ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3の基本情報・配合目的・安全性

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3

化粧品表示名 ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3
医薬部外品表示名 ジイソステアリン酸ポリグリセリル
INCI名 Polyglyceryl-3 Diisostearate
配合目的 乳化

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるイソステアリン酸2個のカルボキシ基(-COOH)にポリグリセリン-3(∗1)のヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗2)したジエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)です[1]

∗1 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリン-3とは3個のグリセリンがまとまって3量体(平均重合度3)として機能する重合体です。またギリシャ語で「3」を「トリ(tri)」といい、トリグリセリンともよばれます。

∗2 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3

1.2. 物性・性状

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3の性状は、

状態 淡黄色-黄色の液体

このように報告されています[2a][3][4]

また、一般に化粧品に使用されているジイソステアリン酸ポリグリセリルの物性としては、

種類 グリセリン重合数 HLB(∗4)
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 2 親油性
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 3
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10 10 親水性

∗4 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここではグリセリン付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、親水性であるグリセリンの重合数が多いほど親水性が大きくなるため[5]、原料や製品の特性に合わせて最適なグリセリン重合数のジイソステアリン酸ポリグリセリルが使用されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親油性乳化

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、スキンケア製品、クレンジング製品、ボディケア製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親油性乳化

親油性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[6][7]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[8]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[9]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[10][11a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[11b]

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3の乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
W/O型乳化 4.0[12], 5.0[2a]

このように報告されており、親油性乳化剤として、また親水性乳化剤と組み合わせてO/W型エマルションを得る共乳化剤としてメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、スキンケア製品、クレンジング製品、ボディケア製品などに汎用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3は混合原料が開発されており、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Beauté by Roquette DS146
構成成分 シクロデキストリンソルビトールジイソステアリン酸ポリグリセリル-3
特徴 オイル高配合のo/w処方でも乳化性能を保持する植物由来乳化剤
原料名 BENTONE LUXE WN
構成成分 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルステアラルコニウムヘクトライトジイソステアリン酸ポリグリセリル-3ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3
特徴 顔料分散性に優れ、チキソトロピー性付与するヘクトライト増粘剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗5)

∗5 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3の配合製品数と配合量の比較調査結果(2014-2015年)

5. 安全性評価

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13a]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギにジイソステアリン酸ポリグリセリル-3(濃度不明)をパッチ適用し、OOECD404テストガイドラインに基づいて皮膚刺激性を評価したところ、パッチ適用1時間後にすべてのウサギににわずかな紅斑がみられたが、72時間以内にすべて消失した(European Chemicals Agency,2013;Anonymous,2016)

このように記載されており、試験データをみるかぎり最小限の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13b]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼にジイソステアリン酸ポリグリセリル-3(詳細不明)を点眼し、OECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激性を評価したところ、1時間でケモーシス(スコア1)および発赤(スコア2)がみられた。72時間ではケモーシスは完全に消失し、発赤スコアは1であった(Anonymous,2016)

このように記載されており、試験データをみるかぎりわずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13c]によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剃毛した腹部に5-50%ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3を含むパラフィンを6時間パッチ適用する感作性試験を実施したところ、パッチ除去24時間後で皮膚反応はみられなかった(European Chemicals Agency,2013)
  • [動物試験] 20匹のモルモットに事前処理として10%SDSを、誘導期間およびチャレンジ期間において50%ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3を含むパラフィンを、再チャレンジ期間において25%ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3を含むパラフィンを用いた皮膚感作性試験を実施したところ、試験期間を通じていずれのモルモットにおいても皮膚感作反応はなかった(European Chemicals Agency,2013)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,463.
  2. ab日本エマルジョン株式会社(2018)「ポリグリセリン脂肪酸エステル」EMALEX Amiter & Pyroter,35-36.
  3. ナショナル美松株式会社(2017)「DG oil DISG-2」化粧品用エステル製品カタログ,22.
  4. 高級アルコール工業株式会社(2021)「エステル」製品リスト,8-9.
  5. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「ポリグリセリン脂肪酸エステル」新化粧品原料ハンドブックⅠ,235-236.
  6. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  9. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  10. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  11. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  12. BASF Personal Care and Nutrition GmbH(-)「LAMEFORM TGI」Emulsifiers & Cream Bases.
  13. abcW.F. Bergfeld, et al(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics(∗6)」, 2022年12月20日アクセス.
    ∗6 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。

TOPへ