オクトクリレンとは…成分効果と毒性を解説

紫外線吸収 退色防止 安定化成分
オクトクリレン
[化粧品成分表示名称]
・オクトクリレン

化学名として2―シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルヘキシルエステルと表示される油溶性のジフェニル化合物です。

オクトクリレンの物性は、

分子量 極大吸収波長(nm)
361.5 303

このように記載されています(文献3:2014)

極大吸収波長とは、最も吸収する紫外線波のことであり、303という数値はUB波長領域(280-320nm)であることから、UVB吸収剤に分類されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、リップケア製品、ネイル製品、香水などに汎用されています。

UVB吸収による紫外線防御作用

UVB吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗1)

∗1 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献4:2002;文献5:2002;文献6:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献7:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2014年にポーラ化成工業によって報告された紫外線吸収剤の吸収スペクトル資料によると、以下の表のように、

オクトクリレンの紫外線吸収波長

UVBへの吸収作用が明らかにされており(文献3:2014)、オクトクリレンにUVB吸収による紫外線防御作用が認められています。

光に比較的安定ですが、それゆえUVB吸収能が強いわけではないため、紫外線防御目的で単独で用いられることは少なく、他の紫外線吸収剤と併用して使用されます。

製品自体の退色・変色防止

製品自体の退色・変色防止に関しては、UVB吸収作用に優れていることから、香料や着色剤など紫外線で劣化しやすい成分が配合されている化粧品を紫外線から防御する目的で香水またはネイル製品などに配合されます。

製品自体の退色・変色防止目的で配合されている場合は、配合量が微量であるため全成分表示欄には末尾に記載されます。

紫外線吸収剤の光安定化

紫外線吸収剤の光安定化に関しては、オクトクリレンは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、およびオキシベンゾン-3のいずれかと組み合わせて処方することで、これらの光安定性を向上させることが報告されており(文献8:2006)、単独での紫外線吸収能も強くないことから、これらの紫外線吸収剤の光安定性を向上させる目的で併用されています。

光安定性が高まることで、紫外線防御効果の持続性が増し、その結果として紫外線防御剤の配合率を減らすことができます。

2―シアノ―3,3―ジフェニルプロパ―2―エン酸2―エチルヘキシルエステル(オクトクリレン)はポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 10
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 10
粘膜に使用されることがある化粧品 10

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オクトクリレンの安全性(刺激性・アレルギー)について

オクトクリレンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギ(数不明)を用いてオクトクリレンを対象にOECD404テストガイドラインに基づいて皮膚刺激性試験(詳細不明)を実施した結果、皮膚刺激性なし

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてオクトクリレンを対象にOECD404テストガイドラインに基づいて皮膚刺激性試験(詳細不明)を実施した結果、皮膚刺激性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてオクトクリレンを対象にOECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激性試験を実施したところ、眼刺激性なし

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてオクトクリレンを対象にOECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激性試験を実施したところ、眼刺激性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてオクトクリレンを対象にOECD405テストガイドラインに基づいて皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作性を引き起こさなかった

MERCKの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてオクトクリレンを対象にOECD405テストガイドラインに基づいてmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

DSM Nutritional Productsの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてオクトクリレンを対象に光毒性試験を実施したところ、光毒性なし
  • [動物試験] モルモットを用いてオクトクリレンを対象に光感作性試験を実施したところ、光感作性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

また、オクトクリレンの光感作性ではありませんが、2001年にPMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:医薬品医療機器総合機構)は経皮鎮痛消炎剤であるケトプロフェン外用剤に対して紫外線曝露による全身性の光線過敏症に関して注意喚起を行っており、さらに2010年にはケトプロフェン外用剤はオクトクリレンとの共感作による光線過敏症の報告があり、ケトプロフェン外用剤とオクトクリレンを併用しないよう注意喚起がなされています(文献9:2011)

∗∗∗

オクトクリレンは紫外線防御成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:紫外線防御成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. DSM Nutritional Products(2012)「PARSOL 340」Safety Data Sheet.
  2. MERCK(2017)「Eusolex OCR」Safety Data Sheet.
  3. 本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10.
  4. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  5. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  6. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  7. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2019年6月10日アクセス.
  8. L R Gaspar, et al(2006)「Evaluation of the photostability of different UV filter combinations in a sunscreen.」International Journal of Pharmaceutics(307)(2),123-128.
  9. 厚生労働省(2011)「ケトプロフェン外用剤による光線過敏症に係る安全対策について」医薬品・医療機器等安全性情報(276),3-8.

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