(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの基本情報・配合目的・安全性

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー

化粧品表示名 (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
医薬部外品表示名 アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
INCI名 Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer
配合目的 乳化 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアクリル酸、メタクリル酸またはこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上とアクリル酸アルキル(C10-30)の共重合体をショ糖のアリルエーテルまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものです(∗1)(∗2)(∗3)[1]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。また共重合体を微粒子化したものをクロスポリマーと呼びます。

∗2 架橋とは、主に高分子において分子間に橋を架けたような結合をつくることで物理的、化学的性質を変化させる反応のことです。

∗3 大きな親水基(アクリル酸部分)と小さな疎水基(メタクリル酸アルキル部分)をもつことから、化学構造的には高分子界面活性剤に分類されますが、一般の界面活性剤の大きな特徴である界面張力低化能やミセル形成能が低く、また乳化機構も異なることから、高分子界面活性剤というより高分子乳化剤と記載されることが多いです[2a]

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー

1.2. 性状

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの性状は、

状態 白色の粉末

このように報告されています[3a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、スキンケア製品、ボディケア製品、クレンジング製品、洗顔料など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として一般的な界面活性剤による乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[4][5]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[6]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[7]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[8][9a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[9b]

一方で、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、大きな親水基(アクリル酸部分)と小さな親油基(メタクリル酸アルキル部分)をもつO/W型高分子乳化剤であり、一般的なO/W型エマルションの形成およびその安定においては水/油界面に吸着し液晶構造を形成することが必要であるのに対して、以下の図をみるとわかるように、

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの乳化機構

小さな親油基部分が油/水界面に食い込むように油滴の周囲に吸着し、大きな親水基部分が水に膨潤(∗4)して油滴の周囲に水和ゲル相を形成することによって(∗5)、HLBに関わらずシリコーン油を含む様々な油を安定に分散(乳化)するといった機構であることが知られており[2b][10]、親水性乳化目的で主にスキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、マスク製品、ボディケア製品、ハンドケア製品などに汎用されています。

∗4 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

∗5 油滴の周囲に水和ゲル相を形成しているので、2つの油滴が接近してもこのゲル相の存在により物理的にゲル相同士が反発するため、油滴が一定に分散し安定したO/W型エマルションが形成されます。

また、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーで調製されたO/W型エマルションは、油滴が分散状態で存在し、すみやかに油性成分を放出することから、ファンデーションなどになじませる目的でクレンジング製品などに、皮膚に対して日焼け止め製品に配合されている紫外線吸収剤を広げる目的で日焼け止め製品などにそれぞれ使用されています[2c][11]

3. 配合製品数および配合量範囲

アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0
育毛剤 2.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 2.0
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可

実際の化粧品における配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年および2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗6)

∗6 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの配合製品数と配合量の調査結果(2011年および2018年)

4. 安全性評価

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[3b]によると、

  • [ヒト試験] 20名の被検者に2%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24および84時間後に皮膚刺激性を評価したところ、24時間で3名にわずかな反応が、84時間で1名にわずかな皮膚反応がみられた(Personal Care Products Council,2011)
  • [ヒト試験] 107名の被検者に0.15%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含むボディローションを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(Consumer Product Testing Co,2009)
  • [ヒト試験] 51名の被検者に0.6%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含むクリーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(Consumer Product Testing Co,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎりほとんど共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[3c]によると、

  • [動物試験] 3匹のグループ2群のウサギの片眼に未希釈の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーおよび1%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー中和溶液(pH6.9-7.0)をそれぞれ点眼し、眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、未希釈では軽度から中程度の結膜刺激がみられ、それらは7日目までに消失した。一方で1%中和溶液ではわずかな虹彩および結膜刺激がみられたが、すべての刺激は72時間で消失した(Lubrizol,1996)

このように記載されており、試験データをみるかぎりわずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,114.
  2. abc田村 博明(1998)「O/W型高分子乳化剤の機能と応用」Fragrance Journal(26)(8),79-83.
  3. abcM.M. Fiume, et al(2017)「Safety Assessment of Cross-Linked Alkyl Acrylates as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(36)(5_suppl2),59S-88S. DOI:10.1177/1091581817707927.
  4. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  5. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  6. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  9. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  10. Lubrizol Corporation(2007)「Introducing Pemulen Polymeric Emulsifiers」Technical Data Sheet.
  11. Lubrizol Corporation(2007)「Pemulen TR-1 and TR-2 Polymeric Emulsifiers」Technical Data Sheet.

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