は10以下とする
育毛剤 10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 10
薬用口唇類 10
薬用歯みがき類 10
浴用剤 2.0

スポンサーリンク

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの安全性(刺激性・アレルギー)について

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし-ごくまれに光感作が起こる可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [動物試験] ウサギ(数不明)を用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象に皮膚刺激性試験(詳細不明)を実施した結果、皮膚刺激性なし
  • [動物試験] モルモット(数不明)を用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象に皮膚刺激性試験(詳細不明)を実施した結果、皮膚刺激性なし

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [in vitro試験] ヒト皮膚モデルを用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを42分暴露したところ、皮膚刺激性は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、眼刺激性なし

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、眼刺激性は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、皮膚感作性なし

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [ヒト試験] 被検者にt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象に皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も陰性であった
  • [動物試験] モルモットを用いてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、皮膚感作性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

– 個別事例 –

兵庫県立加古川医療センター皮膚科の臨床データ(文献10:2016)によると、

  • [個別事例] 48歳の女性は、左足に貼布したケトプロフェン含有湿布剤によって光接触皮膚炎を起こした翌年の夏に、日焼け止め製品で光接触皮膚炎を起こした。成分別パッチテストを実施したところ、ケトプロフェンの光感作試験で陽性であり、ケトプロフェンの光感作を抑制する目的で添加していたt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンにも陽性を示した。光接触皮膚炎を起こした日焼け止めにはt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンが含まれていたため、これを原因成分であると考え、以降t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン含有日焼け止め製品を禁止とした

と記載されています。

臨床データは個別のものですが、光感作性が報告されているため、ごくまれに光接触感作性が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンは紫外線防御成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. DSM Nutritional Products(2011)「PARSOL 1789」Safety Data Sheet.
  2. MERCK(2017)「Eusolex 9020」Safety Data Sheet.
  3. 藤岡 賢大(2007)「最近の化粧品用途紫外線吸収剤」オレオサイエンス(7)(9),357-362.
  4. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  5. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  6. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  7. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月10日アクセス.
  8. 本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10.
  9. L R Gaspar, et al(2006)「Evaluation of the photostability of different UV filter combinations in a sunscreen.」International Journal of Pharmaceutics(307)(2),123-128.
  10. 足立 厚子, 他(2016)「湿布剤中のアボベンゾンにより感作されたサンスクリーンによる光接触皮膚炎」日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌(10)(2),125-129.

スポンサーリンク

TOPへ