(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーの基本情報・配合目的・安全性

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー

化粧品表示名 (PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー
INCI名 PEG-15/Lauryl Polydimethylsiloxyethyl Dimethicone Crosspolymer
配合目的 乳化増粘

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンをジアリルPEG-15で架橋(∗1)した共重合体(∗2)であり、シリコーン架橋型のポリエーテル・シリコーン・アルキル共変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です[1]

∗1 架橋とは、主に高分子において分子間に橋を架けたような結合をつくることで、物理的、化学的性質を変化させる反応のことです。(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーは、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンをジアリルPEG-15で架橋した構造をしています。

∗2 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー

1.2. 性状

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーの性状は、

状態 無色白濁のペーストまたはゲル(∗3)

∗3 (PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーそのものは微粒子ですが、化粧品原料としてはイソドデカンジメチコンまたはシクロペンタシロキサンに膨潤したものが用いられるため、ペースト状となっています。

このように報告されています[2a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親油性乳化またはシリコーン油の乳化
  • 非水系増粘

主にこれらの目的で、リキッドファンデーション製品、クリームファンデーション製品、化粧下地製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親油性乳化またはシリコーン油の乳化

親油性乳化またはシリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンかつPEG-3ジメチコンの主成分でもあるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基(-CH3をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります[3a]

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗4)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています[3b]

∗4 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます[3c]

次に、乳化とは互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[4][5]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[6]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[7]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[8][9a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[9b]

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーの乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
W/O型またはW/Si型乳化

このように報告されており[10][11][12][13]、とくにシリコーン油炭化水素が混合する油性基剤の親油性乳化剤として主にリキッドファンデーション製品、クリームファンデーション製品、化粧下地製品などに使用されています[2b]

2.2. 非水系増粘

非水系増粘に関しては、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーはイソドデカンジメチコンまたはシクロペンタシロキサンなどの炭化水素に膨潤しゲルを形成しており、油相の増粘や乳化系の安定化としても働くことから[2c]、油性基剤の増粘目的でリキッドファンデーション製品、クリームファンデーション製品、化粧下地製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーは混合原料が開発されており、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 KSG-320Z
構成成分 イソドデカン(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー
特徴 滑らかな感触のW/O型またはW/Si型乳化剤
原料名 KSG-350Z
構成成分 シクロペンタシロキサン(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー
特徴 滑らかな感触のW/O型またはW/Si型乳化剤
原料名 KSG-360Z
構成成分 ジメチコン(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー
特徴 滑らかな感触のW/O型またはW/Si型乳化剤

4. 安全性評価

(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に100%(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーを閉塞パッチ適用し、適用後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚に対する一次刺激剤ではないと結論づけられた(Shin-Etsu,2012)

このように試験データをみるかぎり皮膚刺激なしと報告されており、また10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14b]によると、

  • [in vitro試験] マウスを用いて1.5%,3%および7.5%(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー溶液を対象に局所リンパ節試験(LLNA)による皮膚感作性試験を実施したところ、これらの試験製剤は皮膚感作剤ではなかった(Shin-Etsu,2012)

このように試験データをみるかぎり皮膚感作なしと報告されており、また10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,65.
  2. abc信越化学工業株式会社(2021)「ポリエーテル変性シリコーンゲル」化粧品用シリコーン オリジナル原料 Plus,10.
  3. abc近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319. DOI:10.20665/kakyoshi.60.7_318.
  4. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  5. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  6. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  9. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  10. Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.(2017)「KSG-320Z」Technical Data Sheet.
  11. Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.(2017)「KSG-350Z」Technical Data Sheet.
  12. Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.(2017)「KSG-360Z」Technical Data Sheet.
  13. Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.(2017)「KSG-380Z」Technical Data Sheet.
  14. abW.F. Bergfeld, et al(2014)「Safety Assessment of Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, Alkyl-Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, and Related Ingredients as Used in Cosmetics(∗5)」, 2023年1月8日アクセス.
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