シルクの基本情報・配合目的・安全性

シルク

化粧品表示名 シルク
医薬部外品表示名 シルク末
部外品表示別名 絹粉、シルクパウダー
INCI名 Silk、Silk Powder
配合目的 感触改良光沢保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

カイコガ科カイコガ(学名:Bombyx mori 英名:Silkworm)の繭から得られるフィブロイン(絹繊維)の粉末体質顔料です[1][2a][3a]

1.2. 性状

シルクの性状は、

状態 白色の微粉末

このように報告されています[4]

1.3. 構造

シルク(絹繊維)は、以下のシルク断面図をみるとわかりやすいと思いますが、

シルクの断面図

中心部のコアに相当するフィブロイン繊維(約70%)とそのまわりを取り囲んで一本の繭糸となすセリシン(約30%)で構成されており、この繭糸を処理しセリシン部分を溶解・除去することで残ったフィブロイン繊維のみを裁断・粉砕もしくは再結晶処理したものがシルク(シルクパウダー)です[5][6a]

フィブロインのアミノ酸組成は、以下の表のように、

アミノ酸 割合(%)
グリシン 43
アラニン 30
セリン 10
チロシン 5

グリシン、アラニン、セリンと側鎖の小さなアミノ酸で約90%が占められており[7]、また酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸が少ないのが他のタンパク質ではみられない特徴です。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 潤滑性向上による感触改良
  • 光沢付与
  • 皮表水分保持による保湿作用

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 潤滑性向上による感触改良

潤滑性向上による感触改良に関しては、シルクは皮膚や毛髪と同じく動物性タンパクであり、組成や構造も似ているため肌あたりのなめらかな皮膚親和性に優れた粉体であり、また分散性や優れた展延性により基剤の潤滑性を向上させることから、主にメイクアップ製品、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、洗浄系製品に汎用されています[6b][8]

2.2. 光沢付与

光沢付与に関しては、シルクは光をソフトに均一に反射するパール状微粒子であり、肌表面にキメ細かく自然な光沢を付与することから、自然な光沢・ツヤを付与する目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、コンシーラー製品などに汎用されています[3b]

2.3. 皮表水分保持による保湿作用

皮表水分保持による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[9][10]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[11a][12]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[11b]

このような背景から、肌荒れやバリア機能の低下やなどによって角層の水分量が低下している場合に、皮膚表面に皮膜を形成し、皮膚の水分蒸散を防止することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

シルクは、皮膚や毛髪と同じく動物性タンパクであり、組成や構造も似ているため肌あたりのなめらかな皮膚親和性に優れた粉体であり、また以下のグラフをみてもらうとわかりやすいと思いますが、

シルクパウダーの吸湿性

一般的な体質顔料と比較してはるかに吸湿率に優れており、肌の保水量を一定に保つ働きを助けることが可能となることから、メイクアップ製品、化粧下地製品、コンシーラー製品などに汎用されています[2b][6c]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

シルクパウダーの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

シルクの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

4. 安全性評価

シルクの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13a]によると、

  • [ヒト試験] 30名の被検者にシルクパウダー0.05gを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Anonymous,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚にシルク0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、適用24および72時間後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激の兆候はなく、この試験物質は非刺激性に分類された(Applied Biological Sciences Laboratory,1980)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚にシルクパウダー0.5gを4時間適用し、適用24時間後に皮膚反応を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Anonymous,1978)
  • [動物試験] モルモットにシルクパウダー0.1gを週5回13週間にわたって適用したところ、皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(Anonymous,1978)
  • [動物試験] 20匹のモルモットに5%シルクパウダー水溶液0.5mLを週1回各6時間3週間にわたって閉塞パッチ適用し、2週間の休息期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Springborn Institute for Bioresearch Inc,1985)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13b]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼にシルク0.1gを点眼し、点眼直後に3匹はの眼をすすぎ、6匹は眼をすすがず、点眼24,48および72時間後にそれぞれの眼刺激を評価したところ、非洗眼群のうち5匹に一過性の結膜の赤みがみられたが、角膜または虹彩への影響はなかった。洗眼群においては眼刺激はみられなかった。これらの結果からこの試験物質は非刺激剤に分類された(Applied Biological Sciences Laboratory,1980)
  • [動物試験] 4匹のウサギの片眼に10%シルクパウダー食塩水0.1mLを点眼し、眼はすすぎ、168時間まで眼刺激性を評価したところ、この試験物質はわずかな眼刺激性に分類された(Anonymous,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「シルク」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,525.
  2. ab鈴木 一成(2012)「シルクパウダー」化粧品成分用語事典2012,177.
  3. ab鈴木 一成(2012)「シルクパウダー」化粧品成分用語事典2012,549-550.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「体質粉体」パーソナルケアハンドブックⅠ,290-298.
  5. Rainer Voegeli(1998)「セリシンの皮膚保湿・抗シワ効果」Fragrance Journal(26)(4),70-74.
  6. abc字根 俊夫, 他(2000)「シルク系顔料の特長と化粧品への応用」Fragrance Journal(28)(4),15-21.
  7. 大海 須恵子, 他(2000)「シルク加水分解物類およびそれらの誘導体について」Fragrance Journal(28)(4),22-27.
  8. 宇山 侊男, 他(2020)「シルク」化粧品成分ガイド 第7版,225.
  9. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  10. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  11. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  12. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  13. abW. Johnson, et al(2020)「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(39)(3_suppl),127S-144S. DOI:10.1177/1091581820966953.

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