ナイロン-6の基本情報・配合目的・安全性

ナイロン-6

化粧品表示名 ナイロン-6
医薬部外品表示名 ナイロン末
INCI名 Nylon-6
配合目的 感触改良ロングラッシュ効果 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラクタムの一種である炭素数6(C6のカプロラクタム(∗1)を開環重合(∗2)したポリアミド(∗3)体質顔料です[1]

∗1 ラクタム(lactam)とは、カルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-NH2)が脱水縮合した形をもって環を成している化合物の総称であり、カプロラクタムはナイロン-6の原料として重要な化合物です。

∗2 重合とは、複数の単量体(モノマー)が結合して鎖状や網状になる反応のことをいい、単量体(モノマー)が結合して鎖状または網状になった化合物を重合体(ポリマー)といいます。開環重合とは、環状化合物の環構造を解き、環の解かれた化合物の端同士が結合することで重合体(ポリマー)とする反応のことをいいます。

∗3 ポリアミドとは、アミド結合によって多数の単量体(モノマー)が結合してできた重合体(ポリマー)であり、一般に脂肪族骨格を含むポリアミドをナイロンと総称しています。

ナイロン-6

1.2. 性状

ナイロン-6の性状は、

状態 繊維または球状あるいは平板状の粉体

このように報告されています[2a][3]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 潤滑性向上による感触改良
  • ロングラッシュ効果

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ネイル製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 潤滑性向上による感触改良

潤滑性向上による感触改良に関しては、球状のナイロン-6は表面が平滑であり、優れた滑り性およびなめらなか感触を有することから、潤滑性を向上させる目的で主にメイクアップ製品、ネイル製品などに汎用されています[2b][4a][5]

2.2. ロングラッシュ効果

ロングラッシュ効果に関しては、まず前提知識としてロングラッシュ効果について解説します。

ロングラッシュ効果とは、一般に日本人のまつ毛は欧米人よりも短くて細い上にハリがないため、天然または合成の微小な繊維をまつ毛につけることで、まつ毛を濃く長くみせる効果のことをいいます[6]

繊維状のナイロン-6は、まつ毛に付着させることでまつ毛を濃く長く見せることが可能であることから、ロングラッシュ効果目的で主にマスカラ製品に使用されています[4b][7]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011-2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ナイロン-6の配合製品数と配合量の調査結果(2011-2012年)

4. 安全性評価

ナイロン-6の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ナイロン-6」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,720.
  2. ab近 亮(2003)「ナイロンパウダー」化粧品事典,626-627.
  3. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「体質粉体」パーソナルケアハンドブックⅠ,290-298.
  4. ab柴田 雅史(2021)「無色の光の美しさと感触調整 – 体質顔料」美しさをつくる色材工学,180-199.
  5. 中村 直生(1988)「プラスチックパウダーの化粧品への応用」色材協会誌(61)(8),438-446. DOI:10.4011/shikizai1937.61.438.
  6. 南 孝司(2003)「ロングラッシュ効果」化粧品事典,857-858.
  7. 熊谷 重則・関根 知子(2000)「新しい化粧品と高分子」高分子(49)(1),10-12. DOI:10.1295/kobunshi.49.10.

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