ドロメトリゾールトリシロキサンとは…成分効果と毒性を解説

紫外線吸収
ドロメトリゾールトリシロキサン
[化粧品成分表示名称]
・ドロメトリゾールトリシロキサン

油溶性のベンゾトリアゾール誘導体です。

ドロメトリゾールトリシロキサンの物性は、

分子量 極大吸収波長(nm)
501.8 304 , 342

このように記載されています(文献1:2002)

極大吸収波長とは、最も吸収する紫外線波のことであり、ドロメトリゾールトリシロキサンは304および342の2ヶ所に極大吸収波長を有し、また304という数値はUVB波長領域(280-320nm)、342という数値はUVA波長領域(320-400nm)であることから、UVB-UVAの両方を吸収するUVB-UVA吸収剤に分類されています。

ドロメトリゾールトリシロキサンの皮膚浸透性に関しては、

in vitro試験において、ヒト全層皮膚に10%および20%ドロメトリゾールトリシロキサンを含む製剤を暴露し、皮膚表面からドロメトリゾールトリシロキサンを回収したところ、10%濃度で99.5%を表面から回収(吸収率0.5%)、20%濃度で適用量の約1.5%が吸収された。

このように報告されており(文献1:2002)、ドロメトリゾールトリシロキサンはほとんど皮膚浸透性がないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品などに使用されています。

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗1)

∗1 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献2:2002;文献3:2002;文献4:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献5:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2016年にジョンソン&ジョンソンによって報告されたドロメトリゾールトリシロキサンの紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

ドロメトリゾールトリシロキサンの紫外線吸収波長

UVBおよびUVAへの吸収作用が明らかにされており(文献6:2016)、ドロメトリゾールトリシロキサンにUVB-UVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

また、光安定性に優れており、紫外線吸収剤としての持続性が高く、ドロメトリゾールトリシロキサンの吸収度が低いUVA領域を補完する目的で、同じ開発メーカーであるテレフタリリデンジカンフルスルホン酸が併用されます(文献7:2004)

ドロメトリゾールトリシロキサンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 15.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 15.0
粘膜に使用されることがある化粧品 配合不可

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ドロメトリゾールトリシロキサンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ドロメトリゾールトリシロキサンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日本ロレアルの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 被検者に15%ドロメトリゾールトリシロキサンを含むワセリン0.01gを対象に実施し、皮膚反応を評価したところ、すべての被検者において陰性であった
  • [動物試験] ウサギの皮膚にドロメトリゾールトリシロキサン0.5gを4時間半閉塞パッチ適用し、適用1,24,48および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、皮膚刺激性は認められなかった
  • [動物試験] モルモットに85%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液0.04gを対象に14日間累積刺激性試験を実施し、累積刺激性を評価したところ、皮膚刺激性の兆候は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚一次刺激性および累積刺激性はほとんどなしと報告されているため、皮膚一次刺激性および累積刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日本ロレアルの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼の結膜嚢にドロメトリゾールトリシロキサン0.1gを適用し、適用1,24,48および72時間後に角膜、虹彩および結膜に対する刺激性を評価したところ、1時間後ですべてのウサギに結膜に軽度の発赤と浮腫が認められたが、72時間後には消失し、また角膜および虹彩に異常は認められなかったことから、眼刺激性に問題はないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性の兆候を示さないと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本ロレアルの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて5%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液(トウモロコシ/アセトン(20:80))を対象にAdjuvant-Strip法に基づいて皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットにおいても陽性反応は認めれられず、皮膚感作性はないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

日本ロレアルの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] モルモットに85%,80%,70%および60%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液(アセトン)を塗布した後、UVA(20J/c㎡)を照射し、24,48および72時間後に光毒性を評価したところ、光毒性反応は認められなかった
  • [動物試験] 剃毛したモルモットの背首部4隅にフロインド完全アシュバンド/生理食塩水(50:50)0.1mLを皮内注射した後に85%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液を塗布し、UVB(1.8J/c㎡)およびUVA(10J/c㎡)を照射し、3,5,8および10日目に85%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液の塗布とUVBおよびUVAの照射、感作誘導を行ない、さらに22日目に感作誘発として85%ドロメトリゾールトリシロキサン懸濁液の塗布およびUVA照射、感作誘発を実施し、24,48および72時間後に皮膚反応を調べたところ、光感作性は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ドロメトリゾールトリシロキサンは紫外線防御成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日本ロレアル株式会社(2002)「ドロメトリゾールトリシロキサン」ポジティブリスト収載資料.
  2. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  3. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  4. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  5. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月15日アクセス.
  6. D Susan, et al(2016)「Chemistry of Sunscreens」Principles and Practice of Photoprotection,159-178.
  7. M Dominique(2004)「Prevention of ultraviolet‐induced skin pigmentation」Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine(20)(5),243-247.

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