ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとは…成分効果と毒性を解説

紫外線吸収 安定化成分
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
[化粧品成分表示名称]
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

[慣用名]
・ベモトリジノール

化学構造的にヒドロキシフェニルトリアジン構造を有する油溶性のトリアジン誘導体です。

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの物性は、

分子量 極大吸収波長(nm)
627.8 310 , 340

このように記載されています(文献7:2006)

極大吸収波長とは、最も吸収する紫外線波のことであり、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは310および340の2ヶ所に極大吸収波長を有し、また310という数値はUVB波長領域(280-320nm)、340という数値はUVA波長領域(320-400nm)であることから、UVB-UVAの両方を吸収するUVB-UVA吸収剤に分類されています。

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの皮膚浸透性に関しては、

ヘアレスラットを用いて3%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン配合乳液を対象に24時間単回経皮吸収試験を実施したところ、適用24時間後の経皮吸収率は適用量に対して0.23%であり、回収率は98.07%であった。

このように報告されており(文献1:2006)、動物試験のみではありますが、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンはほとんど皮膚浸透性がないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品などに使用されています。

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗1)

∗1 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献2:2002;文献3:2002;文献4:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献5:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

BASFジャパンによって報告されたビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの紫外線吸収波長

広範囲にわたるUVBおよびUVAへの吸収作用が明らかにされており(文献6:-)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンにUVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

さらにメトキシケイヒ酸エチルヘキシルなど他のUVB吸収剤と併用した際にUVB吸収能の相乗効果が得られることが報告されています(文献6:-)

紫外線吸収剤の光安定化

紫外線吸収剤の光安定化に関しては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは光安定性に非常に優れており、またメトキシケイヒ酸エチルヘキシルやt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどと組み合わせて処方することで、これらの光安定性を向上させる効果を有していることが報告されています(文献6:-;文献8:2001)

光安定性が高まることで、紫外線防御効果の持続性が増し、その結果として紫外線防御剤の配合率を減らすことができます。

2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)はポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 3.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 3.0
粘膜に使用されることがある化粧品 配合不可

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ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:3%濃度以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

資生堂の安全性データ(文献1:2006)によると、

  • [ヒト試験] 44人の被検者に3%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を対象に24時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激性は観察されなかった
  • [動物試験] ウサギを用いて3%および10%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を対象に皮膚一次刺激性試験を実施したところ、皮膚刺激は観察されなかった
  • [動物試験] 5匹のモルモットを用いて3%および10%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を対象に14日間の皮膚累積刺激性試験を実施したところ、10%濃度において1匹に9-11日目および15日目にわずかな紅斑が認められた。3%濃度においては1-3匹に4-11目に一過性のわずかな紅斑および落屑が認められた。これらの結果から3%濃度を配合した場合の累積刺激性はわずかであると判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚一次刺激性はほとんどなしと報告され、また皮膚累積刺激性は非刺激-軽度と報告されているため、皮膚一次刺激性はほとんどなしであり、皮膚累積刺激性は非刺激-軽度の累積刺激を起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

資生堂の安全性データ(文献1:2006)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に100%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、点眼1時間ですべてのウサギに明らかな結膜の発赤およびわずかな流出物が認められたが、3日にはすべての症状が消失した。これらの結果からこの試験物質は100%濃度において軽度の眼刺激性と結論付けられた
  • [動物試験] ウサギの片眼に3%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、点眼1時間で1匹のウサギにわずかな結膜の発赤、ほかの1匹にわずかな流出物が認められたが、1日以内にこれらの症状は消失した。これらの結果からこの試験物質は3%濃度において非刺激性であると結論付けられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、3%濃度以下において眼刺激性なしと報告されているため、3%濃度以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

資生堂の安全性データ(文献1:2006)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて3%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を対象にAdjuvant-Strip法に基づいて皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットにおいても陽性反応は認めれられず、皮膚感作性はないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

資生堂の安全性データ(文献1:2006)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて3%および10%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン溶液を対象にMorikawa法に基づいて光毒性試験を実施したところ、いずれのモルモットにおいても皮膚反応は認めれられず、この試験物質は光毒性剤ではないと判断された
  • [動物試験] モルモットを用いて3%および10%ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン3溶液を対象にAdjuvant-Strip法に基づいて光感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットにおいても陽性反応は認めれられず、光感作性はないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは紫外線防御成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 株式会社資生堂(2006)「2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」ポジティブリスト収載資料.
  2. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  3. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  4. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  5. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月15日アクセス.
  6. BASFジャパン株式会社(-)「Tinosorb S」技術資料.
  7. G Vielhaber, et al(2006)「Sunscreens with an absorption maximum of > or =360 nm provide optimal protection against UVA1-induced expression of matrix metalloproteinase-1, interleukin-1, and interleukin-6 in human dermal fibroblasts.」Photochemical & Photobiological Sciences(5)(3),275-282.
  8. E Chatelain, et al(2001)「Photostabilization of Butyl methoxydibenzoylmethane (Avobenzone) and Ethylhexyl methoxycinnamate by Bis‐ethylhexyloxyphenol methoxyphenyl triazine (Tinosorb S), a New UV Broadband Filter」Photochemistry & Photobiology Sciences(74)(3),401-406.

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