オクテニルコハク酸デンプンAlの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名 オクテニルコハク酸デンプンAl
医薬部外品表示名 オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム
部外品表示簡略名 オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl、オクテニルコハク酸コーンスターチAl、オクテニルコハク酸コーンデンプンAl
INCI名 Aluminum Starch Octenylsuccinate
配合目的 感触改良吸着 など

1. 基本情報

1.1. 定義

無水オクテニルコハク酸とデンプンを反応して得られたもののアルミニウム塩体質顔料です[1a]

1.2. 物性・性状

オクテニルコハク酸デンプンAlの物性・性状は、

状態 白色の粉末
粒径(μm) 20-30
溶解性 水に不溶

このように報告されています[2]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • なめらかな感触付与による感触改良
  • 吸着

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、制汗剤、ボディケア製品、スキンケア製品、ヘアスタイリング製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. なめらかな感触付与による感触改良

なめらかな感触付与による感触改良に関しては、オクテニルコハク酸デンプンAlは疎水性デンプン粉末(∗1)であり、ビロード様のなめらか感触特性を有することから、なめらか感触の付与目的で主にメイクアップ製品に汎用されています[3a]

∗1 疎水性とは、水との親和性が低い、水に溶解しにくい、水と混ざりにくい性質のことをいい、本来の意味では疎水性物質が全て親油性であるとは限りませんが、一般的に親油性と同義で用いられることが多いです。

2.2. 吸着

吸着に関しては、オクテニルコハク酸デンプンAlは疎水性のデンプンであり、油を吸着することから[1b][3b]、皮脂を吸着し、化粧崩れ防止や化粧持続性向上目的でメイクアップ製品、化粧下地製品などに使用されています。

また、スキンケアやボディケア製品などに配合することで処方の油っぽさを軽減し、ベタつきの少ない製品に調整できることから[3c]、スキンケア製品、ボディケア製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

オクテニルコハク酸デンプンAlは、混合原料が開発されており、オクテニルコハク酸デンプンAlと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Dry-Flo ELITE BN
構成成分 オクテニルコハク酸デンプンAl窒化ホウ素
特徴 非常に滑らかな感触および優れた接着性を示す窒化ホウ素で表面処理したデンプン粉末
原料名 Dry-Flo ELITE LL
構成成分 オクテニルコハク酸デンプンAlラウロイルリシン
特徴 優れた接着性、柔らかさ、マットなカバー力を示すラウロイルリシンで表面処理したデンプン粉末

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年および2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

オクテニルコハク酸デンプンAlの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年および2018年)

5. 安全性評価

オクテニルコハク酸デンプンAlの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4a]および池田回生病院皮膚科の症例データ[5]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 102名の被検者に1%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むローション(pH不明)を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間においていずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応の兆候はなかった(Biosearch Inc,1994)
  • [ヒト試験] 104名の被検者に1%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むローション(pH4.0)を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において1名に軽度の紅斑が観察されたものの、チャレンジ期間においていずれの被検者も皮膚感作反応の兆候はなかった(Stephens and Associates Inc,1998)
  • [ヒト試験] 102名の被検者に2.5%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むローション(pH5.3)を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間においていずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応の兆候はなかった(Clinical Research Services,1997)
  • [ヒト試験] 52名の被検者に3%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むローション(pH不明)を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間においていずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応の兆候はなかった(Essex Testing Clinic Inc,1988)
  • [ヒト試験] 240名の被検者に30.5%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むダークブラウンペースト0.02gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、試験期間において2名に紅斑がみられたが、この反応は臨床的に有意な刺激またはアレルギー性接触性皮膚炎とはみなされなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1998)
  • [ヒト試験] 121名の被検者に20%オクテニルコハク酸デンプンAlサンプル0.3mLを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も接触性皮膚感作を示さなかった(Hill Top Research Inc,1981)
  • [ヒト試験] 事前試験で10%乳酸水溶液でスティンギング(刺すような刺激)反応が観察された12名の女性被検者(ただし、いずれの被検者も過敏な皮膚や皮膚炎などを有していない)に3%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むローションを対象にフェイシャルスティンギング試験を実施し、主観的なスティンギングは試料の適用から2.5および5分後に0-3のスケールで評価したところ、この試料は通常使用下でスティンギングを生じる可能性はほとんどないと結論付けられた(Ivy Labs,1988)

– 過敏な皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 9名の過敏な皮膚を有する被検者に2.23%オクテニルコハク酸デンプンAlを含む製剤を2日にわたって24時間閉塞パッチを連用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この製剤は紅斑を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1996)
  • [ヒト試験] 10名の過敏な皮膚を有する被検者に2.5%オクテニルコハク酸デンプンAlを含む製剤を2日にわたって24時間閉塞パッチを連用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この製剤は紅斑を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1997)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [個別事例] 接触皮膚炎の既往歴のある33歳女性が、化粧品を変更し、2日目から顔面に一部落屑をともなう瘙痒性紅斑を認めたため、使用していたフェイスパウダーをパッチテストしたところ、成分パッチテストでオクテニルコハク酸デンプンAl、ムクロジエキスに陽性であった。さらに濃度希釈パッチテストを施行したところ、0.2-10%濃度で陽性を示した。以上よりフェイスパウダーの成分であるオクテニルコハク酸デンプンAl、ムクロジエキスによる接触皮膚炎と診断した(池田回生病院皮膚科,2000)

このように記載されており、試験データをみるかぎりほとんど共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合において1例の皮膚感作事例が報告されているため、皮膚炎を有する場合においてはごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性が考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4b]によると、

  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて、1%オクテニルコハク酸デンプンAlを含む製剤を処理したところ(HET-CAM法)、この製剤は損傷を誘発せず、非刺激であると考えられた(Stephens and Associates,1996)
  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて、2.5%オクテニルコハク酸デンプンAlを含む製剤を処理したところ(HET-CAM法)、この製剤は損傷を誘発せず、非刺激であると考えられた(MB Research Labs,1997)
  • [動物試験] 6匹のウサギの眼に25%オクテニルコハク酸デンプンAlを含むチークまたはファンデーションを3回適用し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、適用1日後でいずれのウサギにも刺激はみられなかった。またファンデーション適用1日および2日後に眼刺激スコアは2であった。この試験物質の眼刺激性は最小限であると考えられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1999)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

6. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「オクテニルコハク酸デンプンAl」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,252.
  2. W.F. Bergfeld, et al(2018)「Amended Safety Assessment of Aluminum Starch Octenylsuccinate As Used in Cosmetics(∗3)」, 2022年10月12日アクセス.
    ∗3 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。
  3. abcAkzo Nobel N.V.(2008)「DRY-FLO PC Starch / DRY-FLO PURE Starch / DRY-FLO PLUS Starch」Technical Data Sheet.
  4. abF.A. Andersen, et al(2002)「Final Report on the Safety Assessment of Aluminum Starch Octenylsuccinate」International Journal of Toxicology(21)(1_suppl),1-7. DOI:10.1080/10915810290096379.
  5. 西井 貴美子, 他(2000)「植物成分配合のフェイスパウダーによるアレルギー性接触皮膚炎」皮膚(42)(2),143-147. DOI:10.11340/skinresearch1959.42.143.

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