ラウロイルリシンの基本情報・配合目的・安全性

ラウロイルリシン

化粧品表示名 ラウロイルリシン
医薬部外品表示名 Nε-ラウロイル-L-リジン
部外品表示簡略名 ラウロイル-ε-リジン
INCI名 Lauroyl Lysine
配合目的 感触改良増量・希釈・賦形 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラウリン酸リシンとのアミド(∗1)体質顔料です[1]

∗1 アミド(酸アミド)とは、脱水縮合した構造のことを指し、脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。

ラウロイルリシン

1.2. 物性・性状

ラウロイルリシンの物性・性状は、

状態 白-淡黄色の層状粉末
粒径(μm) 20-30
溶解性 強アルカリまたは酸性溶液以外の溶媒に不溶

このように報告されています[2][3a]

ラウロイルリシンは、高級脂肪酸の一種であるラウリン酸とアミノ酸の一種であるリシンを合成して得られるアミノ酸系界面活性剤としての期待から開発されましたが、水を含むほとんどの溶媒に対して不溶性であり、洗浄剤として用いることはできない一方で、その結晶は撥水性や潤沢性を有することから、機能性粉体として汎用されています[4a][5]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 潤滑性およびしっとり感向上による感触改良
  • 増量・希釈・賦形

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 潤滑性およびしっとり感向上による感触改良

潤滑性およびしっとり感向上による感触改良に関しては、ラウロイルリシンは六角板状の薄い結晶が積層した構造をもつ層状粉体であり、潤滑性に優れ、なめらかでしっとりした感触を付与することから、主にメイクアップ製品、化粧下地製品などに汎用されています[3b][4b]

2.2. 増量・希釈・賦形

増量・希釈・賦形に関しては、まず前提知識としてパウダー化粧品における着色剤の役割について解説します。

パウダー化粧品において着色剤は、美肌に見せるために肌の色を好ましい色に調整し、肌のムラやくすみ、シミなどの欠点を隠す役割を担っていますが、着色顔料だけでは肌の色は好みどおりでかつ肌の欠点も隠れたとしても人工的で不自然な仕上がりになり、とても美肌とはよべない状態となり、また肌への伸びや滑り性も悪いものとなってしまうことが知られています[6a]

そこで、着色剤の色を薄め、かつ塗りやすく均一で適切な仕上がりにするために体質顔料を混合することが、パウダー化粧品には不可欠となっています[6b]

ラウロイルリシンは、透明性や肌への密着性が高く、また撥水性(∗2)を有しているため、汗などによる化粧崩れを防止し化粧持続性が高いなどの特徴をもつことから、着色剤の希釈剤や増量剤としてメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品などに汎用されています[3c][4c]

∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、ラウロイルリシンの配合により粉体の成形性が向上することから、賦形目的でプレストパウダーなどに使用されています[3d]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2012-2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウロイルリシンの配合製品数と配合量の調査結果(2012-2013年)

4. 安全性評価

ラウロイルリシンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7a]によると、

  • [ヒト試験] 102名の被検者に8.36%ラウロイルリシンを含むチーク製品0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Consumer Product Testing Co,2006)
  • [ヒト試験] 600名の被検者に12.5%ラウロイルリシンを含むフェイシャルパウダー製品0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激、皮膚疲労および皮膚感作を誘発しなかった(Orentreich Research Corporation,2005)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7b]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に20%ラウロイルリシンを適用し、一群は眼をすすぎ、もう一群は眼をすすがず、眼刺激性を評価したところ、非洗眼群では24時間でわずかな刺激がみられたが、それ以降は消失し、洗眼群ではいずれも眼刺激はみられなかった。この試験物質は実質的に眼刺激を誘発しないと結論付けられた

このように記載されており、試験データをみるかぎり実質的に眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ラウロイルリシン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1060.
  2. 鈴木 一成(2012)「Nε-ラウロイル-L-リジン」化粧品成分用語事典2012,557.
  3. abcdAjinomoto Co., Inc.(2020)「AMIHOPE LL/OL」Information Sheet.
  4. abc坂本 一民・金子 大介(1992)「アミノ酸系機能性粉体」色材協会誌(65)(2),88-94. DOI:10.4011/shikizai1937.65.88.
  5. 坂本 一民(1995)「アミノ酸系界面活性剤」油化学(44)(4),256-265. DOI:10.5650/jos1956.44.256.
  6. ab柴田 雅史(2021)「無色の光の美しさと感触調整 – 体質顔料」美しさをつくる色材工学,180-199.
  7. abC.L. Burnett, et al(2017)「Safety Assessment of Amino Acid Alkyl Amides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(36)(1_suppl),17S-56S. DOI:10.1177/1091581816686048.

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