コーンスターチの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | コーンスターチ |
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医薬部外品表示名 | トウモロコシデンプン、乾燥トウモロコシデンプン |
部外品表示簡略名 | コーンデンプン、コーンスターチ |
INCI名 | Zea Mays (Corn) Starch |
配合目的 | 感触改良、増粘、結合、研磨・スクラブ など |
1. 基本情報
1.1. 定義
イネ科植物トウモロコシ(学名:Zea mays 英名:corn)の種子から得られる種子粘質物であり、以下の化学式で表されるグルコースが直鎖状にα-1,4結合したアミロース(amylose:下図左)と、同じくグルコースがα-1,6結合によって分枝をもつアミロペクチン(amylopectin:下図右)から成る混合物(多糖)(∗1)かつ植物系水溶性高分子です[1a][2][3a]。
∗1 トウモロコシデンプンは、アミロース含量が29%前後で残りがアミロペクチンとなっています[3b]。
1.2. 分布
コーンスターチは、自然界においてトウモロコシ(学名:Zea mays)の種子に存在しています[4a]。
1.3. 化粧品以外の主な用途
コーンスターチの化粧品以外の主な用途としては、
分野 | 用途 |
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食品 | ブドウ糖や水飴の原料をはじめ、天ぷら粉、菓子類、アイスクリームなどに用いられています[4b]。 |
医薬品 | 滑沢、基剤、結合、コーティング、賦形、分散、崩壊、流動化目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられています[5]。 |
これらの用途が報告されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 展延性および付着性による感触改良
- 親水性増粘およびゲル化
- 結合
- 研磨・スクラブ
主にこれらの目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディ石鹸、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品、入浴剤などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 展延性および付着性による感触改良
展延性および付着性による感触改良に関しては、コーンスターチは付着性をもつことから、多面形で平均粒径16μmの粉体が皮膚への付着性や粉体自体の伸びを改良する目的でフェイスパウダー、ベビーパウダー、ボディパウダーなど粉体系製品に使用されています[6][7]。
2.2. 親水性増粘およびゲル化
親水性増粘およびゲル化に関しては、コーンスターチは温水で溶かすとゲル化性を示すことから、ゲル化や粘度調整目的でスキンケア製品に使用されています[8]。
2.3. 結合
結合に関しては、コーンスターチは適度な付着性・接着性をもつことから、粉体原料同士を皿状容器に圧縮成型するとき、粉体原料同士のくっつきをよくしたり、使用時に粉が周囲に飛び散るのを防ぐ目的で主にプレストパウダーや固形入浴剤(バブルバー)などに用いられます[9]。
2.4. 研磨・スクラブ
研磨・スクラブに関しては、コーンスターチは天然に存在する多糖であり、様々な大きさの粒径にしたものが物理的に古い角質を除去するスクラブ剤としてボディケア製品などに使用されています[1b]。
3. 配合製品数および配合量範囲
配合製品数および配合量に関しては、海外の2006-2007年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
4. 安全性評価
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 40年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10]によると、
- [ヒト試験] 99名の被検者(男性26名、女性73名、18-70歳)に97%コーンスターチを含むパウダーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、誘導期間において4名の被検者に最小限の紅斑が認められたが、チャレンジ期間に皮膚反応は認められなかった。同様の試験を別の109名の被検者(男性35名、女性74名、18-68歳)で実施したところ、皮膚反応は認められなかった(Harrison Research Laboratories Inc,2002)
このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激は非刺激-最小限の範囲および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられ、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「コーンスターチ」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,394-395.
- ⌃大木 道則, 他(1989)「デンプン」化学大辞典,1553.
- ⌃ab町田 誠之・稲野 光正(1966)「デンプンの化学:その工業化学的利用を中心として」化学教育(14)(2),130-137. DOI:10.20665/kagakukyouiku.14.2_130.
- ⌃ab杉田 浩一, 他(2017)「でんぷん」新版 日本食品大事典,522-527.
- ⌃日本医薬品添加剤協会(2021)「トウモロコシデンプン」医薬品添加物事典2021,413-414.
- ⌃日光ケミカルズ株式会社(2016)「有機天然粉体」パーソナルケアハンドブックⅠ,293-294.
- ⌃宇山 侊男, 他(2020)「コーンスターチ」化粧品成分ガイド 第7版,208.
- ⌃鈴木 一成(2012)「トウモロコシデンプン」化粧品成分用語事典2012,600.
- ⌃光井 武夫(1984)「化粧品に用いられる水溶性高分子の重要な機能」新増補 水溶性高分子,210-219.
- ⌃F.A. Andersen, et al(2011)「Final Report of the Safety Assessment of Cosmetic Ingredients Derived From Zea Mays (Corn)」International Journal of Toxicology(30)(3_Suppl),17S-39S. DOI:10.1177/1091581811403832.