酸化亜鉛とは…成分効果と毒性を解説

紫外線散乱 紫外線吸収 着色 抗炎症成分
酸化亜鉛
[化粧品成分表示名称]
・酸化亜鉛

[医薬部外品表示名称]
・酸化亜鉛

不溶性の亜鉛酸化物(無機化合物:白色顔料)です。

酸化亜鉛の物性は、

分子量 屈折率
81.38 2.02

このように記載されています(文献1:2012;文献8:1993)

無機顔料における光学的性質の第一因子は屈折率であり、屈折率が大きいほど表面反射が大きくなり、隠蔽力は増加します(文献9:2006)

一方で隠蔽力が高いことは、言い換えれば透明性が低く、また使用時に肌に白く残る「白浮き」やきしみ感が生じる原因にもなります。

酸化亜鉛は、代表的な紫外線散乱剤である酸化チタンよりも屈折率が低いため、その点で紫外線散乱効果も酸化チタンほど高くはありませんが、同時に白浮きやきしみ感も酸化チタンほど顕著ではないことから、単体または酸化チタンやほかの紫外線吸収剤と併用して使用されています。

UVケア目的で配合される場合は、酸化亜鉛を微粒子化(ナノ化)することで透明性および使用感を高めた微粒子酸化亜鉛(ナノ化酸化亜鉛)も用いられます(∗1)

∗1 酸化亜鉛を微粒子化することで、紫外線は遮断しますが可視光は透過するため透明性が高くなり、その結果として白浮きがなくなり、使用感が向上します。

微粒子化酸化亜鉛(ナノ化酸化亜鉛)の健康に及ぼす影響に関しては、2006年から日本化粧品工業連合会が調査を開始し、2014年6月には微粒子化酸化亜鉛を紫外線散乱剤として使用することにおいてリスクがない、あるいはそのリスクは限定されたものであると結論づけられており(文献2:2017)、欧州のSCCS(Scientific Committee on Consumer Safety:消費者安全科学委員会)でも微粒子化酸化亜鉛は皮膚に塗布した後にヒトに悪影響を及ぼす危険性はないと考えられると報告しています(文献1:2012)

酸化亜鉛は光触媒作用を有しており、光を受けると表面で強力な酸化力を発揮しますが(文献3:2012)、皮膚表面でその酸化力を発揮されると安全性を著しく損なうことから、必ず何らかの表面コーティング処理を行い、酸化力を抑制した上で化粧品に配合されます。

このような背景から、酸化亜鉛が配合されている場合は、一例として表面処理剤・分散剤として一緒に、シリカ水酸化Alジメチコンシクロペンタシロキサントリエトキシカプリリルシランハイドロゲンジメチコンイソステアリン酸などのいずれかまたは複数の成分が表示一覧の末尾に記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、ボディパウダー、スキンケア化粧品などに使用されています。

UVBおよびUVA散乱およびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA散乱およびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗2)

∗2 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献4:2002;文献5:2002;文献6:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献7:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

酸化チタンは、高い屈折率による光散乱・反射による紫外線防御効果を有していることが広く知られており、代表的な紫外線散乱剤として紫外線防御を目的とした製品に広く使用されています。

また、酸化亜鉛は以下の表のように、

 酸化チタンおよび酸化亜鉛の紫外線吸収波長

380nm以下の波長領域において紫外線吸収能を有していることからUVA吸収剤としての機能も発揮することが明らかにされています(文献10:2014;文献11:2017)

紫外線散乱剤としてUVケア製品に使用される場合、仕上がり時の透明性や使用感が重要視されるため、粒子径25-35nm(∗3)の微粒子酸化亜鉛が用いられることが好ましく、また一般的にはシリコーンなどの分散媒に微粒子酸化亜鉛を分散させたスラリー(∗4)が用いられます(文献12:2014)

∗3 粒子径範囲が15-50nmの酸化チタンでは、紫外光を遮断する一方で可視光を透過するため透明性が高くなることから、一般的にこの粒子径範囲の微粒子酸化チタンが使用されます。

∗4 スラリーとは、液体中に無機粉体などの固体粒子が懸濁している流動体・分散体のことです。

紫外線吸収剤の多くは合成化合物であることから、ノンケミカル系をプロモーションする日焼け止め製品などは酸化チタンなどの紫外線散乱剤のみを使用するものも存在しますが、使用感などの点から紫外線吸収剤と組み合わせて配合するのが一般的です。

白色顔料による着色

白色顔料による着色に関しては、酸化亜鉛はその屈折率の高さから紫外光だけでなく、可視光を散乱することによって白く見せるため、白色顔料としてメイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、洗顔石鹸、ネイル製品などに使用されます(文献12:2014)

可視光の散乱効果は粒径200-300nm付近が最大といわれていることから、この大きさの酸化亜鉛が用いられます。

収れん作用

収れん作用に関しては、酸化亜鉛は粉体(パウダー状)で水や脂を吸着し、また汗腺を閉塞することで、汗を抑制してサラッとした肌状態を長持ちさせる効果があることから、制汗剤、ボディシート、ボディパウダーなどに配合されます。

ウロキナーゼ活性抑制による抗炎症作用

ウロキナーゼ活性抑制による抗炎症作用に関しては、2002年に資生堂が第22回IFSCCエジンバラ大会において最優秀賞を受賞した研究成果で、その報告によると、

肌荒れ時の角層表面にはウロキナーゼが存在し、これが活性化因子としてプラスミンを活性化し、初期段階の肌荒れに重要な働きをしていることを見出した。

そこで、本来は表皮内部で活性化されると考えられていたウロキナーゼが角層表面で活性化されることに着目し、肌表面でその活性を取り除くことで肌荒れが防止できるのではと考え、様々な粉体を探索したところ、酸化亜鉛にウロキナーゼ活性抑制作用が、またシリカおよびタルクにウロキナーゼ吸着作用が明らかになった。

