ポリ乳酸の基本情報・配合目的・安全性

ポリ乳酸

化粧品表示名 ポリ乳酸
INCI名 Polylactic Acid
配合目的 感触改良研磨・スクラブ など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される乳酸の重合体(∗1)体質顔料です[1a]

∗1 重合とは、複数の単量体(モノマー)が結合して鎖状や網状になる反応のことをいい、単量体(モノマー)が結合して鎖状または網状になった化合物を重合体(ポリマー)といいます。

ポリ乳酸

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 潤滑性向上による感触改良
  • 研磨・スクラブ

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、ボディスクラブ製品、洗顔料などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 潤滑性向上による感触改良

潤滑性向上による感触改良に関しては、ポリ乳酸は生分解性(∗2)を有しており、球状のものは展延性およびなめらなか感触を有することから、潤滑性を向上させる目的で主にメイクアップ製品、化粧下地製品などに使用されています[2][3]

∗2 生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことです。プラスチックは紫外線照射によって経時的に劣化・変性し、細かく壊れていき微粒子状まで小さくなりますが、このプラスチックの細片化は化学的に分解したのではなく、形が崩壊して細かくなっただけで完全に分解したわけではなく、マイクロビーズは環境中(海洋)において化学的に分解されません[4]

2.2. 研磨・スクラブ

研磨・スクラブに関しては、ポリ乳酸は天然由来の生分解性ポリマーであり、球状にしたものが皮膚刺激なく物理的に古い角質を除去する効果を発揮することから、スクラブ剤としてボディスクラブ製品、洗顔料などに使用されています[1b][5]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2021-2022年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリ乳酸の配合製品数と配合量の調査結果(2021-2022年)

4. 安全性評価

ポリ乳酸の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ポリ乳酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,924.
  2. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「体質粉体」パーソナルケアハンドブックⅠ,290-298.
  3. 大東化成工業株式会社(2017)「MAKIBREADS Series」Information Sheet.
  4. 兼廣 春之(2016)「洗顔料や歯磨きに含まれるマイクロプラスチック問題」海ごみシンポジウム.
  5. Micro Powders Inc.(2015)「ECOSCRUB」Technical Data Sheet.

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