ポリメチルシルセスキオキサンの基本情報・配合目的・安全性

ポリメチルシルセスキオキサン

化粧品表示名称 ポリメチルシルセスキオキサン
医薬部外品表示名称 メチルシロキサン網状重合体
化粧品国際的表示名称(INCI名) Polymethylsilsesquioxane
配合目的 感触改良ソフトフォーカス など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるメチルトリメトキシシランの重合体(∗1)であり、三次元網目状に架橋したケージ構造と部分ケージ構造の混合物(シリコーンレジン:シリコーン樹脂)です[1][2a]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指します。

ポリメチルシルセスキオキサン

1.2. 物性・性状

ポリメチルシルセスキオキサンの物性・性状は(∗2)

∗2 比重とは固体や液体においては密度を意味し、標準密度1より大きければ水に沈み(水より重い)、1より小さければ水に浮くことを意味します。

状態 比重(25℃)
球状粉末 1.32

このように報告されています[3]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 滑り性および展延性向上による感触改良
  • ソフトフォーカス効果

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、スキンケア製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 滑り性および展延性向上による感触改良

滑り性および展延性向上による感触改良に関しては、ポリメチルシルセスキオキサンは球状シリコーンレジンパウダーであり、吸油性が低く、サラサラした感触をもち、滑り性や展延性に優れることから[4][5]、感触を調整する目的で主にメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、スキンケア製品などに汎用されています。

2.2. ソフトフォーカス効果

ソフトフォーカス効果に関しては、まず前提知識として毛穴や小じわと光の関係およびソフトフォーカス効果について解説します。

肌の表面は皮表と呼ばれ、以下の図のように、

皮表の構造

凸部の皮丘と凹部の皮溝で構成された肌理(キメ)構造によって形成されています。

皮丘には多くの光が当たることで明るくなる一方で、皮溝、小ジワ、毛穴などくぼんだ部分には光が当たりにくく影になり、その明度差がくぼみ部分を目立たせることが知られています[6]

このような背景から、くぼみ部分を目立ちにくくさせるには、

  • 皮膚表面の凹凸間の輪郭をぼかすこと
  • 皮膚表面の凹凸間の明度差を減少させること

この2点が重要であるというソフトフォーカス理論が報告され[7]、また以下のソフトフォーカス効果の仕組み図をみてもらうとわかるように、

ソフトフォーカス効果の仕組み

球状という形態から球状粉体が光を乱反射し、この乱反射により肌表面の光情報が隠されて凹凸をぼかすソフトフォーカス効果を発揮することが知られています[8][9]

ポリメチルシルセスキオキサンは、優れたソフトフォーカス効果をを有していることから[10]、ファンデーション製品、コンシーラー製品などに汎用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ポリメチルシルセスキオキサンは、混合原料が開発されており、ポリメチルシルセスキオキサンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 MSP-AK06
構成成分 ポリメチルシルセスキオキサンアルミナ
特徴 アルミナ微粒子内包によりオイルに濡れてもソフトフォーカス効果を損なわず、金平糖状形状の突起により接触面積が小さくなり球状粒子よりも滑り性が向上したアルミナ微粒子内包シリコーン粉末
原料名 MSP-TK04
構成成分 ポリメチルシルセスキオキサン酸化チタン
特徴 酸化チタン微粒子内包によりソフトフォーカス効果が向上し、また金平糖状形状の突起により接触面積が小さくなり球状粒子よりも滑り性が向上した酸化チタン微粒子内包シリコーン粉末
原料名 Silcrusta MK03
構成成分 ポリメチルシルセスキオキサンメタクリル酸メチルクロスポリマー
特徴 メタクリル酸メチルクロスポリマー内包によりソフトフォーカス効果が向上し、また金平糖状形状の突起により接触面積が小さくなり球状粒子よりも滑り性が向上したシリコーン粉末
原料名 DRY-FLO TS Pure
構成成分 タピオカデンプンポリメチルシルセスキオキサン
特徴 油性のべたつきを軽減し、柔軟な感触を付与する感触粉体

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリメチルシルセスキオキサンの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

5. 安全性評価

ポリメチルシルセスキオキサンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2b]によると、

  • [ヒト試験] 50名の被検者に100%ポリメチルシルセスキオキサン0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者においても有害な皮膚反応を示さず、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Anonymous,2017)
  • [ヒト試験] 100名の被検者に50%ポリメチルシルセスキオキサンを含むメイクアップ製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられず、この製品は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(EVIC Romania,2013)
  • [ヒト試験] 108名の被検者に22%ポリメチルシルセスキオキサンを含むメイクアップ製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において2名の被検者でほとんど知覚できない紅斑がみられたが、他に有害な皮膚反応はみられず、この製品は皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Clinical Research Laboratories Inc,2012)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2c]によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面にポリメチルシルセスキオキサンを処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、この試験物質は陰性比較として用いた滅菌脱イオン水と同様の結果を示し、眼刺激は予測されなかった(Active Concepts,2014)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5.3. 光毒性(光刺激性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2d]によると、

  • [ヒト試験] 20名の被検者に5%ポリメチルシルセスキオキサンを含む製剤を閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVAライトw照射する手順を3回繰り返し、各パッチ除去直後および1,24時間および7日後に光刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられなかった(Anonymous,2017)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激なしと報告されているため、一般に光毒性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ポリメチルシルセスキオキサン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,930.
  2. abcdW.F. Bergfeld, et al(2017)「Safety Assessment of Polysilsesquioxanes as Used in Cosmetics(∗4)」, 2022年5月4日アクセス.
    ∗4 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。
  3. 信越化学工業株式会社(2018)「シリコーンパウダー」化粧品用シリコーン,36-37.
  4. 信越化学工業株式会社(2021)「シリコーンパウダー」化粧品用シリコーン オリジナル原料 Plus,18-19.
  5. 佐藤 吉幸, 他(1993)「ポリメチルシルセスキオキサン球状粉末の化粧品へ日本化粧品技術者会誌(27)(3),488-493. DOI:10.5107/sccj.27.488.
  6. 栗林 さつき(2005)「毛穴対策用メイクアップ化粧料」Fragrance Journal(33)(9),33-38.
  7. 中村 直生, 他(1987)「粉体の光学的研究とシワ隠し効果」日本化粧品技術者会誌(21)(2),119-126. DOI:10.5107/sccj.21.119.
  8. 南 孝司(2003)「デフォーカス効果」化粧品事典,610.
  9. 毛利 邦彦(1996)「ファンデーション用粉体の開発動向」色材協会誌(69)(8),530-538. DOI:10.4011/shikizai1937.69.530.
  10. 金子 智洋・白石 圭助(2015)「高光拡散シリコーンレジンパウダーのファンデーションへの応用」Fragrance Journal(43)(12),36-41.

TOPへ