これら2種類の粉体をナノレベルで複合化し、パウダーファンデーションに配合して4,039人の女性に3週間連続使用してもらったところ、70%に肌荒れ改善効果が認められた。

このような研究結果が明らかになっており(文献13:2002)、酸化亜鉛にウロキナーゼ活性阻害による肌荒れ防止・抗炎症作用が認められています。

ヒト試験ではナノ化酸化亜鉛を使用していることもあり効果が顕著ですが、ウロキナーゼ活性抑制作用は酸化亜鉛の特性であるため、一般的な酸化亜鉛でも効果を有していると考えられます。

スポンサーリンク

酸化亜鉛の安全性(刺激性・アレルギー)について

酸化亜鉛の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性(ナノ粒子除く):ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚刺激性(ナノ粒子):ほとんどなし
  • 眼刺激性(ナノ粒子除く):詳細不明
  • 眼刺激性(ナノ粒子):ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(ナノ粒子):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(ナノ粒子除く):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

– 酸化亜鉛(ナノ粒子) –

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモット2群の無傷の皮膚にそれぞれ25%および40%微粒子酸化亜鉛(20nm)を含むエタノール0.05mLを1日1回3日連続で適用し、皮膚刺激性を評価したところ、40%濃度の3日目に1匹のモルモットにわずかな紅斑がみられたが、他に皮膚異常は観察されなかった(Shiseido,2009)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、微粒子酸化亜鉛(ナノ化酸化亜鉛)において皮膚一次刺激性および累積刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

また、微粒子でない酸化亜鉛については、医薬品にも使用されており、10年以上の使用実績があることから、微粒子化酸化亜鉛と同じく皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

– 酸化亜鉛(ナノ粒子) –

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に25%微粒子酸化亜鉛(20nm)を含むオリーブオイル0.1gを点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて点眼1および4時間後および1,2,3,6および7日後まで1日2回眼刺激性を評価したところ、1および4時間ですべてのウサギに角膜刺激および発赤が認められ、2匹に軽度の浮腫およびわずかな分泌物が認められた。6日目にすべての症状は消失した。軽度かつ一時的な眼刺激性が認められたことから、この試験物質は軽度の刺激性に分類された(Shiseido,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、25%濃度で微粒子酸化亜鉛(ナノ化酸化チタン)は軽度の眼刺激性が報告されているため、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 酸化亜鉛(ナノ粒子) –

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 50人のボランティアにコーティング微粒子酸化チタン(微粒子化酸化亜鉛をオクチルトリエトキシシランでコーティング)を含むコーンオイルまたは非コーティング微粒子化酸化亜鉛を含むコーンオイルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施し、皮膚反応を評価したところ、いずれのボランティアも皮膚反応を示さなかった(Umicore,2007)
  • [動物試験] 5匹のモルモット2群を用いてA群には誘導期間で未希釈の微粒子酸化亜鉛(20nm)を含む水溶液、チャレンジ期間で5%,12.5%,25%および40%微粒子酸化亜鉛(20nm)を含む水溶液を、B群には誘導期間で40%微粒子酸化亜鉛(20nm)を含む水溶液、チャレンジ期間で1.25%,2.5%,5%,12.5%,25%および40%微粒子酸化亜鉛(20nm)を含む水溶液をAdjuvant-Strip法に基づいて皮膚感作性試験を実施し、チャレンジ24,48および72時間後に皮膚反応を評価したところ、どちらの群も評価時点でいかなる皮膚反応も示さなかった(Shiseido,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、微粒子酸化亜鉛(ナノ化酸化亜鉛)は皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、微粒子でない酸化亜鉛については、医薬品にも使用されており、10年以上の使用実績があることから、微粒子化酸化亜鉛と同じく皮膚感作性性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

酸化亜鉛は紫外線防御成分、着色剤、収れん成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分 着色剤 収れん成分 抗炎症成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Scientific Committee on Consumer Safety(2012)「ZnO (nano form)」OPINION ON.
  2. 日本化粧品工業連合会(2017)「ナノマテリアルの調査」, <https://www.jcia.org/user/approach/nanomaterial> 2019年6月18日アクセス.
  3. Y Li, et al(2012)「Mechanism of photogenerated reactive oxygen species and correlation with the antibacterial properties of engineered metal-oxide nanoparticles.」ACS NANO(6)(6),5164-5173.
  4. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  5. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  6. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  7. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月15日アクセス.
  8. 岡本 員明(1993)「紫外線防御からみたファンデーションの開発」Fragrance Journal(21)(5),27-34.
  9. 日光ケミカルズ(2006)「紫外線防御剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,445-459.
  10. 中西 美樹(2014)「日焼け止め化粧料の特性と有用性評価」表面科学(35)(1),40-44.
  11. 福井 崇(2017)「サンスクリーン製剤化技術の特徴」日本香粧品学会誌(41)(2),119-123.
  12. 本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10.
  13. 株式会社資生堂(2002)「新規肌あれ抑制成分スキンケアパウダーの開発」, <https://www.shiseidogroup.jp/newsimg/archive/00000000000275/275_w5m24_jp.pdf> 2018年8月15日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