ポリシリコーン-15とは…成分効果と毒性を解説

紫外線吸収
ポリシリコーン-15
[化粧品成分表示名称]
・ポリシリコーン-15

[慣用名]
・ジメチコジエチルベンザルマロネート

化学構造的に鎖長約60のジメチコンのメチル基の約7.5%を紫外線吸収能をもつDiethyl 4-propynyloxybenzalmalonateで置換した、シリコーンポリマーを骨格構造にもつポリシリコーン誘導体(ポリマー系紫外線吸収剤)です。

ポリシリコーン-15の物性は、

分子量 極大吸収波長(nm)
約6,000 312

このように記載されています(文献2:2007)

極大吸収波長とは、最も吸収する紫外線波のことであり、312という数値はUB波長領域(280-320nm)であることから、UVB吸収剤に分類されています。

一般的に汎用されている紫外線吸収剤の多くは、分子量200-400低度であるのに対して、ポリシリコーン-15は、紫外線吸収剤をポリマー化(高分子化)することにより、経皮吸収を抑え、安全性を向上させていることを特徴としています。

ポリシリコーン-15の皮膚浸透性は、

ラットの剃毛皮膚およびブタの剥離および無傷の皮膚を用いたin vitro試験において、5%ポリシリコーン-15を含むO/W型(水中油型)乳化液(2mg/c㎡)を単回塗布(16時間)および反復塗布(0,2,4,6時間の4回)にて実施し、塗布された試験物質の経皮吸収性を評価した。

その結果、ポリシリコーン-15の皮膚での吸収は極めて少なく、皮膚へ塗布して16時間後で表皮および真皮での吸収は0.5%以下であった。

このような検証結果が報告されており(文献1:2002)、動物試験のみではありますが、ポリシリコーン-15は配合量の約0.5%以下であり、また別の試験では真皮層より深部へ経皮吸収しないことも示されていることから(文献2:2007)、ほとんど浸透しないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、リップケア製品、ヘアケア製品などに使用されています。

UVB吸収による紫外線防御作用

UVB吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗1)

∗1 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献3:2002;文献4:2002;文献5:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献6:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2014年にポーラ化成工業によって報告された紫外線吸収剤の吸収スペクトル資料によると、以下の表のように、

ポリシリコーン-15の紫外線吸収波長

UVBへの吸収作用が明らかにされており(文献2:2007)、ポリシリコーン-15にUVB吸収による紫外線防御作用が認められています。

この紫外線吸収波長データをみるかぎり、紫外線吸収度が極めて低いようにみえますが、ポリシリコーン-15は従来の紫外線吸収剤と比較して、1分子中の紫外線吸収基の比率が小さいため、紫外線分光光度計で吸収強度を測定すると、このような低い値となります。

実際のポリシリコーン-15のUVB防御能を様々な濃度で代表的なUVB吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルと比較したところ、以下のグラフのように、

ポリシリコーン-15の紫外線防御能

5%濃度まではメトキシケイヒ酸エチルヘキシルとほぼ同等のUVB吸収能を有していることが示されています(文献2:2007)

このような背景から、光安定性および皮膚安全性に優れたUVB吸収剤として日焼け止め製品、リップケア製品、ヘアケア製品などに使用されています。

また、ポリシリコーン誘導体は化学構造的にシリコーンの側鎖に紫外線吸収能を有した官能基があり、それが枝状に連なっているため、他の紫外線散乱剤や紫外線吸収剤と併用した場合にそれらを均一に取り込みUVフィルターの均一膜を形成することで、相乗的に紫外線防御能を高める効果があります(文献7:2014)

このような背景から、他の紫外線散乱剤および/または紫外線吸収剤と併用して使用されます。

ジメチコジエチルベンザルマロネート(ポリシリコーン-15)はポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 10.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 10.0
粘膜に使用されることがある化粧品 10.0

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ポリシリコーン-15の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリシリコーン-15の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

ロシュビタミンジャパン(現 DSM ニュートリション ジャパン)の安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 45人の被検者に100%ポリシリコーン-15(0.01g)を24時間Finn Chamber閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に試験部位を観察したところ、すべての被検者で陰性であった
  • [ヒト試験] 103人の被検者に10%ポリシリコーン-15を含むミネラルオイル0.4mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激性および接触感作性は認められなかった

– 個別事例 –

荏原病院皮膚科および久岡皮膚科クリニックの臨床データ(文献8:2017)によると、

  • [個別事例] 65歳の女性は2014年6月ごろより顔に紅斑が出現しステロイド外用で軽快したが2015年4月ごろより再度紅斑が出現した。軽快と再燃を繰り返すことから2015年6月に初診を受けた。化粧品による接触皮膚炎の疑いから患者持参の化粧品11種類のパッチテストを実施したところ、UVプロテクターでICDRG判定基準1+の陽性を示したため、UVプロテクターの含有成分を用いてパッチテストしたところ、ポリシリコーン-15に2+の陽性を示した。この結果からポリシリコーン-15によるアレルギー性接触皮膚炎と診断した。ポリシリコーン-15未配合のUVプロテクターの使用に変えたところ、症状は軽快した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

個別事例として1例のみですが、アレルギー性接触皮膚炎の報告があります。

眼刺激性について

ロシュビタミンジャパン(現 DSM ニュートリション ジャパン)の安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に100%ポリシリコーン-15(0.1mL)を点眼し、点眼1,24,48,および72時間後に角膜混濁、虹彩の変化、結膜の発赤、角膜浮腫について評価したところ、点眼後に各ウサギに結膜のわずかな発赤や浮腫が認められたが、48-72時間後には消失した。いずれも可逆性のものであることから、試験物質はこの条件下においてウサギの眼に刺激性はないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

ロシュビタミンジャパン(現 DSM ニュートリション ジャパン)の安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に10%ポリシリコーン-15(0.4mg)を対象に疑似太陽を用いた光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、光感作性は認められなかった
  • [動物試験] 10匹のモルモットの左大腿部に100%,75%,50%および25%ポリシリコーン-15水溶液0.025mLを塗布し、2時間後にUV-Aを照射し、塗布24,48および72時間後に皮膚反応を観察したところ、各濃度の試験物質を塗布した皮膚部位で、UV照射と非照射で差異は認められなかったため、この条件下でモルモットにおける光毒性は認められないと結論づけられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリシリコーン-15は紫外線防御成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. DSM ニュートリション ジャパン(2002)「紫外線吸収剤 Dimethicodiethylbenzalmalonate」ポジティブリスト収載資料.
  2. 藤岡 賢大(2007)「最近の化粧品用途紫外線吸収剤」オレオサイエンス(7)(9),357-362.
  3. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  4. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  5. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  6. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月14日アクセス.
  7. 本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10.
  8. 平塚 理沙, 他(2017)「紫外線吸収剤ポリシリコーン-15による接触皮膚炎」皮膚病診療(39)(7),723-726.

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